京都・村上開新堂とロシアケーキの謎

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懐かしいロシアケーキ

フランスパンは日本での呼び方で、フランスでは「バゲット」、しいて言うなら「パン・フランセ」。山形の食パンのイギリスパンは、「ホワイトブレッド」で日本ではポルトガル語読みの「エゲレス=イギリス」にパンがついたもので、フランスでは「パン・ド・ミ」。これらは、名称違えども本国にはちゃんとある。それでは、「ロシアパン」はどうだろうか?

 

ロシアのパンも、白パン、ライ麦パン、黒パンなどにおなじみのピロシキと多彩である。しかし、日本で固有名詞の「ロシアパン」というと、ロシアの古いパンを日本で模して作られた菓子パンである。このロシアパンは「新宿中村屋」のHPから引用すると1917年(大正6年)にロシア革命が起こり、多くのロシア人が海外へ亡命・移住し日本にパン職人のギリシア系ロシア人キルピデスが採用されて1921年からロシアパンの製造・販売を開始したとある。ここで、本国ロシアのパンが日本人の趣向に合わされて独自の進化をする。おなじく今度は「ロシアケーキ」であるが、これも「新宿中村屋」1931年に新宿中村屋がロシアから製菓技師のスタンレー・オホッキーを家族ごと日本へ招聘したとあり、その当時としては破格の年俸四千円という待遇だったと。現在の貨幣価値では正確に計れないが、その当時のサラリーマンの平均年棒が738円で5.5倍、現在の940万円に相当する。このスタンレー・オホッキーは、ロシア皇帝のお抱えの製菓技師ともあるが、ロシア革命から14年後の来日で、新宿中村屋で掲載の写真を見るとそんな歳には見えなく、果たしてニコライ2世の時代の職人なにだろうかと思った。

京都・村上開新堂とロシアケーキの謎

それは、さておき新宿中村屋ではロシアパン、ロシアケーキを大々的に販売し、オホッキーに指導を受けた職人達が独立したりして、ロシアにも無い「ロシアケーキ」が広まっていくのである。子供の頃、たまにこの「ロシアケーキ」を食べていた記憶があるが、子供心に「ケーキというより、ビスケットじゃないか」と思っていた。ケーキという名前は付いているが、ロシアケーキは焼き菓子で、ビスキュイ(ビスケット)を焼き、アーモンド、ピーナツ、砂糖などを用いたマコロンをその上に絞りつけ、さらに焼きつけるという二度焼きなのだ。別名「ロシアクッキー」とも呼ぶことがあるが、ビスケットもクッキーも同じ意味である。

京都・村上開新堂とロシアケーキの謎

さて、長々と書いてきたが今回紹介するのは、京都「村上開新堂」のロシアケーキである。京都をあても無く散歩するのが大好きで、ある時にばったり「村上開新堂」の前に来た時は「おっ、村上開新堂だ!」と喜んで店に入ったのが最初だった。東京の「村上開新堂」は紹介者が必要で(紹介してもらい会員になるシステム)敷居が高いが、京都の「村上開新堂」は紹介者に関係なく店内で購入できる。

京都・村上開新堂とロシアケーキの謎

京都・寺町二条にある「村上開新堂」は昭和初期に建てられた洋風の建物で(開業は1907年・明治40年)、表が木造漆喰の洋館、奥は和の日本建築になっていて、板ガラスのドアやカーブのショーウインドウ、高い天井や大理石の柱などは、明治・大正の面影を色濃く残している好きな佇まいで、京都らしいと言えば京都らしい老舗だ。

京都・村上開新堂とロシアケーキの謎

池波正太郎もエッセイの中で「好事福盧(こうずぶくろ)」の事を書いているが、今回は「ロシアケーキで、アプリコット、レーズン、チョコレートの箱入り。やはり、ロシアケーキは何だかソフトな生地やバターの風味でそんなに甘くなく懐かしい、郷愁の味がする。次には「クッキー缶」が欲しいのだが、少量生産のために予約制なので、いつ買えるだろうか。やはり、京都に来て京都で買わなくては!

紹介しているお店
京都・寺町 村上開新堂

※掲載情報は 2019/02/12 時点のものとなります。

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後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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