記事詳細
紹介している商品
プロが教える、「豊81(ほうはい) 純米酒」を美味しく飲むための方法
飲食店勤務という仕事柄、お店の営業を終えて帰宅する時間は毎晩24時過ぎになってしまうのですが、自宅で深夜の晩酌を愉しみながら、WEBサイト上の【SAKE SHOP】で日本酒の新規入荷状況をチェックするのが日課の一つとなっています。
そんな中でチョット興味を惹かれてNET購入したお酒が「豊81(ほうはい) 純米酒」です。
これは、「豊盃(ほうはい)」ブランドで知られる青森県弘前市の三浦酒造が、年に一度だけ通常の酒造りとは異なるスペックで仕込む、「チャレンジタンク」と呼ばれるプロトタイプのお酒で、今年度のチャレンジの最大の特徴は、通常ならば精米歩合55%まで精米(お米の外側を削る作業)して使用する「豊盃米」を、敢えて精米歩合81%(豊盃の「はい」と81の「はい」を掛けている)に留めて、いわゆる「低精白」のお米を使って酒造りを行っているという点です。
香りのトーンは中程度で、「バター飴」のような甘い乳製品の香りや、「マドレーヌ」を想わせる焼き菓子の香りがあり、「ほんのり甘く、穏やかで柔和な香り」が感じられます。
口当りは柔らかで、自然で嫌味の無い甘味と輪郭のハッキリとした酸,そしてコクのある旨味がバランス良く口に広がります。
後口にもしっかりとした酸が感じられ、余韻には舌にジワリと浸み込むような旨味が長く残り、アルコールのボリューム感はそれ程強く感じられず、「程好く飲み応えのある飲み口で、甘味、酸、旨味の三味の調和の取れた、雑味の少ない旨口タイプのお酒」でした。
蔵元のオススメ文によると、このお酒は「肉料理との相性も良い」というようなことが書かれていたのですが、さすがに「ビーフステーキ」や「フライドチキン」では、このお酒の個性に寄り添ってくれなさそうに思われたので、今回はこんな料理や食材を試してみました。
日本酒にも合う肉料理、合鴨ロース
まずは、和食の定番料理の一つ【合鴨ロース】です。
これは合鴨の胸肉を、表面を焼いてから薄口醤油と酒とみりんを合わせた煮汁で蒸し、冷ましてから冷蔵庫で煮汁に一晩漬け込んだもので、皮の部分の脂が程好くあり、そして肉の部分はジューシーで、噛みしめていると口の中に鴨肉独特の旨味がジワジワと出てきます。
そのタイミングですかさず「豊81(ほうはい) 純米酒」を合わせてみると、このお酒の旨味と鴨肉の旨味の2つの異なるタイプの旨味が不思議な感覚で寄り添ってゆきます。
微かに余韻に苦味が残りますが、気になるレベルのものでは無く、相性としては○と言って良いでしょう。
日本酒に肉料理を合わせたい時は、案外この「合鴨ロース」がオールマイティな役割を果たしてくれるかも知れません。
甘い香りとネットリとした食感が特徴の、ボーフォール・アルパージュ
続いて試してみたのは【ボーフォール・アルパージュ】というチーズです。
「ボーフォール」は、フランス東部の山岳地帯にあるサヴォア地方の「山のチーズ」なのですが、その中でも夏の間だけ、標高1500m以上のアルプスの山々で放牧される牛のミルクを原料として、山小屋で造られるものに限り、「アルパージュ」という名前を付けることが許されています。
白味噌を想わせるような甘い香りがあり、ややネットリとした食感で、凝縮感のあるミルクの甘味と旨味が、程好い塩味と共に口の中いっぱいに広がります。
おもむろに合わせてみると、「ボーフォール」の濃厚な旨味がお酒に対してやや上手になり、「豊81(ほうはい) 純米酒」の個性であるコクのある旨味が消えそうになってしまいます。
相性としては決して悪くは無いのですが、やや「ボーフォール・アルパージュ」の方が格上だな、と感じさせられてしまうような組合せでした。
ちなみに、この画像ではチョット判りづらいかもしれませんが、このお酒のラベルを良~く見てみると、「弘前城」、「りんご」、「津軽塗り」、「じゃっぱ汁」、「ブナコ」、「ねぷた祭り」などの津軽の名所、名物、郷土料理、お祭りのなど文字が、ラベルの青い部分に模様の様にぎっしりと書き込まれています。
蔵元の地元に対する強い愛着が感じられて、このラベルしみじみと眺めながら呑んでいると、「豊81(ほうはい) 純米酒」がより一層美味しく感じられてくるから不思議ですね。
※掲載情報は 2014/11/18 時点のものとなります。
- 5
キュレーター情報
酒匠・シニアソムリエ
佐藤茂夫
飲食業界に携わって今年でかれこれ30年目となりますが、その間にビヤホール,ブラッスリー,居酒屋,焼肉店,トラットリア,アイリッシュパブ,大型バーベキューレストラン,北海道料理店etc.の様々な業態のお店を渡り歩きました。
またその一方で、「ソムリエ」「利き酒師」「焼酎アドバイザー」「酒匠(さかしょう)」etc.のお酒に関わる様々な資格を取得し、2006年に開催された「第2回世界利き酒師コンクール」では、2度目のチャレンジで優勝を果たすことができました。
本業の合間には、これまで得た知識と経験をもとに、SSI (日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)が主催する、日本酒の利き酒師講習会で講師役なども務めております。
素晴らしい日本酒の魅力を、できるだけ多くの人に判り易く伝えてゆきたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。