記事詳細
紹介している商品
クリームチーズ、パンデピス、フィグが至福のマリアージュ
「関西にムースの美味しさを広めたい!」と2009年2月に京都・烏丸にオープンした『パティスリーS』さん。一期一会の美味しさを大切にした香りが印象的なプティ・ガトーと、しっかりと焼きこんだ美しい焼き色の焼き菓子、そして旬のフルーツを使った沢山の種類のコンフィチュールが揃えられています。
Sさんの生菓子はフレッシュ感にこだわり、ギリギリ限界のテクスチャーに作られているものも多いため、できることであればイートインがお薦め。ですが、やはり遠方の方にもSの生菓子を食べてもらいたい! 贈答用につかえるアントルメサイズの生菓子を作りたい!というシェフの想いから、構想2年あまりを経てオープン3年目に「Sのチーズケーキ」が誕生しました。
「Sのチーズケーキ」と、ネーミングもそのままで分かりやすいですよね。しかしお味は、いわゆる普通のどこにでもあるお土産用のチーズケーキとは一線を画する、“Sらしい”テイストに仕上げられています。
パンデピス、イチジクのコンフィチュール、クリームチーズベースの生地の3層構造。ベースには、フランス・ルガール社のクリームチーズが使用されています。このクリームチーズには、フランス・ブルターニュ地方の新鮮な原乳のみが使われていて、穏やかな酸味とコクのある風味ながら、後口はスッキリ。これにサワークリームの酸味やクレームエペスの醗酵臭、クレームドゥーブルのコクなどなどを合わせて。この配合に、構想何ヶ月?いえ何年?を費やされたことでしょう。
そしてさらにその配合に悩みに悩まれたのが、土台のパンデピス生地。以前にストラスブールのパンデピス専門店で食べたパンデピスのイメージで、ライ麦を加え、生地はややパサパサっとしたパンよりの食感に。シート状に焼いたものを一度崩しているので、お口の中でほろほろっとほどけるようなテクスチャーに仕上げられています。
エピスはシナモン、カルダモン、メース、スターアニス、ジンジャー、クローブなどをブレンドしたパンデピスミックスにさらにコショウを少し強めに効かせて。ナツメグはすりつぶして加えると、香りのたち方が全然違うんですよ!と目をキラキラさせて語られる中元シェフ!どこまでもマニアックに素材を追究される姿が素敵です。
食感のアクセントにカシューナッツもイン。でも、ここまでこだわられたパンデピスなのに焼き菓子としての販売はなく、このチーズケーキのためにのみ焼かれているのだそう。このひとつのパーツに、とことんまでこだわり抜く姿勢も素晴らしいですね!
セミドライフィグはちょっと粒々感を残しつつ、バルサミコ酢と合わせてペースト状にし、パンデピスの上に重ねて。このバルサミコがまたこだわりの高級品を使用しているので、尖った酸味ではなく、とてもコク深いふくよかさをたたえた酸味が持ち味なんです。
クリームチーズの生地は、焼かれているのにまるで焼かれていないようなレアなテクスチャー。フォークがスッと入り、半生のようなとろ~りとなめらかな口溶け。ファーストノートにチーズのまろやかなコクとほのかな酸味が広がり、ミドルにバルサミコのコク深い酸味とイチジクのプチプチ感、そしてラストノートにはガツンとスパイシーにエピスの香りが広がり、特に強めのクローブとコショウが時々顔を覗かせます。このチーズともイチジクとも相性の良いコショウが、いわゆる通常のお菓子におけるヴァニラのように、全体を繋ぐ役割を果たしているわけです。
ほろほろっと崩れながらもインパクトのある香りを放ち続けるパンデピス、プチプチっとコク深い酸味のアクセントを添えるイチジク、そしてとろ~りと舌の上でとろけるレアなテクスチャーがたまらないチーズクリーム。
各層をバラバラに食べるとそれぞれにかなり個性が強いのに、3層を一緒にいただくと、えも言われぬ見事な一体感が描きだされています。さすがバランスを重視される中元シェフの作品!今までに食べたことのない、オリジナリティ溢れるオンリーワンのチーズケーキです。
このチーズケーキは数日間お日持ちがするということで、手土産にはもちろん贈答用にもピッタリ!配送も可能です。ハーフサイズの販売もスタートしたので、まず自分でお味見してというのもいかがでしょうか!?
チーズやエピスが使用されているので、日々味が変化し、熟成していくのも楽しみのひとつ。チーズクリームの水分がパンデピスに移行し、ほろほろ→しっとりとした食感に。チーズも丸みを帯びたテイストに変化し、全体的にさらに一層一体感が増してきます。私も5日間かけて味と食感の変化を楽しみましたが、個人的には3日目が一番好みでした。
そして素材をご覧いただけばお分かりかと思いますが、こちらはシャンパンやワインとの相性も抜群!本物志向のアダルトな味覚の持ち主へ。ミッドナイトスイーツとしてもお薦めです。
この「Sのチーズケーキ」のプティ・ガトー版として登場したのがこちらの「ノクターン」。赤ワインのシャンティとカシスのコンフィチュールがアクセントになっています。こちらはぜひ、イートインでご堪能ください。
シャンティのミルキーな風味と、赤ワインのコク、カシスの酸味が加わり、さらにエレガントでリッチなテイストに仕上げられています。
でも実は私個人的には、シンプルなSのチーズケーキの方が断然お薦め!他に何もプラスする必要のない、最強の3パーツのマリアージュ。まさに味、香り、食感、どれをとっても究極のバランスに仕上げられた逸品です。
※掲載情報は 2015/06/21 時点のものとなります。
- 14
キュレーター情報
スイーツコーディネーター
松本由紀子
スイーツコーディネーター&ライター。
一般雑誌、菓子専門誌、TV、ラジオ、webサイトと多岐にわたり、ライター&コメンテーターとしてスイーツ情報を発信。スイーツ関連メーカーのコンサルティングを務め、商品開発、コラボ商品の企画、マーケティングに携わる。スイーツ講座(定期/単発)の講師も務める。
10名のパティシエの珠玉の一品!を集約したDVD 『Sweets美術館』をプロデュース&出演。
http://www.amazon.co.jp/Sweets美術館-2012-松本由紀子/dp/B00BPJSFF2
百貨店催事やイベントをプロデュースし、「スイーツコーディネーター松本由紀子セレクション」なる冠催事を展開。
*2012年11月~:フランスフェアー@JR大阪三越伊勢丹
*2014年2月:サロン・デュ・ショコラ@JR大阪三越伊勢丹
*2015年2月:アムール・デュ・ショコラ@大阪高島屋
*2015年10月~:松本由紀子セレクション@阪急うめだ本店
ORIGINE KOBEの広報を務める。
http://r.gnavi.co.jp/ippin/article-2060/