チリの誇るウルトラプレミアムワイン「ヴィネド・チャドウィック」

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鉱山富豪がスポンサーになったワイン産業

チリのブドウ栽培は16世紀半ばに、スペインのカトリック伝道者が聖餐用ワインを造るためパイス種を植えたことから始まります。

 

1818年にスペインから独立したチリは、豊富な鉱物資源を元に経済成長を続けていきました。そこから鉱山富豪が続々と誕生し、彼らがワイン産業のスポンサーになっていきます。豊富な資金力を元に、醸造機器のみならず豪華なシャトーやゲストハウスなどの調度品まで輸入し、チリのワイン産業は躍進を遂げていくのでした。

英国とスペインがルーツのチャドウィックとエラスリス家

チリの誇るウルトラプレミアムワイン「ヴィネド・チャドウィック」

▲現在はヴィネド・チャドウィックのブドウ畑になったポロ競技場

 

ちょうどこの頃、英国人鉱山エンジニアのトーマス・チャドウィックは新大陸でのチャンスを夢見て、イギリスからはるか南アメリカまで赴き、1820年にチリに拠点を築くことになります。

 

その後、1909年にチャドウィック家の3代目アレハンドロ・チャドウィックが、ドン・マキシミアーノ・エラスリスの大姪レオノール・エラスリスと結婚し、チャドウィック‐エラスリス家が誕生。1914年に二人の間にアルフォンソ・チャドウィック・エラスリスが生まれました。

 

ちなみに、日本では結婚によりどちらかの姓を選ぶことになりますが、スペイン語圏では名前の後に父方、母方の姓を両方綴ります。

 

ドン・アルフォンソは優れたポロ・プレイヤーで19の公式ポロ選手権で優勝、ギネス記録にあと1勝と迫った実績をもつ人物。チリワイン産業の近代化を押し進めたパイオニアとしても尊敬を集めていました。

 

1945年に首都サンティアゴを擁するマイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト地区に地所を購入。ここに屋敷とポロの競技場を建設し、毎日愛するスポーツの鍛錬に励みました。このポロ競技場では、イギリスのエディンバラ公と友好試合を行ったほどです。

ポロ競技場をブドウ畑に転換

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▲アンデス山脈がそびえ立つ冬のブドウ畑

 

一家の屋敷があるマイポ・ヴァレーは、マイポ川流域にブドウ畑が広がり、東から西に向かって標高500∼1000mの高さになだらかに傾斜しています。アンデス山脈の麓の気温日較差は20度に達する日もあり、低緯度による日照量と山や海からの冷涼さという条件を生かして、独自の風味を持つ高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンを産出します。

 

そんな環境の中、ドン・アルフォンソの4人の子供の末弟エデュアルド・チャドウィックは、特に優れた自邸エリアのテロワールに気づいていました。

 

父がポロ・プレイヤーを引退した後、競技場をブドウ畑に転換するよう説得し続け1992年に植樹を開始。この畑で収穫されるワインはアルフォンソ・チャドウィック・エラスリスへのオマージュを込めて「ヴィネド・チャドウィック」(チャドウィックのブドウ畑)と命名されました。

 

愛好家の方でもあまり口にしたことがないこのワイン。それもそのはず、年間生産量はおよそ5,000~10,000本あまりと、ロマネ・コンティやペトリュス並みの極小生産量なのです。

グラスによって表情を変えるエレガントなワイン

チリの誇るウルトラプレミアムワイン「ヴィネド・チャドウィック」

そんな貴重な「ヴィネド・チャドウィック」の2019年を試飲する機会を得ました。

 

ブドウ畑は約15ha、土壌の50~90%は大きさの異なる砂利で形成され、カベルネ・ソーヴィニヨンが14ha、プティ・ヴェルドが1haという比率です。

 

2019年はワイン評論家のジェームス・サックリングが99点をつけている素晴らしい年。

 

評論家の点が高い=熟成ポテンシャルがある=強いと考え、一番大きなグラスが美味しいだろうという仮説の元に、グラスを3つ用意してみました。

 

大ぶり:フラットなボトムが革新的な、リーデル社のワイン・ウィングスシリーズのカベルネ・ソーヴィニヨン

中庸:高級レストランで一般的に使用されているリーデル・ヴィノムシリーズのボルドー

小ぶり:金沢・鏑木商店の台座が九谷焼でグラス部分がリーデル

 

深みがあり艶やかに輝くルビーレッドの色合いには、時々ガーネットが見え隠れします。

香りや味わいは3つのグラスで見事に違うテイストが感じられ、同じワインとは思えないくらいです。

 

ウィングスシリーズではお花やスパイス、なめし皮や青いハーブのニュアンスすぐに立ち上り、味わいも綺麗な酸が強調されました。ヴィノムシリーズでは全体に重心がどっしりと下に下がり、エレガントな物腰の中からちらりと野性味が顔をのぞかせます。鏑木商店では全体的に固めに仕上がり、砂利質のテロワールが浮かんでくるようです。実はこのグラスは「旅行中も泡白赤問わず美味しくワインが楽しめますように。」と鏑木社長がプレゼントして下さったのですが、じわじわ開いてくる香りや味わいは、物思いにふけりながらだらだら楽しみたいときにピッタリだなと改めて実感しました。

 

抑制のきいた素晴らしい熟成ポテンシャルを持つワインに合わせて、次回はマリアージュをレポートしたいと思います。

 

ヴィネド・チャドウィックのインスタグラム

@vinedochadwick

※掲載情報は 2021/10/21 時点のものとなります。

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キュレーター情報

林麻由美

ソムリエ・ワイン研究家

林麻由美

企業、オンラインショップ、イベントにマッチしたワインセレクトやセミナーを行うソムリエ・ワイン研究家。
国内大手航空会社に乗務員として入社。国際線ファーストクラスを15年担当、世界55カ国以上を回り、世界各国のワインや様々な職業や人々に触れるうちに、ワインが繋ぐ人の縁の素晴らしさに感動する。
1995年に当時はまだ耳慣れない言葉だったソムリエの資格を取得、2001年にシニア・ソムリエも取得。その他、クージヌリー・ド・ブルゴーニュ、英国WSETLevel3、日本酒利酒師、温泉ソムリエ、フードアナリスト記者の資格を持つ。
現在は、ボルドーワイン騎士団理事、サクラアワード常任審査員、イベント・バンキング・フードイベント・プロデューサーとして、ワインと食の啓蒙活動に努めている。
JAL、アメックス、ダイナース、VISAの機関誌、ワイン専門誌では、テイスターや筆者として、ブルガリやディオールなどのファッションブランド企業、電通などの大手企業では、オーダーセミナーを行う。また、ジェラールチーズなどのオンライン販売では、チーズを使った料理とワインのマリアージュを提案している。

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