チリのウルトラ・プレミアムワインの先駆け「セーニャ」

チリのウルトラ・プレミアムワインの先駆け「セーニャ」

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セーニャの名前を知ったのは今から約20年前。

その頃の私は航空会社に勤めていました。ソムリエバッチをつけカッコよく仕事をこなしていた先輩に憧れてソムリエの資格を取得し、益々ワインにのめりこんでいきました。

 

ところがその当時は、ソムリエという言葉は世間ではまだまだ知られていませんでした。勉強しようにも情報が圧倒的に少なかったので、先輩方が「ル・シエル」という社内のソムリエクラブを創設。持ち回りでオフの日に勉強会を行っていました。

 

「高級ワインはボルドーやブルゴーニュばかりではないから、もっと新しい産地を探求しましょう!」とソムリエ第1号の先輩たち。

 

私の手元に、その時に貪るように読んだワイン雑誌ワイナート「チリワインのベストを探せ」があります。セーニャ、ポール・ブルーノ、ドムス・アウレアなど、全体的に青いトーンの味わいが印象的だったのを思い出します。

チリのウルトラ・プレミアムワインの先駆け「セーニャ」

セーニャ誕生のルーツはパリスの審判!?

1976年、パリで「アカデミー・デュ・ヴァン」というワイン学校を運営していたスティーヴン・スパリュア氏は、アメリカ建国200年を記念して、フランスのファインワインとカリフォルニアのワインを、ブラインドで試飲するイベントを開催しました。

 

審査員はドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの共同経営者やパリの3つ星トゥール・ダルジャンのシェフ・ソムリエなど、錚々たる顔ぶれの9名。

当時はカリフォルニアのワインは無名だった時代です。誰もが自分が高得点をつけたワインはフランスと信じて疑いませんでした。

 

ところが皆の予想を裏切り、赤白ともに1位になったのはカリフォルニアワイン。

 

フランスの著名ワイナリーが揺れ動く中、シャトー・ムートン・ロートシルトは新世界の可能性にいち早く目を付けました。すぐさまカリフォルニアへ飛び、ジョイント・ベンチャーを組むのに最もふさわしい相手として選んだのがロバート・モンダヴィです。1986年にオーパス・ワンが誕生し、日本で最も知名度が高いカリフォルニアワインとして知られるようになりました。

 

その後ロバート氏は新たな可能性を求めてチリに赴き、友人の伝手から名門エラスリス家のエデュワルド氏に、チリのワイン産地を1週間ほどかけて案内してもらうことになります。ロバート氏はエデュワルド氏に、自分と同じ精神が流れていることに気づきました。

 

旅が終わる頃には二人とも、チリにはカリフォルニアが数十年前に示した潜在能力があることを確信したのです。

さあ、ここから新たな土地探しがスタートしました。

 

今までにないウルトラ・プレミアム・ワインを造り出すために相応しい土地を、4年余り探し求めました。当時は一般的でなかった良い酸を持った、エレガントなワインを生み出せる土地です。

そして出来上がったのが「セーニャ」、ファーストヴィンテージは1995年でした。

チリのウルトラ・プレミアムワインの先駆け「セーニャ」

理想の寒暖差を持つ唯一無二のテロワール

ワイナリーのあるアコンカグア・ヴァレーはチリの首都サンチャゴから北へ約100km、アンデス山脈の麓から海岸に向かう、アコンカグア川沿いの平地です。

 

穏やかな地中海性気候で平均気温は14度、夏の気温日較差は15~20度、年間240~300日は晴れと、ブドウを完熟させるのに相応しい条件を持っています。

 

雨が降るのは冬の間に限られるため、ブドウ生育期間は乾燥してオーガニックなどの自然農法に最適な条件となります。アンデス山脈の豊富な雪解け水がアコンカグア川に流れ込むため、灌漑用水に困ることもありません。

 

その中から選ばれたのは、太平洋から40kmの地点にある42ヘクタールのヒルサイドエリア。慎重にテロワールを分析して、主体として植えられたのはカベルネ・ソーヴィニヨン、その他カルメネール、マルベック、プティ・ヴェルド、メルロ、カベルネ・フランなどです。

チリのウルトラ・プレミアムワインの先駆け「セーニャ」

大地のパワーで体が満たされるワイン

最近、セーニャの2014、2017年を試飲できる貴重な機会を得ました。

 

◆2014年:9月の霜が困難な状況をもたらしたが、後半の天候回復で緊張感のあるワインに仕上がった年

深くやや黒みを帯びたガーネット色。熟度の高いブラックベリーやカシス、後からドングリの実、湿った土、落ち葉、シガーなどの香りが立ち上ってきます。カリフォルニアのように陽気ではなく、やや控えめな果実味とやわらかな質感のタンニン。大地からくる土のパワーがじわじわと湧き上がってくるようなセーニャは、力強いのに飲み疲れすることなく、すっと体に溶け込んでいきました。

 

◆2017年:暑く日照量が多い年で、新鮮さとセーニャのスタイルを維持することに注意を払った年

濃厚な黒みを帯びたガーネット色、熟したブラックベリーやブラックチェリーが、ローズマリーやセージの爽やかなグリーンノートで引き締められています。噛み応えのある果実味や力強いタンニンを、綺麗な酸が引き締めています。温暖な年の特徴を持ちながらも、抑制感と大地のエネルギーに満ち溢れた味わいです。

 

チリのプレミアムワインを味わってみたいなら、是非セーニャからお試しになってみてください。

 

セーニャのホームページ:https://www.sena.cl/

※掲載情報は 2023/02/17 時点のものとなります。

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キュレーター情報

林麻由美

ソムリエ・ワイン研究家

林麻由美

企業、オンラインショップ、イベントにマッチしたワインセレクトやセミナーを行うソムリエ・ワイン研究家。
国内大手航空会社に乗務員として入社。国際線ファーストクラスを15年担当、世界55カ国以上を回り、世界各国のワインや様々な職業や人々に触れるうちに、ワインが繋ぐ人の縁の素晴らしさに感動する。
1995年に当時はまだ耳慣れない言葉だったソムリエの資格を取得、2001年にシニア・ソムリエも取得。その他、クージヌリー・ド・ブルゴーニュ、英国WSETLevel3、日本酒利酒師、温泉ソムリエ、フードアナリスト記者の資格を持つ。
現在は、ボルドーワイン騎士団理事、サクラアワード常任審査員、イベント・バンキング・フードイベント・プロデューサーとして、ワインと食の啓蒙活動に努めている。
JAL、アメックス、ダイナース、VISAの機関誌、ワイン専門誌では、テイスターや筆者として、ブルガリやディオールなどのファッションブランド企業、電通などの大手企業では、オーダーセミナーを行う。また、ジェラールチーズなどのオンライン販売では、チーズを使った料理とワインのマリアージュを提案している。

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