源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

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今回は、神戸の菓子をご紹介します。
150年前、国際港となった神戸は様々な文化の香りを纏った魅力的なたくさんのものを生み出してきました。
例えば、菓子なら本格洋菓子がアレコレ浮かんできます。しかし、今回のお薦めは『神戸風月堂』の和菓子です。

 

『神戸風月堂』は、昨年創業120年を迎え、明治・大正・昭和の神戸と共に歩んできた老舗です。数ある商品の中でゴーフルが特に有名ですね。私も幼いころから、丸い缶に入ったゴーフルは馴染み深いですが、実は和菓子は隠れた名菓だと思います。良質な材料だけで生み出される美しい味は、きっとおもたせとしても喜んでいただけますよ。

 

特に「源氏の由可里」は、そのテーマの独自性と芸術性がとてもステキなのです。意匠にも味にも神戸らしさがどこかにほのかに漂う素晴らしい和菓子です。
この菓子の誕生は、昭和42年(1967年)のこと。
当時の副社長である吉川冬季子氏が、作家村山リウ氏による「源氏物語を聞く会」に提供する和菓子の注文を受けたことに始まります。毎月開催される会では、54帖の物語を1帖ずつ学んでいきます。社長は、毎月語られる内容に沿った意匠の創作菓子を納品することを決定し、会が続く20年の間、それぞれの帖の菓子を創り、納め続けたのです。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味
源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

             吉川冬季子氏直筆の源氏の菓子の意匠図と生菓子
                        (“Prince Genji”より)

 

 

日本を代表する文学である源氏物語の品格にふさわしく、五感に響く和菓子を創るため、自らも会の参加者の一人となり、深く学んだのです。
私はこのエピソードを母から聞いています。実は母もこの会で20年間源氏物語を学び続け、毎回その美しい菓子を私のお土産に持って帰ってくれていたのです。
まだ子供だった私は、箱を開けると現れるその美しい色や形に目を奪われました。母は毎回菓子の意味を教えてくれました。その意味の半分も理解できてはいなかった私ですが、「きれいでしょう。毎回菓子を用意するために、予め物語を学び理解して創っているのよ。毎回このお菓子が楽しみなの。」と嬉しそうに話していた母のことを思い出すたびに、おいしさとは、楽しさ、嬉しさ、優しさの記憶と共に刷り込まれるしあわせの種だと実感します。
当時この菓子は、新商品開発で製造されたのではなく、会の参加者だけのもので、源氏物語に魅せられて誕生した“作品”なのです。美しい味の秘密の一つは、ここにありそうです。
現在は店頭でも購入でき、その味にいつでも巡り合うことができます。私は今では、目に映る美しさに加え、上質の材料が織りなす味の美しさも感受できるのは幸運だと思います。幸せの種が花開き、心も和む瞬間です。
「源氏の由可里」は、私スタイルで楽しんでいます。ここには、4月の菓子の写真を紹介します。ご参考になることがあれば幸いです。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

「紫上」:とき色の練り切りに桜花の地紋を付け袖型に。端を薄水色に染め若楓と桜の花びらをあしらって、少女から大人となり源氏最愛の紫上となる姫を表した菓子。  長尾典子オリジナル小重に入れ、春の演出の食卓で味わう

 

 

『神戸風月堂』の「源氏の由可里」は、月替わりで4種類の菓子を販売しています。毎月違ったその意匠が楽しみです。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

「藤裏葉」:小豆羹の上にうっすらうつる満開の花をあしらい、二、三散り桜を添え、夕霧をゆする内大大臣のおもいを表した菓子。  春・花の盛りの頃に味わいたい菓子ですね。

 

 

各菓子には、その名前と物語から生まれた菓子の説明が記された小さな栞が添えてあります。これもおいしさを運ぶ嬉しい心遣いです。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

「御ねこ」:蹴鞠の時、猫のたわむれで簾が巻き上げられ、女三宮の艶姿をみた柏木は憧れの気持ちを深め、彼女の愛する猫を撫でる様子を表した菓子。 四方紅にのせるとなんだかめでたく感じます。黒文字は手作りの和紙袋に入れて…

 

 

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

「きよげなる男」:意識混迷の間をさまよう浮舟に現れた匂宮を表した菓子。
梅花が浮き上がった意匠です。

 

 

菓子を愛で、物語に思いを馳せながら味わう至福のひと時。たまにはゆっくりと流れる時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
癒される上品で優しいその味は、甘党でない方にもきっと召し上がって頂きやすい味です。煎茶、抹茶との相性はもちろん、香り高いコーヒーにも合う『神戸風月堂』の和菓子「源氏の由可里」。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

足付膳に「藤裏葉」をガラス皿にのせ、コーヒーと共に楽しみます。 
今日は和菓子に銀箔を振って、お洒落してみました。

 

 

ひとつひとつの物語を菓子の写真と共につむいだ日本語版と英語版の本も作られています。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

「源氏の由可里」は、神戸元町本店のみでのお取り扱いです。
神戸に来られた時はぜひ一度、神戸で生まれた源氏物語の和菓子を味わってみて下さい。賞味期限は3日間です。

源氏物語から生まれた“美しい和菓子”は ハイカラ神戸の味

卯月・4月の四種の菓子たち一つずつケース入りなので、持ち運びに便利。             
衛生的で時間がた経ってもしっとりを保てます。

 

 

※掲載情報は 2018/04/28 時点のものとなります。

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キュレーター情報

長尾典子

ライフスタイルデザイナー

長尾典子

日本伝統の知恵と美を取り入れた現代の食と暮らし方”Nippon Stylish Life”を提唱。

西宮市内のサロンと各地で、テーブルコーディネート・料理・英語・食文化をテーマに幅広く活動中。

季節開催「Japan Cool Seminar in Tokyo」では伝統美味食をテーマに、レストラン・料亭を会場に、その日だけのオリジナル料理を味わい学ぶ講座。

旅館・ホテルの食空間提案、英語による和食文化、テーブルコーディネートセミナー、オリジナル食器デザイン販売も手掛ける。

著書『12か月のLifestyle Book 食卓からしあわせは始まる』エピック
  『和食の力に魅せられて 伝統美味食の世界』エピック

食卓文化研究家、食空間コーディネート資格認定講師、卓育インストラクター、カラーコーディネーター、英語講師。

食空間コーディネート協会理事 
京都文教短期大学、大阪夕陽丘短期大学非常勤講師。
奈良女子大大学院生活環境修士。現在、現在、龍谷大学博士後期課程。
mail:nagao@a-de-v.com

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