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とある風の強い日、イタリア菓子を食べたくて、2016年にオープンした、目黒区東山のイタリア菓子専門店『ラトリエ モトゾー』に。オーナーシェフは藤田統三さん。シェフに今日のお勧めを伺いました。
すると「ぜひ紹介したいお菓子があるんですよ。このミルフォイユ(ミッレ・フォーリエ)!時間が経ってもおいしく食べられるように、ちょっとオリジナルの生地を考えてみたんですよ。」と。そういえば、たたずまいも普通のミルフォイユとちょっと異なります。
従来のミルフォイユは、時間が経つと、生地が湿ってしまい、食べると口の中に残りやすくなります。これを解消すべく、シェフはイタリアの、とあるお菓子の一部の生地を使って、少し発酵させた生地に仕上げたという。発酵させることにより生地に小さな空洞ができ、サクサク感が持続し、クリームと一緒に剥がれたりしないように仕立てられていると言うのです。
その生地というのは、なんとパネトーネに使用する種生地です。すでに乳酸発酵しているそれは、心地よいヨーグルト香を放ち、フィユタージュ生地にまろやかな風味がもたらし、リコッタチーズを加えたクリームにもよく合います。
実際食べてみると、噛み応えはしっかりしていながら、舌の上でもろくくずれ、空洞に隠れていた空気が生地の風味に広がりを感じさせます。また、2日目でも十分おいしくいただけるのもうれしいです。
※掲載情報は 2018/04/18 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フランス菓子・料理研究家
大森由紀子
学習院大学文学部仏文科卒。パリ国立銀行東京支店勤務後、パリのル・コルドン・ブルーで、料理とお菓子を学ぶ。パリ滞在中、ツール・ダルジャン、アンブロワジー、アルページ、フォション、ホテル・ニッコーなどで修業し、ピエール・エルメやジャン・ポール・エヴァンとともに仕事をする。フランスの伝統菓子、地方菓子など、ストーリーのあるお菓子やフランス人が日常で楽しむお惣菜を、メディアを通して紹介している。目黒区祐天寺にてフランス菓子と惣菜教室を主宰。フランスの伝統&地方菓子を伝える「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」の理事。「貝印スイーツ甲子園」のコーディネーター、「世界50ベストレストン」の審査員、ル・コルドン・ブルー卒業生代表を務める。毎年、フランスの地方の食を訪ねるツアー、サロン・ド・ショコラツアーを開催。主な著書:「フランス地方のおそうざい」「私のフランス地方菓子」「パリ・スイーツ」「フランス菓子図鑑」など30冊以上。