熟成ケックショコラ
パティスリー ルシェルシェ
先日あるTV番組で“熟成スイーツ”というテーマを与えられて、まず最初に頭に浮かんだのがこちらの「ルシェルシェ」さんの『熟成ケックショコラ』。今や、熟成肉や熟成魚など巷は“熟成”ブームですが、スイーツでも熟成って流行ってますか?というお問い合わせでした。
しかも商品になる前の段階で素材や生地を熟成させるのではなく、出来あがった商品自体を熟成させて美味しくなるスイーツとのことだったので、まさにこの『熟成ケックショコラ』がピッタリ!
熟成肉にはまるずっと以前からこちらの熟成ケークにどっぷりとはまり、長年熱烈なファンだった私はここぞ!とばかりに推薦させていただきました。
「ルシェルシェ」さんは、大阪・南堀江に2011年1月にオープン。村田シェフは基本は踏襲しながらも、フランス古典菓子を自分のフィルターを通し、自分のエッセンスを加えることでオリジナリティ溢れる村田流フランス菓子へと昇華させています。ですので、こちらも普通のお酒の効いたフルーツケーキとは一線を画するお菓子。ご自分が好きだとおっしゃるお酒、スパイス、ドライフルーツ使いの達人なので、この熟成ケックが美味しくならないわけがありません。
最初にいただいた時は本当に衝撃的で、フルーツとお酒のマリアージュ、そしてフルーツとお酒、生地が、熟成することで三位一体となっていく魔法のような変化を幾度も堪能しました。実は少しずつ進化を重ねているこちらのケック。以前は様々なフルーツのコンフィが入っていたのですが、現在はラムレーズンのみに。ケック作りは、まずこの自家製ラムレーズン作りからスタートします。
まずレーズンを、ネグリタラムに3週間漬けこんで(最低1週間は漬けこんで)。
しかし、ただそのまま漬けこんでいるわけではありません。
レーズンを一度茹でてふやかし、乾燥してからラム酒に漬けこむというひと手間がかけられています。
こうすることでラム酒がレーズンによく染みこみ、甘みが増すのだそう。
驚くことに、レーズンは3日間はラム酒を吸い続けるそうで、
追い足し、追い足し続けなければならないとのこと。
材料は、カカオパウダー、ブールノワゼット、粉糖、強力粉など。
なるべく水分を加えたくないということで、お砂糖は粉糖を使用。
シロップをより多く吸い込ませるために、粉は強力粉を使用されています。
また熟成させることで香りが薄れてしまうのを防ぐために、フレッシュバターではなく焦がしバターを使われています。
焦がすことで酸化せず、熟成させても香りが薄くならないのです。
ですので、焼き上がった生地のみを食べても、パサパサで美味しくないそう。
ここにたっぷりと、ラムシロップを染みこませていくわけです。
ラムレーズン自体の量はそれほど多くはないのですが、このラムシロップが、これでもかという程の量しっかりと打ち込まれているのかと思いきや、実はさらにたっぷりと・・・
ラムシロップの中にドボンと漬けこまれているんです。
実はお酒は、ラム酒以外のオレンジのお酒なども色々試されたそうなんですが、やはりラム酒が一番余韻が長く、存在感のある香りが後を引くとのこと。
時間が経つにつれ、底部にラム酒が下りてくるので色が濃くなり、そのままだと生地から染み出てきてしまうので、底だけチョコレートコーティングで蓋をされています。
このチョコのパリっ!とした食感とビターテイストがまた、いいアクセントなっているのです。
賞味期限は3週間となっていますが、実は冷蔵保存で1ヶ月以上大丈夫とのこと。
村田シェフ的には、出来あがってから2週間頃がお薦め!
ラムレーズンやチョコレートの香りが生きていて、お口の中でふわっと広がり、口の中に入れた瞬間に溶けてしまうテクスチャー。
数日後ではまだ中心までラムシロップが行き届いておらず、ラム酒の刺激的な風味が際立っていますが、次第に全体に染み渡っていくにつれ、生地とラムシロップ、ラムレーズンとショコラとすべての素材が混然一体となり、風味、香り、食感共に芳醇な状態へと変化していきます。
ケーク型ではなく、厚みのあるクグロフ型だからこそ、よりその芳醇な香味をギュッと閉じ込めることができ、ナイフを入れた瞬間、一気にパッと花開くわけですね!食感もほわっから、しっとり、じゅわ~へと。
本当に、数日後と2週間後では驚くほど全く別物のテクスチャーに!ラムレーズンも、ふっくらとふくよかに変化していきます。見比べてもあまり違いは分かりませんが、食べ比べてみると一目瞭然。どちらが好みかは分かれるところだと思いますが、自分好みの熟成度を見つけるのもまた、熟成スイーツの面白いところですね。
ホールサイズではなかなか販売しにくく、プティサイズを作ってみたりもしましたが、やはりこの熟成感は大きなサイズで食べてこその醍醐味!と、バレンタインや手土産などのギフト用にと、ルシェルシェさんのテーマカラーのピンク×グレーの素敵なBOXも昨年登場しました!
ホールでご購入いただいても、絶対後悔させません!お酒好きな村田シェフが作っているので、ラム酒がバッチリと効いています!お酒好きな男性や、本物志向の方へ!
そしてお酒があまり得意ではない方は、ぜひ熟成期間を長く取って、しっとり、まろやかに変化したテイストをお愉しみください。
パティスリー ルシェルシェ
※掲載情報は 2016/02/22 時点のものとなります。
スイーツコーディネーター
松本由紀子
スイーツコーディネーター&ライター。
一般雑誌、菓子専門誌、TV、ラジオ、webサイトと多岐にわたり、ライター&コメンテーターとしてスイーツ情報を発信。スイーツ関連メーカーのコンサルティングを務め、商品開発、コラボ商品の企画、マーケティングに携わる。スイーツ講座(定期/単発)の講師も務める。
10名のパティシエの珠玉の一品!を集約したDVD 『Sweets美術館』をプロデュース&出演。
http://www.amazon.co.jp/Sweets美術館-2012-松本由紀子/dp/B00BPJSFF2
百貨店催事やイベントをプロデュースし、「スイーツコーディネーター松本由紀子セレクション」なる冠催事を展開。
*2012年11月~:フランスフェアー@JR大阪三越伊勢丹
*2014年2月:サロン・デュ・ショコラ@JR大阪三越伊勢丹
*2015年2月:アムール・デュ・ショコラ@大阪高島屋
*2015年10月~:松本由紀子セレクション@阪急うめだ本店
ORIGINE KOBEの広報を務める。
http://r.gnavi.co.jp/ippin/article-2060/