ピスタチオナッツの風味豊かなアラブ・トルコの伝統菓子「バクラヴァ」

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中東スイーツの定番を日本で

先日、食取材のため地中海の島キプロスに行ったのですが、帰国途中に経由地カタールの首都ドーハに立ち寄って1泊し、スーク(市場)などを見学してきました。その際、宿泊したホテルでウェルカム・スイーツとして出された、ピスタチオたっぷりのバクラヴァなど中東菓子があまりにもおいしくて、「日本でもフレッシュな中東菓子が食べたいなぁ」と思って帰国後に探してみたら、ありました!

埼玉県狭山市でトルコのベーカリーやお菓子を販売するElit Bakeryさん。トルコ人の職人さんが自社工場でバクラヴァをはじめとするお菓子を手作りされています。大量生産の箱入りの輸入品や、日本の一部のトルコ料理レストランなどで作っている自家製はよくありますが、これほど多種類の中東菓子を製造販売しているショップは、日本では珍しいのではないでしょうか。

 

バクラヴァは、以前ご紹介した小麦粉の薄皮フィロシートにバターを塗って、ピスタチオやくるみなどのナッツをはさんで何重もの層にした状態で焼き、ローズウォーターなどで風味付けした甘いシロップ(はちみつが入ることも)をかけたお菓子。紀元前8世紀のアッシリアに起源を持つともいわれるほど古い歴史があります。具や形などにいろいろなバリエーションがありますが、ピスタチオの特産地として知られるトルコ南東部の美食都市ガジアンテップ(アンテップ)のバクラヴァが最高の味とされてきました。

 

バクラヴァはトルコやアラブ諸国のほか、ギリシャやバルカン半島などのヨーロッパの地中海沿岸から、中央アジア付近まで広範囲の地域で伝統菓子として普及しています。最近は、アラブ首長国連邦(UAE)でも製造が盛んなよう。ドバイやアブダビ、近隣国カタールのドーハなど、ペルシア湾岸の富裕層が多い都市では、空港のおみやげ売り場などでUAEブランドのバクラヴァをはじめとする「高級な中東菓子の詰め合わせセット」を実によく見かけます。値段はそれなりに高価ですが、品質はガジアンテップ産に劣らないほどよいものです。

 

なぜアラブの湾岸諸国でこんなにお菓子が好まれるかといえば、敬虔なイスラム教徒が多いため、アルコール代わりの嗜好品として多量に消費されることが理由にあげられそうです。余談ですが、日本の「ヨックモック」のお菓子がこの地でヒットしているのもそれゆえかと。特に定番の“シガール”は、見た目も中東菓子っぽくて、現地の人にもなじみやすかったのが人気の秘密ではないかと思っています。そして最近、彼らの要望に応えてついに、ピスタチオナッツ入りの新製品“バトー ドゥ ピスターシュ”をUAE先行で発売したとか……。

 

さて、バクラヴァは、「歯が痛くなるほど甘い」などと評する人もいますが(笑)、品質のいいバクラヴァは甘さがほどよく、さくっとしたナッツの歯触りや、華やかなローズウォーターの香りが何とも魅惑的。特に甘いもの好きな方はやみつきになるはずです。どろっとした中くらいの甘さのアラブ(トルコ)コーヒーがよく合いますので、コーヒーブレイクにぜひお試しください。

ピスタチオナッツの風味豊かなアラブ・トルコの伝統菓子「バクラヴァ」

ドーハのハマド国際空港内にある中東式コーヒーショップ(ガフワ)でも、バクラヴァは定番のお菓子。

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Elit Bakery & Sweets

※掲載情報は 2015/08/17 時点のものとなります。

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キュレーター情報

青木ゆり子

各国・郷土料理研究家

青木ゆり子

雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。

地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。

「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。

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