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もう一つもうひとつとついつい手が伸びる食感と味わい
生まれ育った関西を離れてもう20年以上が経ちますが、それでも今なお忘れられない味というのがいくつかあります。年にわずかの帰省の際には、買ったり食べたりと胃袋がとっても忙しくなり、その度に私の食いしん坊の由来は大阪にあるのだと実感しています。偶然とはいえ、食い倒れの街に生まれ育ったお陰で、もしかしたら人生何倍も楽しくなったんじゃないかと思うほど、“食べる”って楽しいことだな~なんてふと幸せに思うのであります。
今回ご紹介する小島屋さんの「けし餅」は大阪の街に300年以上もあり続ける銘菓。
ちょっと地味~な普通の外装、目を凝らしてよく見たらプチプチがぎっちりのちょっと普通でない餅の外観。食す前はほとんどの人が期待しないで食べるのですが、差し上げて何の感想も言われないことはないほど、皆さん口を揃えて絶賛される私の自慢の隠し玉の大阪土産です。普通そうなお餅が飛びぬけて美味しいのですから、やはり何事も見ためだけで判断するべからずなのです。
小島屋さんのある大阪府堺市は、千利休を産んだ町。お茶と和菓子はセットですから、茶のある堺に和菓子屋あり。堺には美味しい和菓子屋がたくさんあるといわれております。小島屋さんも江戸時代から続く老舗でその歴史は300年以上だそう。初めて「けし餅」を食べた時はひっくり返るほどの上品さと美味しさに、今までなぜこのお菓子を知らなかったのか……と後悔したほど。そして食べ慣れた今でもなお、口に含むたび、美味しすぎて ああなぜ何カ月もこれを食べなかったのか……と食べなかった日々を後悔するほどの逸品なのです。
お餅をまじまじと見ていただくとお分かりかと思いますが、寸分の隙もないほど、ぴちーっと「けし」が敷き詰められています。すごいな~っと感心するのは、時間経っても、餅を手に取っても、なかなか「けし」がはがれない、ぽろぽろ落ちない。この細かな職人仕事には本当に感心してしまいます。
さて、「けし餅」のけしとは何でしょう。漢字で書くと「芥子」となりますが、別名をポピーシードとも言います。洋菓子の材料にもよく使われますので、「あ、それなら知ってる!」という方もいるかもしれませんね。
実際に食べてみると、まずは「芥子」のごまのようなプチプチ食感が特徴的ですが、想像以上にもちもちで柔らかく、甘すぎない上品なこし餡、プチプチの「芥子」の食感が全てミックスされて、味・食感・風味のバランスには唸りをあげてしまいます。
餡がたっぷり入っていて実際のお餅の割合は少ないのですが、それでも十分すぎるもちもちさがたまりません。
そんな味や食感を、もう一度確かめようと思うあまり、ひと口、またひと口と辞められない止まらない現象を引き起こす「けし餅」なのです。この「けし餅」新大阪駅でもひっそり販売されております。忙しい帰省中に買い忘れても、毎回最後にこの売り場に助けられております。
※掲載情報は 2017/11/20 時点のものとなります。
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キュレーター情報
茶ムリエ/メンタルコーチ
宮原昌子
綜合商社勤務を経て結婚。上海に住んだことをきっかけに、上海で中医学・中国茶を学び、飲むこと・食べることが毎日を健康で楽しく過ごすことになると実感。
帰国後、中国茶専門店にて通訳・バイヤー・コーディネート等を手掛け、2004年より茶ムリエとして活動。自宅サロン主宰・企業や団体へのセミナー講師・雑誌やテレビ等の茶の監修・執筆業など多岐にわたり活動後、広州へ転居、華南農業大学茶学部の聴講生となる。
帰国後、クリニックに勤務、心のケアを実動で学び、心理学・コーチングを学ぶ。中医学と茶の理論に加え、心理学とコーチングを掛け合わせた独自のメソッドで、自己治癒力を高める方法・セルフケアのアドバイスを行うと共に、体質にあった茶の選び方を提案している。悩みを明確に整理し、本当にやりたいことの目標・プロセス設定で目標達成をサポートするコーチングセッションは、自信を持って自分らしく生きていけると好評
上海医薬大学 推拿科卒業
中国労働省和社会保障部公認資格 高級茶藝師・評茶師
銀座コーチングスクール GCS認定コーチ
監修本:別冊Lightning vol.53「ペットボトルのお茶の本」 枻出版社