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美味しさの秘密は、その「食感」にあり!
夏に旅行にいき、あっちこっちと歩き回っていると、どこか涼しいところで腰を落ちつかせて休憩をしたくなることがあります。夕食までに数時間もあり、甘いものをちょっと口に入れたくなることもよくあります。そういう時は、当然ですが手当り次第にお店に入らずに、地元の老舗の和菓子屋さんに行くのに限ります。
昔の旅人は、疲れたら茶屋でお茶や団子を食べながら、一服し足を休ませます。どうせ休憩するなら、地元の名店で美味しいものを味わいながら一服する。そんなふうに考えると、休憩するまでの足取りも軽くなり、旅行も楽しくなります。
先日、友達と博多に行った時にまさにそんな状況になりました。博多でちょっと休憩に立寄りたかったお店が、創業九十余年の老舗和菓子店、鈴懸本店でした。鈴懸と言えば、小さなどらやきのようも見える、「鈴乃○餅(すずのえんもち)」が有名で、東京ですと新宿伊勢丹にも支店があります。博多の鈴懸本店に行くと、その場で和菓子も購入出来ますが、ゆっくりとお茶をいただきならお菓子をいただくことが出来るのです。
きれいな色使いの暖簾をくぐり店内に入ると、右へ進むと和菓子を持ち帰るお店、左に進むと和菓子をそこでいただくことが出来ます。迷わず左に進むと、近代的な建物からすると意外にも、心が落ち着くような空間が広がります。少しゆったりめの椅子は座り心地も良く、テーブルも大きくお菓子をいただくにも余裕があります。木材を使用した壁面を背にし、心が癒されます。周囲には僕らを除き旅人はいませんでしたが、旅人が一服するには最高の場所です。お菓子をいただく空間まで気配りするとは、さすが「鈴懸本店」だなと思いました。
外は暑く歩き疲れたこともあり、スルッと口に入ってくる甘いものが食べたくなりました。そこで目に入ったのが、夏限定のお菓子、「麩乃餅(ふのもち)」でした。煎茶や抹茶とお好みのお菓子を選べるセットメニューがありましたので、「麩乃餅」と抹茶のセットを選びました。「麩乃餅」は、つるんとした喉ごしの良い生麩の生地で、こしあんを包んだものです。外側には、笹の葉が巻いてありほんのり香りを感じます。
生麩の生地の口当たりが、至極の域に達しています。中の「こしあん」は、甘さも程よく上品な炊き加減です。あんが舌の上で溶けていくようにみずみずしいのです。つるっとした「生麩の生地」とみずみずしい「こしあん」からは、職人が「食感」をとても大切にしていることが伝ってきます。その食感からは、なぜ夏に「麩乃餅」なのかを感じとれます。見た目はシンプルですが、一口食べるとその美味しさと口当たりの良さの虜になってしまいます。
博多に旅行にいかれるのであれば、鈴懸本店でお菓子をいただきながら、旅の疲れを癒してはいかがでしょうか?
※掲載情報は 2015/07/28 時点のものとなります。
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キュレーター情報
荒岡眼鏡の三代目 眼鏡店ブリンク店主
荒岡俊行
1971年生まれ。東京・御徒町出身。1940年から続く「荒岡眼鏡」の三代目。
父方も母方も代々眼鏡屋という奇遇な環境に生まれ育ち、自身も眼鏡の道へ。
ニューヨークでの修業を経て、2001年に外苑前にアイウエアショップ「blinc(ブリンク)」、2008年には表参道に「blinc vase(ブリンク・ベース」をオープンさせる。
「眼鏡の未来を熱くする。」をミッションに掲げ、眼鏡をカルチャーの1つとして多くの方々に親しんでいただけるよう、眼鏡の面白さや楽しさを日々探求しています。
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