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カネジョウ
いわし削り(いわし削り節)【60g × 5袋】
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静岡市にあるカネジョウの4代目望月英幸さんは、10年前まで大学で「地域おこし」をテーマに講師をされていました。
講師から家業を継ぐきっかけになったキーワード、それは「おいしい」。
英幸さんが久しぶりに帰省した際、いつものようにごはんに削り節をかけて食べたときのことです。
「これはおいしい!」と改めて驚いたのだそう。あまりに美味しかったので、大学に戻り学生たちにふるまうと、「めちゃ、おいしい!」「こんな削り節は初めて!」と大好評。自宅通学の学生達はみな、ごはんに削り節をぶっかけるだけという簡単な食べ方も知らなかったのです。さらに、いわし節の存在すら知らない人が多いという事実を知った英幸さん。ここにはブルー・オーシャン(未開拓の市場)がある!と感じました。
その頃3代目であるお父様は、原価の高騰や質の低下に悩み、削り節をやめると言い始めていました。しかし英幸さんは、「えーっ!俺はなんだかいけそうな気がする!」と、家業である削り節と桜海老の専門店を継ぐことを決めました。
継いだ当時の事業は、地元の小さな魚屋に下ろす程度。英幸さんは、直販から通販へと販路を開拓していきました。英幸さんの大学講師時代の研究テーマは、「地域と関わりながら課題発見、その課題の解決能力を身につける授業プログラムをつくる」だったのでした。まさにぴったり!
かつお節についてはそれなりに製造法や、出汁の取り方は知られています。しかし「いわし削り節」となると、知識を持っている人はほとんどいません。そのこともまた、英幸さんの闘争心に火をつけた一因かもしれません。
いわし節とかつお節をそれぞれごはんにかけて、展示会で男女1,000人のアンケートを取りました。女性は圧倒的にいわし削りを支持。同時にいわし削りの存在を誰も知らないこともわかりました。ここで、英幸さん「ブルーオーシャン」を再度確信したのです。
「いわし節」とは、いわし類を煮て、燻製にしたものです。スーパーで見かける「煮干し」は、いわし類をただ煮て、天日干しにしたものです。つまり燻製ありなしの違いです。
いわしの産地と削り節の産地は違うというのも、かつお節とは全く違う歴史と発展の仕方があるからです。
カネジョウがあるのは、静岡市清水区蒲原地区。ここは、削り節の産地として発展してきました。とくに蒲の削り節は、薄くてキレイということでは日本一といわれています。有名ないわし節の産地は、長崎、熊本、香川、愛媛県です。しかし産地にはいわし節出汁の文化はなく、いわし節出汁は富士川の塩の道に沿って山梨へ、山間部と縱方向に広がっていきました。かつていわしが畑の肥料として使われていた地域に、出汁の文化が継承されていったのでしょう。
いわし削り節でかつお出汁のように、出汁を取ることも可能ですが、英幸さんは、驚くことに「ファストフードのように食べてほしい」と言います。
いわし節は、かつお節と比べると半端ないカルシウムの多さで、その他のミネラル成分も際立ってすぐれています。
そのため出汁としてとるより、そのままかけて食べたほうがいわしの栄養をまるごととることができるのです。
卵かけご飯にかけたら、抜群においしい。味噌に混ぜて「いわし削り味噌」にすると、ご飯が進むこと受け合い。白菜の漬物にかけるのは、もう我が家の定番。かつお節とは全く違うんです。白菜の漬物は、いわし削りに限る。
刻みニンニクといわし削りをドバッといれてチャーハン。バターと醤油で仕上げると至福の味に。なるほど、かけるだけで旨味が広がり、余分な具材は全く不要。いわし節の前では、肉もハムも影薄し。
そして、「いわし削り」は純然たる和の食材なのに、無国籍な食材ということもアピールしておきたいのです。
例えば、ほうれん草のおひたしに醤油といわし削りをかけたら、「和」の和えもの。それが、オリーブオイルと塩、胡椒にいわし削りで和えると完全にイタリアンのアンティパストになるのです。
ニンニクといわし削り、輪切り唐辛子に茹でたての細めのスパゲティーを和えたら、シチリア風ペペロンチーノ。
さらに、このいわし削りは、ひと味たりないときの天然のうまみ調味料の役割も果たしてくれます。それだけ旨味が強烈ということですね。
それでいて、かつお節ほど和食感を感じさせないのが大きな魅力だと思います。英幸さんのレシピで、私がもっとも魅かれたのは「ビニール袋おむすび」。
ビニール袋に熱いごはんをいれて、いわし削りと醤油をたらしたら、ビニール袋をふくらませシェイクすること1分。手もよごさずにいわし削りおむすびの完成。お好みで、味噌、焼き海苔や昆布、梅干しをいれるのも美味しいです。これぞ、究極のいわし削りファストフードです。
こうして、いわし削りを様々な料理に使ってみると、かつお節よりなんだか庶民の味というか……。ワイルドにジャカジャカ使えるところが、魅力的です。
これから是非試してみたいのは、「オーダメイドいわし花削り」なるもの。注文後に0.01mmのカンナで超薄く削ってくださるそう。
カネジョウでは、代々削ることを「けする」というのだそうです。なんでなんだろう?「けする」って?
英幸さんも専門用語なので、理由はわからないのだそうですが、いわし削りは、刃をほとんど出さないで削ります。削るというより、表面をこするというのが近いように思えます。そのあたりのニュアンスから、「けする」というようになったのでしょう。」
全国各地には、気候風土に合った庶民の愛する食材があります。
料理をしない人、加工食品を買う人が増える一方で、郷土料理や伝統食はフェイドアウトしかけています。料理が消えるとき、使う道具も食文化も一緒に消えてしまいます。
いわし削りに「ブルーオーシャン」を感じた英幸さんのような、生産者を繋ぐせがれや娘を私はこれからも力いっぱい応援していきたいと思っています。
いわし削り(60g)¥432(税込)
※掲載情報は 2019/02/24 時点のものとなります。
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事