威風堂々な保存食「潮鰹(しおかつお)」

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潮鰹との出会いと衝撃

ある日、グルメ系、うんちく好きの友人から、潮鰹(しおかつお)たるものを頂きました。
発酵食や伝統食についてはそこそこ知識を持っているつもりだった私も、潮鰹は全く知らず、その衝撃は半端ではありませんでした。その御姿、それはそれは威風堂々。
別名「正月魚」ともいわれ、縁起の良い食として正月には神棚にお供えした保存食です。
同じ鰹を使った保存食“かつお節”の歴史は650年前からといわれていますが、潮鰹は、
なんと、平城京跡から見つかった文献に既に記載されているほど。1300年の歴史が物語っています。頂いた潮鰹は、『カネサ鰹節商店』のもので、英語で、「Bonito Preserved in Salt」(塩で保存された鰹)と表示されています。

威風堂々な保存食「潮鰹(しおかつお)」

潮鰹の作り方

製造は11月から1月の上旬までと限定され、内臓を取り除いた鰹をまるごと塩に2週間漬け込みます。それをつるして、冷たい潮風にさらすこと3週間。塩のみで保存する、シンプルかつ伝統的であり、尚且つ添加物なしの逸品なのです。表記に「塩」ではなく「潮」を使うのも、作り手の海への敬意を感じます。
「塩」は聖なるものとして、神事には欠かせないもの。漁師の町では、1年の航海の安全と大漁を祈願して、正月の三が日は、潮鰹を神棚に供え手を合わせます。船主は、お下がりをいただき、初めての漁に出る日に乗組員に振る舞うという、神事にかかせないものなのです。潮鰹の放つオーラが半端ないのは、食品を超える何かがそこにあるからだと感じました。

威風堂々な保存食「潮鰹(しおかつお)」

さてそのお味ですが……。まずは三枚におろし、薄くそぎ切りにして食べてみると、鰹というより、アンチョビや生ハムに近い旨味が口に広がってきました。見た目よりしょっぱくもなく、少しあぶって食べると、日本酒にぴったりの肴に。酢の物にまぜると、〆鯖のような味わいに。お椀に潮鰹をいれて、醤油を少々いれお湯を注ぐと、さすが鰹節の親戚、インスタント吸い物に。
かつお節の代打としても、十分に実力を発揮します。すり鉢であたり粉にし、茹でたスパゲティーにオリーブオイルと一緒に絡めると、からすみのよう。
私は、初めての潮鰹にすっかり魅せられてしまったのでした。

威風堂々な保存食「潮鰹(しおかつお)」

味の箱船

スローフード協会が行っている「味の箱船プロジェクト」というものがあります。各地方の伝統的かつ固有な在来品種や加工食品、伝統漁法による魚介類などのなかから、このままでは消えてしまうかもしれない、小さな生産者による希少な食材、その製法を守り次の世代へ繋いでいく活動です。
伝統芸や国宝などは、国や政府レベルで保護され守られていっているものも、少なくありません。人間国宝や勲章制度もあり、その名誉は食に関わる人に比べると、広く讃えられているように思われます。
一方、潮鰹のような食の匠がつくりだすもの、伝統食品について、なぜ国は食の多様性として保護しないのか……と、こういう絶滅危惧食品や生産者と出会うたびに、残念な思いにかられてしまいます。
潮鰹、日本人の食文化に残ってほしいと願うばかりです。
ということで、潮鰹を食べましょうね、買いましょうね。
1尾5,000円(わらの飾り付き)

※掲載情報は 2018/03/16 時点のものとなります。

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キュレーター情報

タカコナカムラ

料理家/フードディレクター

タカコナカムラ

山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。

通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。

一般社団法人ホールフード協会 代表理事

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