生姜のピリピリと昆布のうま味が一体となった「神宗の生姜」

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生姜で身体もホカホカする昆布の佃煮

口に含んで唾液を混ぜて、モゴモゴすると、塩気や甘みが押し寄せて来てうま味が口いっぱいに広がる。そのうま味と一緒に白飯を口中で咀嚼して飲み込む。その正体とは塩昆布のことである。10年ほど前に大阪の昆布専門店の仕事のお手伝いしたことがあった。昔は塩昆布などの昆布の加工品は、お中元やお歳暮の定番で売れていたのだが、だんだん消費者ライフスタイルの洋風化で塩昆布離れが進み販売が低下したので新しい商品の開発ができないかという依頼だった。その時に日本の昆布の諸問題を色々と伺って勉強になった。


塩昆布の生産現場の見学もさせていただいたが、高級な塩昆布は四角に切られてものをライトテーブルの上で人が選別している様子だった。下からのライトで透ける昆布は排除して、透けない昆布を選別するという作業を観ているだけで、塩昆布が大変手間な仕事だと理解できた。大きな釜でじっくり何度も火を入れながら焚く作業も職人の長年の技だと関心した。わが家ではだしの基本は昆布なのだが、だしを取った後の昆布を冷凍しておき、ある程度溜まると自家製の昆布の佃煮を作っている。しかし、商品化された昆布と違いだしを取ったあとなのでうま味はさほどのこらない。日本料理のプロから昆布の焚き方を教わり、柔らかくするために酢を使い、色を濃くするために鉄の鍋を使い、味を入れるために、加熱して火を止め味含ませて、また、火入れして火を止めると1日で6回ほど繰り返して作ったがやはり、(当然だが)職人の技には及ばない。自家製の昆布の佃煮を作るくらい塩昆布を偏愛しているのであるが,塩昆布の歴史も結構長いのである。平安時代には、昆布を醤(ひしお)という、麦や麹、米などを熟成させて塩を混ぜてまぜて作った味噌や醤油の原型の調味料で煮込んで作られていた。

生姜のピリピリと昆布のうま味が一体となった「神宗の生姜」

鎌倉時代に蝦夷地から本海側を回る航路が開発され、日本海側、大坂(この時代は大阪ではない)昆布が庶民の口に入るようになってきた。江戸時代に蝦夷地から西回り航路や東回り航路が発達し、江戸や大阪にさらに多くの昆布が入ってくるようになり、昆布の佃煮が作盛んに作られるようになった。明治時代になり塩昆布の名が広まって日本の食卓に欠かせないものとなったが、前出のように昆布離れが進んでしまったのである。そんな中各昆布の加工メーカーはしのぎを削り新しい取り組みをして来た。(何か業界的な書き方だなぁ)

 

生姜のピリピリと昆布のうま味が一体となった「神宗の生姜」

今回ご紹介する逸品は天明元年(1781年)海産物問屋として創業してきた大阪の「神宗(かんそう)」である。天明元年というと、十代将軍徳川家治の治世、執権は田沼意次で、商品経済が活発な時代であった。神宗は塩昆布をはじめ沢山の商品があるが、生姜をメインにした「神宗の生姜・昆布入り」である。袋を開けると生姜も昆布も真っ黒で中々どれが生姜で昆布か区別が難しいが、口に含むと昆布のうま味と生姜の辛さが一体化になって広がる。生姜は元々身体の代謝機能を高める食材で、じっくり煮込むことにより、生姜の中から「ショウガオール」が抽出される。このショウガオールが生姜の辛さの本体成分で、体内を活性させる。おいしく食べながら身体の毒素も排出し免疫力も高まるという側面もあるが、塩昆布、佃煮好きとしては食卓に欠かせない逸品であることは言うまでもない。

生姜のピリピリと昆布のうま味が一体となった「神宗の生姜」

※掲載情報は 2019/04/21 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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