夏スペックのお酒【かぶとむし】

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夏スペックのお酒【かぶとむし】

夏場はどうしても冷たいビールに手が伸びて、日本酒の需要が減退する季節になってしまいますが、今回はそんな暑い夏でも美味しく飲める日本酒を紹介したいと思います。
それがコレ 
【仙禽(せんきん) かぶとむし】です。
これは栃木の「せんきん」の蔵元が、蔵の仕込み水と同じ水脈上の田んぼのお米を使い、通常とは異なる「夏向けのスペック」で仕込んだお酒で、可愛らしい「7色のかぶとむし」のラベルで毎年夏限定で出荷されています。

 

香りのトーンは中程度で、「アプリコット」のような甘酸っぱい果実の香りに、「ブリー・ド・モー」を想わせる白カビチーズの香りが加わって、「甘酸っぱくフルーティーで、ほんのりミルキーな香り」が感じられます。
口当りは軽やかで、スッキリとした甘味に続いて、やや口を窄めるくらいのシャープな酸が押し寄せてきます。
後半には控えめかつ滑らかな旨味もあり、後口の僅かな苦みが余韻に絶妙なドライ感をもたらしています。
全体的には軽快な飲み口でありながら、酸を中心とした味わいの輪郭はしっかりとあり、「素敵な甘酸っぱさがクセになる、まるで白ワインのような味わい」のお酒でした。

 

このお酒は冷蔵庫でキリリと冷やしてワイングラスに注ぎ、お酒単体でゴクゴク呑むのもGOODなのですが、今回はこんな「夏向けの料理」を2品選んで合わせてみました。

1品目:じゅんさいの土佐酢掛け

夏スペックのお酒【かぶとむし】

まず1品目は【じゅんさいの土佐酢掛け】です。
「じゅんさい」は淡水の池で栽培されている水草で、ぬめりのある膜に包まれた「巻物状の新芽」と「花のつぼみ」の部分が食用とされ、「一番芽」が収穫される初夏から夏にかけてが旬となります。
冷蔵庫でしっかり冷やしてから「土佐酢」を掛けたものを、スプーンですくって口に運んでみると、「じゅんさい」のゼリー状の膜のツルッとした食感と、芽や茎の部分のプリプリした歯ざわりが同時に愉しめます。
そのタイミングで素早く「かぶとむし」を合わせてみると、このお酒の甘酸っぱい味わいと「土佐酢」のほんのり旨味を伴った酸,さらには冷たい「じゅんさい」の食感が一体となって、口の中が清涼感でいっぱいになります。
まさに夏場にピッタリの、喉越しの良い涼感満点の組合せでした。

2品目:水茄子の浅漬け

夏スペックのお酒【かぶとむし】

続いて2品目は【水茄子の浅漬け】です。
夏野菜の代表格の一つの「水茄子」は、一般の茄子に比べて皮が薄くて水分が多いのが特徴で、きれいにカットして浅漬けにした「切り漬け」も売られていますが、やはり丸のまま「糠床で一夜漬け」にしたものの方が、水茄子本来の美味しさが味わえるように思われます。
糠を洗い落として包丁を使わずに手で裂いて食べてみると、まるで果物のようなジューシーな食感で、水茄子の甘さと浅漬けの程よい塩加減が口の中で調和して、次から次へと食べ進んでしまいます。
水茄子が無くなってしまう前に「かぶとむし」と合わせてみると、このお酒の透明感のある甘味と爽やかな酸,そして水茄子の持つ野菜の自然な甘味と一夜漬けの塩味が、口の中で混ざり合って絶妙なハーモニーを奏でてくれます。
食卓に「夏らしさ」を演出してくれる、なかなか相性の良い組合せでした。

 

ちなみに、加水をしない「原酒タイプ」の日本酒は、通常はアルコールが「18%~19%」と度数が高めのものが多いのですが、この「かぶとむし」は「原酒」でありながら、醸造過程のコントロールによって、アルコール度数を「14%」とワイン並みの低さに抑えています。
したがってワインと同様に、食事と一緒に愉しめる「食中酒タイプのお酒」なので、今回提案した夏向けの料理との組合せを参考にしながら、是非皆さんも「かぶとむし」といろいろな料理とのマリアージュを愉しんでみて下さい。

 

【今回紹介したお酒のデータ】
●商品名 「仙禽(せんきん) かぶとむし」
●蔵元 せんきん(栃木県・さくら市・馬場)
●アルコール度数 14% 
●参考価格(税抜)1800ml 3000円

仙禽 かぶとむし

製造元 せんきん

※掲載情報は 2016/07/14 時点のものとなります。

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キュレーター情報

佐藤茂夫

酒匠・シニアソムリエ

佐藤茂夫

飲食業界に携わって今年でかれこれ30年目となりますが、その間にビヤホール,ブラッスリー,居酒屋,焼肉店,トラットリア,アイリッシュパブ,大型バーベキューレストラン,北海道料理店etc.の様々な業態のお店を渡り歩きました。
またその一方で、「ソムリエ」「利き酒師」「焼酎アドバイザー」「酒匠(さかしょう)」etc.のお酒に関わる様々な資格を取得し、2006年に開催された「第2回世界利き酒師コンクール」では、2度目のチャレンジで優勝を果たすことができました。
本業の合間には、これまで得た知識と経験をもとに、SSI (日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)が主催する、日本酒の利き酒師講習会で講師役なども務めております。
素晴らしい日本酒の魅力を、できるだけ多くの人に判り易く伝えてゆきたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。

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