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ある日、家に帰るとオルネッライアの醸造家アクセル・ハインツ氏とオルガ・フサーリ氏からプレゼントが!
箱を開けてみると、2020年新ヴィンテージの「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア」とCONVERSATIONS BY THE SEAという地中海ブルーの料理本とレシピでした。
9人のスターシェフが考案した夢のマリアージュ
「ポッジョ・アッレ・ガッツエ・デル・オルネッライア」は「オルネッライアのカササギの丘」の意味で、ボトルに描かれてるブルーの鳥はカササギです。
ブドウ品種はソーヴィニヨン・ブランを主体に、イタリアでよく使われるヴェルメンティーノや、華やかでコクのあるヴィオニエをブレンドしています。
熟した白桃のような果実と清々しいハーブの香り、中盤からホワイトマッシュルームや麦藁、綺麗な酸が味わいを引き締める、地中海の海を思わせるようなエレガントで陽気なワインです。
この個性的なワインに合わせるレシピ考案のために選ばれたのが9人のスターシェフで、本には極上のレシピが掲載されていました。
この中で特に心惹かれたのが、イタリアのカプリ島滞在の際には必ず訪れる「Il Riccio」のものです。
パラソル、メニュー、キャンドルホルダー、お皿など、何から何まで地中海ブルーで統一されたイル・リッキオのすべてが気に入っています。
シェフ考案のレシピは「帆立のミルフィーユ、スモークリコッタ、アボカド、ヘーゼルナッツ、キャビア添え」でしたが、イル・リッキオで頂いた雲丹のパスタが忘れられなかったので、日本のシェフに相談してオリジナルメニューを考案していただくことにしました。
絶妙な火加減で和の素材を生かす 鉄板焼きシェフ
お願いしたのは、ソムリエが焼く鉄板焼きとして有名な東京・尾山台「未ら音」(みらね)の宇都卓弥シェフ、樋口貴道シェフ、松原靖典シェフ。
都内有数の鉄板焼店でお客様の信頼を勝ち得た後に独立した、素晴らしいシェフたちです。
まずは、ソーヴィニヨン・ブランに合わせる王道のお野菜。青茄子、蓮根、アスパラガス、カボチャ、ズッキーニに米粉を纏わせて焼き、カリッとした触感を楽しみます。
メインテーマの「雲丹」は「鉄板で軽く焼いた雲丹寿司」として登場しました。見た目は普通の雲丹のお鮨なのですが、焦がし醤油で風味付けしています。鉄板で焼いた下部だけが熱く上は冷たいので、温度のコントラストも味覚を楽しませます。
磯っぽさと塩味がワインと絶妙にマッチ。地中海のそよ風に揺られながら頂くことができたら、どんなに幸せなことでしょう。
続いては「無花果とブッラータチーズの鉄板焼き」。鉄板で火を入れることで、「熱々とろり」と「ひんやりキリリ」という2つの味わいがいい感じで交差します。短時間高温で焼き上げられる鉄板焼きならではの醍醐味です。
「イトヨリのソテー お出汁と万願寺唐辛子を添えて」は、唐辛子の青さと茗荷の辛み、松茸と蛤のお出汁の旨味が、ワインと素晴らしいハーモニーを奏でていました。
牛タンには九条葱と生胡椒で、香りとアクセントを添えて。
お好み焼きは、いつものソース味ではなく自家製マヨネーズとバジルソースに変えただけで、白ワインにも完璧な相性をみせました。
最後に登場したのは自家製担々麺。これは前回「担々麺は好きなんだけれど、量が多くてなかなか食べられないまま夏が終わってしまうのよね。」と呟いた私の言葉を樋口シェフが覚えていてくださって、松原シェフが今日のためにわざわざ作って下さったものです。
「合うかな」と皆心配そうでしたが、海産物由来の出汁、まろやかなすりゴマ、添えられた青菜がアクセントになって、想定外の美味しいマリアージュが出来上がりました。
イタリアの沿岸部を旅するように味わいたい白ワイン
醸造家さんからのお手紙に「イタリアの沿岸部を旅するように、この白を飲みながら一皿一皿を味わっていただけましたら幸いです。」と記載がありました。まさにその言葉通り、日本の食材と料理法でも絶妙な相性を見せてくれた「ポッジョ・アッレ・ガッツエ・デル・オルネッライア」。
次回の夏はトスカーナの海辺で、イタリア料理とこのワインを楽しみたいと夢見ています。
[料理]
鉄板焼き「未ら音」
東京都世田谷区尾山台3-10-9NEXUS尾山台1F
03-6432-3526
※掲載情報は 2022/09/13 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ソムリエ・ワイン研究家
林麻由美
企業、オンラインショップ、イベントにマッチしたワインセレクトやセミナーを行うソムリエ・ワイン研究家。
国内大手航空会社に乗務員として入社。国際線ファーストクラスを15年担当、世界55カ国以上を回り、世界各国のワインや様々な職業や人々に触れるうちに、ワインが繋ぐ人の縁の素晴らしさに感動する。
1995年に当時はまだ耳慣れない言葉だったソムリエの資格を取得、2001年にシニア・ソムリエも取得。その他、クージヌリー・ド・ブルゴーニュ、英国WSETLevel3、日本酒利酒師、温泉ソムリエ、フードアナリスト記者の資格を持つ。
現在は、ボルドーワイン騎士団理事、サクラアワード常任審査員、イベント・バンキング・フードイベント・プロデューサーとして、ワインと食の啓蒙活動に努めている。
JAL、アメックス、ダイナース、VISAの機関誌、ワイン専門誌では、テイスターや筆者として、ブルガリやディオールなどのファッションブランド企業、電通などの大手企業では、オーダーセミナーを行う。また、ジェラールチーズなどのオンライン販売では、チーズを使った料理とワインのマリアージュを提案している。