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半世紀をかけて 尾道に蘇った 猫の缶の舶来紅茶
世界中どこに行っても必ずチェックするのはお茶売り場。日本国内でも同じでその土地のお茶はどんなお茶だろう・・とワクワクしながら売り場をチェックするのは、日常にあるお楽しみのひとつになっています。先日、広島県尾道市界隈に出向いた際に見つけたのが、本日紹介する「尾道紅茶」。特徴的な可愛い猫がトレードマークの紅茶缶です。東京にいると、都会的なパッケージが多く、それはそれでまた楽しいし大好きなのだけれど、地方に行くと、その土地土地のものが工夫されて販売されていて、そういうコーナーをただ見るだけでも本当に楽しいひと時、こういう時間はあっという間に時間が過ぎますね。ちなみにこの猫の缶は猫の多い尾道ならではのキャラクター。奥の細道ならぬ、「猫の細道」がたくさんあり、あちこちで猫が自由に暮らしている街だからだそうで、尾道には猫のマークをモチーフにしたものをチラホラ見かけます。それに黒猫は「航海安全の守り神」という説もあるそうですよ。海の街ならではのキャラクターなのですね。
広島の港町“尾道”。細い坂道を駆け降りると静かで美しい海が広がり、どんな角度からも絵になる街。映画やドラマ、小説などでも舞台になることが多い街としても知られています。福山市と尾道市の境にある、ベラビスタリゾートスパ&マリーナ尾道は特に大好きな場所で、お部屋のアメニティにもなっているのがこの「尾道紅茶」。最初に缶を手に取りながら、まず思ったのは「この街で紅茶を作っているの?」ということ。結論はNO。こちらの紅茶は尾道産ではなく、スリランカ産。ではなぜ尾道紅茶なんだろうと思い調べていくと、そこには港町尾道ならではの歴史が関係していました。港町だった尾道は、日本が文明開化に湧いた明治以降、紅茶を輸入し飲む文化が根付いていたそうなのです。当時はハイカラさんを中心に多くの人に愛された紅茶文化でしたが、第二次世界大戦以降、取り扱いがなくなりそれ以降、尾道の紅茶文化自体忘れ去られていたようです。そこで立ち上がったのが尾道の老舗茶屋「今川玉香園茶舗」。明治創業の老舗のお茶屋さんで安心安全をモットーにしている名店です。
もう一度尾道に紅茶文化をということで、現在では数種類の紅茶を輸入し、販売されています。どの紅茶も日本茶に精通した老舗だからこその茶葉へのこだわりが感じられるラインナップ。その中でも私がいちばん気に入って今回紹介するのが「アールグレイ」。
アールグレイというのは銘柄名で、英国の時の首相、グレイ伯爵に由来する名前で、日本人にもファンの多い定番の着香茶です。着香茶というのはベースの紅茶に何かしらの香りをつけているもの、フレーバードティーというとわかりやすいでしょうか。そして、アールグレイは柑橘系のベルガモットの香りをつけているフレーバーティーの一種、つまり、お店によってベースのお茶も違えば、その香りづけの強弱や香りの種類も微妙に違い、アールグレイと言えども、多種多様のアールグレイが存在するということになります。ですから、アールグレイは好きなのにここのは飲みやすい、ここのはちょっと・・・と、同じアールグレイなのに店舗によって味に差が出やすく、飲む手の嗜好との相性が良いか悪いかが特徴的とも言えるのです。
一般的に日本人は香りが強すぎるものは苦手で私もそのひとり。特に お茶好きな人は、香よりお茶の味を重視する傾向にあるので、香りばかりでお茶の味がないというのをいちばん残念に思うものです。
尾道紅茶のアールグレイはベースがスリランカの古都キャンディ、デゥーテルオヤ茶園産。
このようにどの茶園のお茶なのか表示しているお茶屋さんは、消費者としてはやはり安心できます。一般的にキャンディ産のお茶は、他のスリランカのお茶より個性が少ないと言われていますが、逆に言うと、飲みやすく渋みも味のバランスも良いということ。ですから香りをつけるのに適しているお茶とも言えます。また、キャンディ産の紅茶の味がしっかり出やすいので、私自身は紅茶らしい紅茶ということで、ストレートで飲むのに美味しくてお気に入りです。
この尾道紅茶も香りも味もバランスが私好み。紅茶の味がしっかり味わえて爽やかな柑橘系の香りが鼻腔に広がる絶妙なバランス。
ちょっとアバンギャルドな猫の黒い缶からは想像もつかないほど 爽やかな香りの尾道紅茶アールグレイ、飲んで癒されてほっとしたら、あなたも港町にワープしたくなるかも。ぜひ、飲んでみてください、お勧めの逸品です。
※掲載情報は 2017/10/09 時点のものとなります。
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キュレーター情報
茶ムリエ/メンタルコーチ
宮原昌子
綜合商社勤務を経て結婚。上海に住んだことをきっかけに、上海で中医学・中国茶を学び、飲むこと・食べることが毎日を健康で楽しく過ごすことになると実感。
帰国後、中国茶専門店にて通訳・バイヤー・コーディネート等を手掛け、2004年より茶ムリエとして活動。自宅サロン主宰・企業や団体へのセミナー講師・雑誌やテレビ等の茶の監修・執筆業など多岐にわたり活動後、広州へ転居、華南農業大学茶学部の聴講生となる。
帰国後、クリニックに勤務、心のケアを実動で学び、心理学・コーチングを学ぶ。中医学と茶の理論に加え、心理学とコーチングを掛け合わせた独自のメソッドで、自己治癒力を高める方法・セルフケアのアドバイスを行うと共に、体質にあった茶の選び方を提案している。悩みを明確に整理し、本当にやりたいことの目標・プロセス設定で目標達成をサポートするコーチングセッションは、自信を持って自分らしく生きていけると好評
上海医薬大学 推拿科卒業
中国労働省和社会保障部公認資格 高級茶藝師・評茶師
銀座コーチングスクール GCS認定コーチ
監修本:別冊Lightning vol.53「ペットボトルのお茶の本」 枻出版社