宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

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地元の想い詰まったカレー豚みそは口にしたら止まらない旨あじ

わたしは味噌や漬物がどうにも好きで、道の駅や高速道路のサービスエリアのお土産コーナーになどに目がない。その土地の名産品を使った味噌や漬物など見つけるとついついレジに持って行ってしまう。そんなわたしが肉味噌のうまいものに出会ってしまい、箸が止まらなくなって困っている。

 

薩摩料理というジャンルがある。現在の鹿児島県あたりの地域に、旧薩摩国という地があった。九州の南端は本州との気候植生の大きな違いがあり、また沖縄、奄美から程近くその地方からの文化的影響も大きい地域でもあった。農畜産物は黒砂糖、黒豚、ヘチマ、苦瓜などが特徴的。寒さが穏やかな土地のため、逆に日本酒や米酢は作りづらく、芋焼酎と黒酢の醸造が盛んになった。きわめて温暖な気候は台風の通り道という側面もあり、稲作には不向きであった為さつまいもと雑穀が多く食された。そんな背景から薩摩料理という独特の食文化が育まれたのだ。その中で奄美諸島から沖縄周辺で収穫される黒砂糖と甘口の麦味噌があり、料理に甘いものが多くなったという説もある。その中で生まれたのが「肉味噌」だ。

 

沖縄ではアンダンスーと呼ばれる味噌を豚のラードで炒めたものがある。調理用というよりはご飯にのせたりおにぎりに入れたりという使い方が多いもの。焼酎や砂糖、脂肪などを使用することもあって保存性が高く常備菜として価値があった。そんな地域の食文化をバックボーンとして肉味噌は南九州地域で郷土食として確固たる地位を保っている。

 

さて、本題だ。先日手に入れたこれ。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

「まるみ豚 カレー豚みそ」

 

南九州の伝統郷土食である肉味噌だが、これをより広くの人に届けようと肉味噌の新しい風味を生み出すプロジェクトがスタート、製品が完成した。宮崎の食文化を担う3社がタッグを組み産み出したもの。ブランドポークの協同ファーム「まるみ豚」、創業140年余年の老舗醸造所「ヤマエ食品工業」、宮崎都城のカレーの名店「カレー倶楽部ルウ」という陣容だ。

 

宮崎川南町の協同ファーム「まるみ豚」は2017年度の「九州沖縄農業未来アワード」グランプリを受賞、「宮崎県肉畜共進会」でも3度のグランドチャンピオンを獲得している高品質なブランド豚だ。「カレー倶楽部ルウ」はカレー専門店としてご当地の味「チキン南蛮カレー」で人気を集める店。黄色いマスクが目印の代表はアイディアマン。地元都城を想い、地域振興に身を捧げている。今回はスパイス監修を手がけた。宮崎県都城市で明治4年創業という歴史を持つ醸造メーカー「ヤマエ食品工業」は、そのまろやかな味の土台となる麦みそで参戦。各社地域への思いも強く開発に挑んだそうだ。完成した「まるみ豚 カレー豚みそ」、味噌のまろやかさと、カレーのスパイス感、豚肉のうま味を軸として練り上げられたもの。これがどうにも後を引くいいものだったのだ。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

チューブに入ったそれは割と色気がない感じのパッケージ。そう思う方もいるかもしれない。しかし瓶詰めはなんだかんだで空瓶がけっこう溜まっていく。もてあますことも多いのだ。わたしはこれでいいと思う。しかしこれがちょいと問題もはらんでいる。それというのもこの手軽なチューブとスクリューキャップのパッケージ、あまりにも手軽に絞り出せるものだから、その美味しさにこれが組み合わさるとたちまち量が減っていく。使いやすすぎて、うますぎて、止まらなくなるのだ。これは危険だ。

 

さて、まずはシンプルに白ごはんと合わせたが、これはもう想像を超える破壊力であった。旨いのだ。とはいえみなさんに紹介するにあたり、少しひねりを加えようと、ポークソテーをサンドイッチにして、それに加えてみようと考えた。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

フライパンを熱して油を敷き、クミン、マスタードシード、ホールブラックペッパーをテンパリング(油にスパイスの香りを移す料理技法)した油で豚の肩ブロックをロースト、塩胡椒で仕上げた。

生野菜をたっぷり用意して、パンはライ麦パンを使うことに。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

まずは「カレー豚みそ」ひと舐め。ああ、これはクセになる。絶妙な調整がなされている。

カレーも味噌も香りが大事な食品だ。パッケージを開けて香りを嗅ぐと、きちんと一体感があるのにカレーと味噌、両方の匂いがちゃんとわかる。この時点でもう期待感は最大値に達している。それくらい美味しそうな香りなのだ。そして味がまた、素晴らしかった。甘味噌の濃厚な奥行き、そこに乗せられたスパイスの香り。アジアエスニックではない、日本のカレーライスの懐かしくも嬉しい味と香りでいきなりググッと舌と気持ちをつかまれる。甘さに嫌味がないのも素晴らしい調整だ。舌に残るいやらしさはまったくなく、さりとて切れ味がいいというものではなく、余韻を響かせながらゆっくり舌がニュートラルに戻るような優しいもの。これはすごい。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

さあ、肉に使ってみよう。ローストしたポーク、ちょいと強めに塩を打ったが「カレー豚みそ」自体の肉感、肉の風味は負けていない。きちんとキャラクターがある味ならではであろう。「カレー豚みそ」に含まれるひき肉の粒は大きめで粗く挽かれており、これが功を奏していると感じる。「カレー豚みそ」の甘さの部分がスパイスの香りを後ろから押すような引き立て役を果たす。味噌のおかげか、スパイス香るものなのにちょっと和風に持っていかれる感じが面白い。塩コショウだけでシンプルに仕上げた肉などに遠慮せずガバッと塗りたくって食べると素晴らしい。シンプルで美味しいもの、という立ち位置だった肉がいきなりご馳走に変わる瞬間だ。

 

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

さて、サンドイッチ。

野菜と肉を用意して、ライ麦パンには「カレー豚みそ」を塗る。このときふと思いついてやってみたのだが、バターと「カレー豚みそ」を混ぜて塗ってみたのだ。これがすごかった。具材なしでこれだけ塗ったパン、1斤食べきってしまうのではないかという美味しさだ。野菜のさっぱり感とローストポークのボリューム、そこにキャラクター強いが懐も広いこの「カレー豚みそ」をバターとともに食す。大変な美味しさで、ポークと野菜のサンドなのに頭が和風のものを食べていると感じるのが面白くも新しい。カレー風味なわけだが、合わせる食べ物によってカレーの風味が前に出たり引っ込んだりする。この感覚がとても刺激的だ。

 

「まるみ豚」の持ち味、良さを生かしカレーと味噌に飲み込まれぬ存在感を出すため、ミンチを粗めにする微調整の繰り返し。スパイスと味噌との相性にも強くこだわり、深い味わいやカレーの一体感を出すために試作を続けた。味噌にもこだわりベストな麦みそと他の要素のマッチングの追求。

品質、伝統、革新が「カレー豚みそ」の美味しさ中に息づいている。

宮崎・都城の豚×味噌×カレー店がタッグを組んで生んだ革新の伝統食「カレー豚みそ」

今回はサンドイッチとしてみたが、ローストした肉に合わせたり、サラダディップにしたり。おにぎりの具材としてもいいだろう。野菜炒めなどの調理にも強力な助っ人となるはずだ。深みのある味は手間なく凝った料理を作り出すことができる。しかし便利という言葉だけで伝えるのはあまりにももったいない、いいものであった。

 

これをキッチンにストックしておかない手はない。

※掲載情報は 2017/12/29 時点のものとなります。

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キュレーター情報

飯塚敦

カレーライター・ビデオブロガー

飯塚敦

食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。

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