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美しい琥珀色と香りは航海中の古樽で熟成された偶然の産物
年末のクリスマスシーズンに、北欧のノルウェー、フィンランド、エストニア、スウェーデンへ食の取材に行ってきました。冬の北欧はきっと寒いだろうと覚悟していたら、昼の気温が摂氏5~7度と意外と温かく、ちょっと拍子抜けしましたが、北国らしいロマンチックなクリスマスの雰囲気は格別でした。
今回、最初に訪れたのがノルウェー第二の都市ベルゲン。ドイツのハンザ同盟都市として、バカラオ(干鱈)の貿易で中世から栄えた街です。旧市街にあるハンザ同盟時代からの木造倉庫は世界遺産にも登録され、クリスマスのネオンとともに美しい街並みが印象的でした。
ベルゲンは、バカラオ貿易を通してスペインやポルトガルと関係の深い街でもあります。もともとバイキングの航海時の保存食だったベルゲンの干鱈は、15世紀にスペイン、ポルトガルの大航海時代を支え、今ではラテン語系のバカラオという言葉が逆輸入されて、ノルウェーでもそう呼ばれているほどです。ベルゲンでは、バカラオをトマトで煮込んだポルトガル風の料理が街の名物にもなっています。
さて、そんなスペインやポルトガルとノルウェーの関係を象徴するお酒に、「リニア」というアクアビット(じゃがいもの蒸留酒)があります。インドネシアに向けて船積みし、赤道を二度越えしてノルウェーに戻ってきたアクアビットが、海上の古樽中で熟成して、美しい琥珀色と香りがついておいしくなっていた、という偶然の産物からできたお酒だそう。リニアはずばり「赤道」の意味です。
以前、ippinキュレーターとしてノルウェー大使館の晩さん会に招いていただいたときに、シェリーの古樽で熟成させた青ラベルのリニアを試飲させていただいたことがあるのですが、今回は、ポルトガルのマデイラの古樽で熟成させた緑ラベルのバージョンを発見(他に、さらに陸上で熟成させた赤ラベルのリニアもあるようです)。
アルコール度数が41.5度もあり、いっぺんになかなかたくさん飲めないものですが、バイキングの時代から海に乗り出してきたノルウェー人ならではの、まさにスピリットのこもったお酒といえそう。瓶ごと冷やしたアクアビットを小グラスに注いで飲むのがノルウェー流だそうで、できればバカラオの料理と合わせてたしなんでみたいものです。
※掲載情報は 2017/01/08 時点のものとなります。
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キュレーター情報
各国・郷土料理研究家
青木ゆり子
雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。
地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。
「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。