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パリパリの薄皮に、しっぽの先まで餡がぎっしり
東京にあるたいやきの名店といえば、麻布十番の「浪花家総本店」、人形町の「柳屋」、四ツ谷の「わかば」がよく知られており、この3店が「たいやき御三家」といわれています。どの店のたいやきもそれぞれに魅力ですが、近くを訪れた際には必ずといっていいほど立ち寄ってしまう私のお気に入りが、「わかば」です。「わかば」のたいやきは、皮がごく薄く、パリッとした食感で、しっぽの先まで餡がぎっしり詰まっているのが特徴です。とにかく餡だらけ、という印象なのですが、ほどよい甘さのため、ペロリと1個食べられます。また、頭でもしっぽでも、どこを食べても餡が出てくるのが嬉しいですね。
たいやきは、かつては駄菓子屋などで売られていた子どものおやつでした。「わかば」も、1953年(昭和28年)の創業時は駄菓子屋だったのですが、いつしかたいやきが有名になり、今では夏場は1,000個、冬場は3,000個も売れるほどの人気商品になりました。焼きたてを温かいうちに食べるのが一番ですが、ご自宅まで持ち帰るうちに冷めてしまったら、電子レンジで少し温めてから、オーブントースターで焼くと、おいしく召し上がれます。食べきれずに残ったたいやきは、やわらかいうちに1個ずつラップで包み、冷凍庫で保存するとよいでしょう。夏場は、冷凍したたいやきを半解凍状態で食べると、小倉アイスのような味わいが楽しめます。
ところで、たいやきに「天然物」、「養殖物」という区別があることをご存じでしょうか。たいやきを焼く型には、1つしか焼けないものと、複数まとめて焼けるものがあり、1つだけのものを「天然」、複数は「養殖」というのだそうです。海で泳ぐ魚ではないのに、面白いことをいうものだ、と思いました。ちなみに、「わかば」のたいやきは、正真正銘の「天然物」です。しっぽの部分に「わかば」と印された焼き型を使い、店先で1つ1つていねいに手焼きしています。
※掲載情報は 2015/03/26 時点のものとなります。
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キュレーター情報
食生活ジャーナリスト
岸朝子
大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。