きんつば好きの初代が生み出した金沢の「きんつば」

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あん好きの方はぜひ!小豆の風味のすべてが堪能できます

北陸新幹線の開通で国内外からの観光客でにぎわう金沢は、私にとってもなじみ深い街です。もう何十年も前に取材で訪れて以来、仕事でもプライベートでも何度となく足を運び、そのたびに新しい人、店、味と出会ってきました。豊富な魚介類や地場野菜も魅力ですが、加賀百万石の昔から茶の湯の盛んな金沢は、京都、松江と並び称される和菓子処。多くの銘菓で知られますが、私が、訪れるたび必ずと言っていいほどいただくのは「中田屋」の「きんつば」です。金沢では「きんつばと言ったら中田屋、中田屋と言えばきんつば」といわれるほど、人々に親しまれているお菓子なのです。手に取って半分に割ると、中から現れるのはふっくらとしてつややかな粒あん。口にすれば、ほどよく効いた塩味が小豆の風味を引き立て、あんと衣の食感のバランスも絶妙。粒あん好きの方にとって至福のひとときとなることは間違いありません。

きんつば好きの初代が生み出した金沢の「きんつば」

中田屋は昭和9年(1934年)の創業。聞くところによると、初代は無類のきんつば好きだったそうで、きんつば作りに精魂を傾けてお店の看板商品にまで作り上げたとのことです。初代のこだわりは現在の三代目にもしっかりと受け継がれています。小豆は、北海道の契約栽培農家の作る大納言小豆を使用。大粒で風味豊か、また煮くずれしにくいという特徴が、中田屋のきんつば独特のサクッとした歯ごたえを生み出しているのだそうです。寒天は、京都の丹波で昔ながらの製法で作られる丹波寒天。粘りが強く保水力にも優れた持ち味が、あんのしっとりとした舌触りをもたらします。小豆の粒を崩さないようじっくり煮上げたあんに寒天を加え、舟と呼ばれる型に流し固め、四角く切り分けて小麦粉の薄い衣をつけて六方を焼くまで、一つひとつの工程を、手作業で丁寧に行うのも中田屋の伝統。これからの季節、冷やしていただくのもおすすめです。

きんつば好きの初代が生み出した金沢の「きんつば」

※掲載情報は 2015/07/16 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岸朝子

食生活ジャーナリスト

岸朝子

大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。

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