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フルーツとピーナッツ。2種の珍しいフレイバのタイカレー
梅雨入り前だが気分はもう初夏、という感がある。カレーなどの辛い料理は誰もが通年食べるようになったが、やはりカレーは夏のイメージであり続けるようだ。確かに食欲がない蒸し暑い時などカレーなら食欲も湧くし汗をかいて爽快な気分になれる。中でも爽快感が強いのがタイカレーではないだろうか。
タイカレー。本来は日本人の考えるカレーとは少し違うものだ。確かにごはんにかけて食べることが多いので日本人の感覚でいくとカレーライスということにもなろう。しかし、本来タイ語でゲーンと呼ばれるそれらは汁、スープという意味を持つ。例えば鶏だしのクリアスープをナンプラー(タイの魚醤)で仕上げたものを「ゲーンジュー」と呼ぶ。これは辛くないタイプのコンソメスープ的なもので定食などについてくることも多い。日本でいうならすまし汁だ。皆さんのご存知、グリーンカレー、レッドカレーはそれぞれゲーンキヤオワーン、ゲーンペッと呼ばれており、どれもゲーン、スープの仲間なのだ。
そんな豆知識はさておき、もうこの季節の風物詩とも言えるようになった、代々木公園で行われる日本最大規模の集客と盛り上がりを見せる「タイフェスティバル」が開催された。2000年に始まり18回を数えるこのお祭りは動員数2日間で30万人を軽く超える規模となっており、大変な賑わいになる。今年2017年は日・タイ修好130周年というアニバーサリーイヤーであることもあり、大変盛況なうちに幕を閉じた。
わたしもずいぶん長く楽しみに通っているタイフェスティバル。美味しい料理、ステージのダンスや歌というお楽しみとともに、忘れてはならないのが物販。特にこの時でないと手に入らないものや見たことのない面白いもの美味しいものなども物販ブースで数多く見つかる。
いつも楽しみな「ヤマモリ」のブース。毎年試食で賑わっている。ヤマモリ株式会社は120年企業。三重の地に本社を置く味噌の醤油の醸造メーカーだ。1968年に大塚食品が世界初の市販レトルトパウチ食品を発売したわずか1年後に自社開発のレトルト殺菌装置で釜めしの素の生産を始めた老舗レトルト食品メーカーという顔も併せ持つ。そんなヤマモリは80年代後半にタイへの進出を果たし、以来タイとの良好な関係を築き上げており、現在ではタイに自社グループの工場を持ち、そこで生産されているタイカレーのレトルトパウチ食品は大変に美味しいと評判が高い。日本のレトルトタイカレーの草分けにして最優秀と言える品質だ。
ブースをのぞくとわたしが愛用しているグリーン、レッド、イエローの定番のタイカレー、カニの卵とじカレーのプーパッポンカリー、近年の流行りと日本人の舌によくあうということでラインナップに入ったゲーンマッサマンに加えて見かけない種類を発見した。「タイカレーパネーン」と「タイカレーパラダイス」の2種だ。
パネーンは日本のタイ料理店でもたまに見かけるタイカレー。タイ南部風の郷土料理でスープ状のゲーンの中でもとろみがあり濃厚なのが特徴だ。
もう一つのパラダイスとはなんだろうと思ってパッケージを見てみるとゲーンクアとある。そうか、ゲーンクアサッパロ(パイナップルの炒め煮カレー)のようだ。これも南部のゲーンではなかったか。
ちょっと楽しくなってさっそく自宅で試してみることにした。
せっかくだからごはんもこだわろう、と木徳神糧のタイ香り米を炊いた。ゴールデンフェニックスというタイのブランド長粒米、ジャスミンライスだ。浸水せずに炊けるのが便利でよい。実に上品な香りに炊きあがってタイ料理によくマッチする。
せっかくだからと器もタイの食器にこだわってみた。この白と青の食器の模様はタイ料理店でも見たことがあるだろう。パイナップルの表皮を模してある可愛らしいものだ。
まずは「タイカレーパネーン」。一目見ても濃厚な感が伝わる赤褐色のソース。どこからともなく香ばしさを感じるのだが、どうやらその正体はピーナッツのようだ。奥行き、深みと香ばしさがプラスされてとてもいい。具材はマクワポアン(スズメナス。大きめのグリーンピースのような外観)が苦味があって良いアクセントになっている。
鶏肉もたくさん入っておりその存在感を強く感じる。そしてやはりカレーソース自体の存在感が強く、ごはんがグイグイと進む感がある。ソースの中に大きく浮かぶ油の部分が旨味になっていて、よく混ぜて食べるといっそう美味しい。大変食べ応えあるどっしりしたカレーに仕上がっている。
「タイカレーパラダイス」は甘く香りいいカレーだ。本来南部の料理なので激辛かと身構えたがこれは辛さを控えて仕上げてある。いや、むしろ甘い。あまからのタイカレーだ。パイナップルの入った料理に抵抗がある方もいるが、これは不思議なほどそのクセを感じない。よくカレーソースと馴染んでいるためであろう。
悪目立ちせず控えめに存在感を主張するパイナップルに好感を覚えた。バイマックルー(コブミカンの葉)の柑橘の爽やかな香りが心地いい。甘さの中に柑橘の爽やかさがあり、甘ったるいだけにならないのが美点のカレーだ。すりおろしで入っているマンゴーも含めたフルーツの香りがふわりと立ちのぼる感じで、その中に辛さが重なる。あえて誤解を恐れずいうが、これは飲めるカレーだ。甘く癖なく、面白くてどんどん食べてしまう。日本人が好きな甘辛感が感じられ、ハマる人もいるのではないか。
どちらも大変美味しい、面白いタイカレーだった。「タイカレーパラダイス」のパッケージには日・タイ就航130周年記念商品のネームが入っていた。「タイカレーパネーン」の方はその日・タイ就航130周年記念で東京国立美術館で7月4日から開催される美術展「タイ〜仏の国の輝き〜」で、美術展オリジナルパッケージを施されたものが「マイペンライカレー」の名前で販売されるようだ。
マイペンライはタイ語で気楽にいこうぜ、テイクイットイージーという意味がある。タイ人の気質を表すような素敵な言葉だ。気楽にうまいタイカレーが自分の部屋で食べられるこのタイカレー。部屋の窓を開けて風を入れ、ちょいと盛り付けにもこだわって。ビールでも傍においてゆっくり楽しんでみてはどうか。
※掲載情報は 2017/05/25 時点のものとなります。
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キュレーター情報
カレーライター・ビデオブロガー
飯塚敦
食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。