日本で初めて洋菓子店を開いたフランス人、ルコントさんのお店のフルーツケーキ

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2017/04/21 公開

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日本で初めて洋菓子店を開いたフランス人、ルコントさんのお店のフルーツケーキ
日本で初めて洋菓子店を開いたフランス人、ルコントさんのお店のフルーツケーキ

目黒の元競馬場にあるイタリアン「メッシタ」(現在閉店して移転予定)で、料理人のミキちゃんから帰りに「これ、よかったら」と渡された白くて長い箱がありました。手にすると、ずっしり重い。中には、ホールのフルーツケーキが入っていたのです。(正確には半分までミキちゃんが食べた残りです)

 

「ルコントのフルーツケーキ!?」懐かしいケーキとの出会いでした。10年くらい前なら甘いものにはさほど興味を引かれなく、レストランで食事をしても食後はもっぱら、食後酒でデザートはあまり頼まなかったのです。しかし、段々甘いものに目覚めてきた(遅いが)のは、加齢と共に味覚が変化したからだと感じるのです。このところ、朝食でもコーヒー・ブレイクでも結構甘いものに手を出している自分に気が付き、苦笑いしているのです。とはいえ、甘いものと言っても最近のスイーツはあまり食べないのです。確かに材料を吟味して最高の技術で芸術的に仕上げられたスイーツは、素晴らしいとは思うのですがね。どちらかと言うと、昔の洋菓子店的な味が大好きなのです。

日本で初めて洋菓子店を開いたフランス人、ルコントさんのお店のフルーツケーキ

ミキちゃんの話を聞くと、お客さまのお誕生日祝いの特注品を、引出物としてもらったものだそうで、お裾分けとしてご相伴にあずかりました。朝食に紅茶とカットしたフルーツケーキを食べた印象は、「本当に懐かしい味」だと思いました。生地の中に色とりどりのドライフルーツがちりばめられて、ラム酒の芳醇な香りに包まれている果実がジュワッと口に広がります。「うん、旨い!」

 

しっとりした生地とレーズン、プラム、チェリー、りんご、杏、ベリー類といった個々のフルーツの味で、甘味と酸味のバランスも良いのです。一番懐かしいのは色鮮やかなドレンチェリーで、種を抜いたサクランボの蜜付け。小さい頃の食べたケーキにはこのドレンチェリーがよく入っていたのを思い出しました。ドレンチェリーにも仕上げにもラム酒を塗っており、香りも楽しめるのです。そして、このフルーツケーキ、スライスタイプが気軽に1枚から買えることを後から知りました。

 

ルコントは、1968年に六本木で開店した(その後は六本木から青山へ移転した)、日本で初めての本格フランス洋菓子店として多くの人々に愛されました。2010年に一度、店を閉めましたが、2013年に広尾に新しい「ルコント」として再出発したのです。

 

この店を紹介するには、創業者のアンドレ・ルコントさん抜きでは語れません。1931年パリの南のロワール地方に生まれて、パリの店で働きはじめ、兵役を終えて“ホテル ジョルジュ サンク”でケーキ職人として修行し、ジャマイカに派遣されたのです。そこから、ルコントさんはその当時上院議員であったケネディ夫妻やロックフェラー家の贔屓にされたのです。また、イランへ派遣され、その当時のパーレビ国王のために、ケーキの王様と呼ばれる“ナポレオン ミルフィーユ”を作っていました。そして、東京オリンピックの開催に「ホテル オークラ」からフランス菓子の指導に招かれたのです。そして、1968年に日本で初めてフランス人による洋菓子店を開店したのでした。吉田茂首相もルコントさんのケーキが好きで、首相のお好みの“パリブレスト”をよく作っていたそうです。日本とフランスを菓子と料理を通じて食文化に貢献して「レジョン・ドヌール勲章シュヴァリエ」を授与されました。今、隆盛を迎えている日本のスイーツもルコントさんのような先駆者がいたからこそあるのです。そのルコント出身のパティシエの方々は、今の日本の洋菓子界の重鎮となり、全国にいらっしゃると聞きました。そして、ルコントさんの業績を継承するために、隔年で“パリブレスト”を課題にした「アンドレ・ルコント杯」が開催されているのです。まさに、ルコントさんはフランス菓子の伝導師なのです。

※掲載情報は 2017/04/21 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業にをはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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