あの日本映画界の巨匠も愛した京都縄手・かね正の「お茶漬鰻」

あの日本映画界の巨匠も愛した京都縄手・かね正の「お茶漬鰻」

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酒のあてにも締めのお茶漬けにもぴったり!

あの日本映画界の巨匠も愛した京都縄手・かね正の「お茶漬鰻」

既に方々で紹介され尽くされている商品を取り上げるのは、多少躊躇します。また、本当に長年食べ続けているので今更という気がしますが、今回は京都の「お茶漬鰻」をご紹介します。

 

かれこれ、私が京都へ通う様になり20数年経ちますが、必ず京都で買う物が錦小路にある漬物屋さんと、今回ご紹介する祇園縄手にある「かね正(かねしょう)の「お茶漬鰻」なのです。京都四条通を縄手通りに入り、しばらく歩くと骨董屋さんの多い辺りに「かね正」はあります。年に数回は京都に行くのですが、土日にかかる時は、店が日曜定休日のため何はなくとも買いに行くのです。「かね正」は慶応二年(1866年)の創業というので150年の歴史があります。初代当主は滋賀県の出身で、川魚問屋として商いを始めて、二代目当主が「お茶漬鰻」を考案したそうです。鰻の蒲焼きよりは味は薄く、佃煮よりはくどくないという中間に位置しています。佃煮だと水分が抜けてしまいますが、程よい水分が残りぱさぱさして良いのです。

 

ただ、賞味期間は冷蔵庫で保存して2週間程度なので持ち帰ったら早めに食べています。お薦めは商品名通りにお茶漬けですが、わが家ではまず、冷酒のあてにして、最後は炊きたてのご飯にのせて山椒の実や海苔をまぶして食べています。

 

お茶漬けにすると、鰻にしみ込んだ醤油が溶け出し、茶碗全体に旨味が行き渡り、ある意味でだし茶漬け的な味になり酒の締めにも合うのです。

あの日本映画界の巨匠も愛した京都縄手・かね正の「お茶漬鰻」

さて、ここまでは「かね正」の簡単な商品紹介ですが、ここからはこの「お茶漬鰻」が好きだった映画監督の小津安二郎の話です。仕事柄歴史に残る美食家の話は本などを通じて調べています。その中で通称「グルメ手帖」と小津が行った料理店や料理が記されている手帖があるのです。その中でも、小津安二郎は大の鰻好きで、東京だと老舗で有名な南千住の「尾花」や銀座の「竹葉亭」、日本橋「大江戸」、駒形「前川」に通っていたのです。映画の中でも鰻屋さんが登場するシーンが幾つもあるのです。東京深川生まれの小津ですが、東京と京都の撮影所を行き来して、京都など関西の食にも精通していたのです。京都の鰻だと縄手の「かね正」なのですが、ここの「お茶漬鰻」は小津の日記に中に残っているのです。

 

『1960年(昭和35年)2月20日(土曜)晴 終日在宅 橋本明治氏より茶漬うなぎ いたヾく 1962年(昭和37年)1月9日(火曜)晴 ふヾやから京かね正の茶漬うなぎくる 1962年(昭和37年)6月5日(火曜)晴 京都清水から茶漬うなぎ届く』

 

このお茶漬鰻を食べていた頃は「秋日和」、「小早家の秋」、「秋刀魚の味」など小津の最晩年の名作を多く生み出していたのです。(1963年60歳で逝去)美食家の小津安二郎の味覚に合格した「かね正」のお茶漬鰻は小津の嗜好を熟知していた方々から送られていたのです。あぁ、また京都に行って買ってこねば!

 

※参考資料『小津安二郎の食卓』(喜田庄 著・ちくま文庫)『小津安二郎美食三昧(関西編)』(喜田庄 著・朝日文庫)

あの日本映画界の巨匠も愛した京都縄手・かね正の「お茶漬鰻」

店舗名:かね正
住所:住所:京都市東山縄手通三条下る
TEL:075-541-1171

お茶漬鰻

かね正 住所:京都市東山縄手通三条下る

※掲載情報は 2016/12/16 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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