誰でもない人の物語を読む
寒い季節が近づいてくると、夜の時間のお供として探偵小説が恋しくなる。「探偵小説」なんて古めかしい言い回しにしているのは、最近のものでなく昔に書かれた…
BEAMSクリエイティブディレクター
セレクトショップBEAMSの社長直轄部署「ビームス創造研究所」に所属するクリエイティブディレクター。音楽部門〈BEAMS RECORDS〉のディレクターも務める。執筆、編集、選曲、展示やイベントの企画運営、大学講師など、個人のソフト力を主にクライアントワークに活かし、ファッション、音楽、アート、文学をつなぐ活動を行っている。『ミセス』(文化出版局)、『OCEANS』(インターナショナル・ラグジュアリー・メディア)、『IN THE CITY』(サンクチュアリ出版)、ウェブマガジン『TV & smile』、『Sound & Recording Magazine』ウェブなどでコラムやエッセイを連載中。
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誰でもない人の物語を読む
寒い季節が近づいてくると、夜の時間のお供として探偵小説が恋しくなる。「探偵小説」なんて古めかしい言い回しにしているのは、最近のものでなく昔に書かれた…
夏とポン酢と酢豆腐と
内田百閒の『御馳走帖』(中公文庫)をパラパラと読んでいたら「す」という話があった。「『す』と平仮名で一字だけ書いた看板が、店屋の軒の下にひらひらし…
酸っぱいワインの話
以前にもこちらで触れた、レーモン・オリヴェの『コクトーの食卓』は、パレ・ロワイヤルのレストラン「ル・グラン・ヴェフール」でジャン・コクトーが好んだ料…
理想の弁当
神田神保町の三省堂書店神保町本店の4階に、「三省堂古書館」というのがある。いくつかの古書店が棚を持っており、雑誌類はほとんどないが、オールジャンルの…
未知なる組み合わせを求めて
炊飯をしなくなって数ヶ月が経過した。このことは、家で食事を摂らないということを意味しているのではなく、文字通り米を炊かないだけである。こう書くと、炭…
サクサク、シャリシャリ––––澁澤龍彦の鎌倉
2017年はフランス文学者・澁澤龍彦の没後30年にあたる年である。没後30年ということで、10月からは世田谷文学館で企画展「澁澤龍彦 ドラコニアの地平」が開…
観念としての味を食す
とある仕事で、歌詞中にコーヒーが出てくる曲をリサーチすることになった。いざ探してみると、コーヒーが歌われているものはまぁ色々あるにはあるのだが、こち…
ロシア革命100年
2014年に公開された映画『シュトルム・ウント・ドランクッ』が、3月下旬に特別イベントとして2日間、2回だけ上映された。この映画は、1974年、寺山修司の「天…
暖簾について
2月のある日、避暑ならぬ避寒のため温泉地に行くことにした。訪れたのは箱根湯本。いわゆる箱根温泉郷の玄関口である。鉄道だと、ここから「スイッチバック」…
お稲荷様のご利益に授かった話
ここで記事を書きはじめてから2度目の初午を迎える。思えば、最初の記事がちょうどこの時期で、初午に関連したいなり寿司の話であった。初午とは2月最初の午…
精進潔斎
普段さほど信心深くない人でも、新しい年のはじめは初詣があるおかげで神社仏閣を身近に感じるのではないだろうか。近所の、あるいは好みの寺社に赴き、静か…
冬のオーケストラ
クラシック音楽、それもフル・オーケストラの奏でるそれは、これからの季節にしっくりくるように思う。暑い時期には風通しのよいスモール・アンサンブルの室…
温泉食事考
寒くなってきた。寒くなると暖かさが恋しくなる。さしずめ、温泉などはこれからの季節にぴったりであろう。都内にも温泉を掲げるところはいくつかあるが、ここ…
ローカライズされない味
大学時代の同級生でベルリンに住んでいる友人が一時帰国しているというので会ってきた。話すうちに、ベルリンに住んでいると思っていた彼は、数年前にポルトガ…
奥ゆかしき哉、日本の辛味
「料理を際立たせる仕組みの最たるものはその土地に自生する香草であり、それを乾燥させた香辛料であるというのが、わたしの持論である。香りとは、土地の精…
上方くだり
市場がある、というイメージからか、築地はなんとなく遠いと思っている方も少なくないだろうが、実際は銀座から歩いて行ける距離にある。晴海通りを南東方面に…
相撲の街、バカンスの入口
両国駅といっても、JRと都営地下鉄大江戸線では近隣の風情がまるで違う。全線開通が2000年と、新しい路線である大江戸線の両国駅は清澄通りの地下、つまり南北…
箱の中の夢
ルイス・ブニュエルが監督を、サルバドール・ダリとブニュエルが共同で脚本を手がけた映画『アンダルシアの犬』(1928年)は、イメージの連鎖、しりとりのよう…
瓶詰の天国
コラージュ作品が好きである。マックス・エルンストの『百頭女』、『カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢』、『慈善週間または七大元素』という三大コラ…
技術の進歩と江戸の知恵
生物学的にいえば、ほとんどの動植物にとって、方法はさまざまではあるけれど摂食=養分摂取は生命維持のための必須項目であり、これが断たれればすなわち死…