コロッケパン
チョウシ屋:東京都中央区銀座3-11-6
いまから30年以上前、私は歌舞伎座裏の出版社で、カメラアシスタントのアルバイトをしていました。午前中から夜中、時には明け方まで、ずっとスタジオに籠りきりの撮影が連日続きました。時はバブル直前。出版社も太っ腹な時代でしたので、撮影明けには近くのホテルの24時間営業ダイニングや、お寿司屋さんで打ち上げをしたものでしたが、それまではほとんど何も口に入れずに働くこともありました。そんな時、スタジオ入り直前に小腹を満たす為の定番が、この「チョウシ屋」さんのコロッケパンでした。
あくまで私の記憶ですが、出版社の裏口を出て5秒、昔ながらのお肉屋さん風情の店先には、マジックで簡単なメニューが書かれ、何人かが順番まち。名物コロッケパンしか眼中にない私は、仲間の分も入れて4つほどオーダー。当時は食パンの厚切りと薄切り、耳アリと耳ナシが選べましたので、自分好みの「薄切り耳アリ」をチョイス。するとおじさんが、ほんのり温かいコロッケを一つ一つ、その場で食パンにはさんでくれたものでした。カワイイ包み紙にくるんで、輪ゴムでパチン!一丁上がり!てな感じです。
コロッケパンにはさむものは、潔くコロッケのみ。それでもカラシの利き具合が絶妙で、何とも言えない美味しさなのです。すぐに食べるもよし、少し時間がたって、くったりとパンとコロッケが一体化するのもまたよし、です。
何ともレトロかつ、シンプルなコロッケパン、場所柄、梨園の方々にも定番なこのお味、私にとっても、能書きのいらない永遠の超A級グルメなのです。
チョウシ屋:東京都中央区銀座3-11-6
※掲載情報は 2015/03/02 時点のものとなります。
料理写真家
今清水隆宏
1965年、東京都生まれ。東京造形大学卒業。1988年よりフリーランスフォトグラファーとして独立。
以後、国内・海外、料理研究家・シェフを問わず主に雑誌、料理レシピ、レストランなどの料理およびその周辺の撮影、書籍企画等を担当。他、百貨店等各種カルチャースクール、地方自治体等にて「料理写真講座」の講師、講演等でも活動。社団法人日本広告写真家協会会員。