甘さに塩味が利いている石川県金沢市にあるきんつばの中田屋の「きんつば」

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甘さに塩味が利いている石川県金沢市にあるきんつばの中田屋の「きんつば」

自宅のあるマンションの1階に和菓子屋さんが入っているのです。この和菓子屋さんは、東京に幾つもの暖簾分けをされた「榮太郎」なのですが、頻繁に和菓子を買っています。春の桜餅から柏餅、秋の栗饅頭などの季節の和菓子の他に必ず「きんつば」も購入しているのです。洋菓子も好きですが、実は大の和菓子党なのです。以前自身のキャラクター「お手伝いハルコ」で雑誌の連載をしていた時にも好んで和菓子屋修行(取材)をしていたのですが、未だに「とらや」で小豆を煮て餡を作り、包餡して饅頭まで作ったことは自慢なのです。ある和菓子教室のレシピ本を作りために、撮影取材した時は、基本となる小豆つぶあん、小豆こしあん、白こしあんからはじめて3ヶ月もかかってしまいました。丁寧に作るためには、相当に時間がかかり、手間が大変かかるものです。

 

さて、今回ご紹介するのは「きんつば」です。現在きんつばというと、粒あんを直方体に固めたものに,小麦を衣にしてまんべんなく箔のように焼き付けたものですが、元々は形が違うものだったのです。清水圭一編の『たべもの語源辞典』(東京堂出版)の「きんつば」をひも解くと、最初は京都で(五代将軍徳川綱吉の頃)のうるち米粉の皮で赤小豆を包んで焼いたものが「銀鍔(ぎんつば)」という名称で売っていたそうです。刀の鍔に似せて丸く作り「ぎんつば」となり、これが、その後の「きんつば」の元祖なのです。これが、江戸に伝わり皮がうるち米粉の替わりに、小麦粉になり銀より金が上だと「きんつば」と名称まで変わったのです。文化・文政年間の頃に浅草の馬道(うまみち)に「おかめきんつば」という店から「みめより」という四角のきんつばが売り出され「人はみめよりも心」と金の刀の鍔から四角になり評判を得たそうです。しかし、同時期に日本橋の魚河岸付近の屋台できんつばを売っていたのが、現在の榮太郎の元祖なので、現在でも日本橋の榮太郎本舗では、丸い刀の鍔型のきんつばなのです。

 

うるち米粉に替わり小麦粉を使ったら焼き目が金色になったので「金鍔(きんつば)」と洒落たのが由来とか。しかし、江戸時代にはきんつばの他に「どら焼き」もあり、銅鑼(どら=ゴング)が時代とともに小型化し、きんつばになったという説もあるのです。はっきりしたことは不明ですが、どら焼き、きんつば、今川焼き、大判焼き、小判焼きなどが名称が不確かで、地方に伝播してそれぞれの地域で根付いていったようです。私の子どもの頃に田舎できんつばという名称で今川焼きだった記憶があります。丸い刀の鍔型が一部を除いて(冒頭のわが家のマンションの1階の榮太郎は四角いきんつば)四角になり元の語源がいつの間にかあやふやになるというのは仕方がないことですね。


もうひとつ解説すると、刀の鍔型の菓子の原型は中国唐時代の唐菓子が原型らしいのですが、これは、また、別な話です。

甘さに塩味が利いている石川県金沢市にあるきんつばの中田屋の「きんつば」

さて、ここまで長々ときんつばの考察を書いてきましたが、ご紹介するきんつばは、石川県金沢市の「きんつば中田屋」のきんつばです。店名にきんつば中田屋と入れているように中田屋を代表する菓子が、きんつばなのです。小豆のつぶ餡は北海道産の大納言小豆を使用して、薄い皮で包まれていますが、他のきんつば(そんなに食べ比べはしていませんが)と比べて甘さが控えめで塩味がはっきり出ているのが特長です。このきんつばは同じ金沢の「加賀棒茶」と合わせていただくと美味しく感じるような気がします。中田屋のきんつばをいただくと、同じきんつばでもずいぶん味や風味が違うものだと感じました。菓子も茶も同じ地域の組み合わせはこれからの宿題として調べてみるのも一興かと思いますね。

甘さに塩味が利いている石川県金沢市にあるきんつばの中田屋の「きんつば」

※掲載情報は 2017/08/11 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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