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「増毛」のテロワールが作り出す唯一の味
私がこのシードルに出会ったのはたしか5、6年前の暑い夜。友人宅でのホームパーティーで勧められたかわいいエチケットデザインのボトルには「増毛シードル」の表記。
北海道人には「増毛(ましけ)」は日本海側の留萌地方の海の幸が美味しいところというイメージなのだが、まず本州の人からみたらどのあたりかもなかなか理解出来ないし、まずもって「ましけ」と読めないであろう。しかしながら増毛は暑寒別岳の裾野の扇状地に約120ヘクタールの広大な日本最北の果樹産地として有名な場所なのである。なのでシードル作りが行われていても納得なのである。
グラスに注ぐと、きめ細やかな気泡をまとった淡い黄金色の液体から爽やかなリンゴの香りが。適度な酸味が口いっぱいに広がり、とにかくスッキリとした辛口の上質な味わい。これは暑い夏にはもってこい。シードルというとカジュアルなイメージだが、シャンパンのようにコース料理のスタートの一杯にもできそう。とにかく感動的な出会いだった。
暑寒別岳から流れ出る清らかな水をたっぷり吸い、日本海からのミネラルたっぷりの潮風を受けて育った増毛のりんごは、一日の寒暖差によって最上級の糖度を蓄えて収穫される。それを、皮ごと磨り潰しゆっくりと時間をかけて天然発酵させ、自然的なきれいな炭酸をつくっていく。
香料、着色料、甘味料などは一切していない。スターキング、ふじ、ハックナイン、ゴールデンメロンなど収穫年の最高のりんごをブレンドしてつくられるため、「一期一会」のシードルとも言われている。丁寧なシードル作りにこだわるため、生産量が本当に少ないのも価値を高めているようだ。
日本においてはワインに比べてまだまだ認知度の少ないシードル。さまざまな食事のシーンでもっと飲んでもらえる可能性はきっとあるに違いない。暑い夏には、北海道増毛の冷涼な風をイメージしながらこの一杯を楽しんでいただきたい。
※掲載情報は 2015/07/09 時点のものとなります。
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キュレーター情報
クリエイティブオフィスキュー社長
鈴井亜由美
株式会社クリエイティブオフィスキュー代表取締役
株式会社Link&Loop代表取締役
北海道小樽市出身。1992年に芸能プロダクション「クリエイティブオフィス キュー」を設立。同事務所には、大泉洋らTEAM NACSが所属、個性派俳優を抱え 全国へ活躍の場を広げ、プロデューサーとして鈴井貴之監督作品「man-hole」 「river」やTEAM NACS全国公演「LOOSER~失い続けてしまうアルバム」以降の作 品等で采配を振るう。2012年、事務所創立20周年を機に「CUEのキセキ」を出版 (発行:メディアファクトリー)。食、観光、地域産品等北海道の様々な魅力を全 国に伝えたいという思いから映画『しあわせのパン』(2012年)、『ぶどうのなみだ』(2014年)を企画。
2012年に株式会社Link&Loopを設立、同年11月にオープンした「boulangerie coron」は現在札幌市内で2店舗展開。2015年9月17日にはレストラン「brasserie coron with LE CREUSET」(http://brasserie-coron.com/)がオープンとなった。