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この缶切りは僕が愛用しているドイツ製の「フェリオ」というやつ。ハンドルをくるくる回して切っていく「回転刃型」というやつだが、従来の回転刃型は、フタを真上から切っていく仕組みだった。
しかし、これは違う。
左側の画像をじっとご覧いただきたい。金属の棒と、丸いボタンのような部品の下に、グレーの小さな刃が顔を出しているのが見えると思う。これを缶詰にあてがうと(右画像)、刃が縁のふくらんだ部分に横から当たることになる。
さあ、この刃がいったいどこを切っているのかというと……。
外側1枚を切る!
フタの、この部分を切っていくのだ。
缶詰のフタは「二重巻締め」という構造になっていて、缶胴の縁とフタの縁を重ね合わせ、くるくると二重に巻いて締め付けている。とても堅牢な作りなのであります。
この缶切りは、巻締めたフタの外側一枚だけを切っていくという、まるで居合いの達人のようなやつだ。だから、一周切り終わってフタを持ち上げると……。
衛生的でもある
こんな風に取れる。それこそ、被さっていたフタを開けるような感じである。
外側だけを切っているから、金属の切りくずが出たとしても缶の中には入らない。おまけに刃が中身に触れていないから、衛生的でもある。
さて、さて。
この缶切りの真の実力が発揮されるのは、さば缶を開けたときであります。
フタを取り去り、深皿をかぶせて、一気にひっくり返してみよう。そうして、そっと缶を持ち上げると……。
美しさは大事
かくのごとし。
さばの皮がはがれず、そのままのお姿で出てくるのだ。
缶切りいらずのプルトップ式缶詰はとても便利だが、フタを開けたあとに缶内側に縁が残る。ところがさばの身は内径いっぱいに詰められているから、引っ張り出すときに縁に皮が引っかかり、ぺろりと剥けてしまう。それでは盛りつけたときに、ぜんぜん美味しそうに見えないではないか。
ということで、この缶切りは安全で、かつ中身を美しく取り出すことが出来るすぐれものであります。
僕の愛用しているのはフェリオという商品だが、同じ仕組みの缶切りはいくつか出ている。日本のものだと「トッパー缶切り」というのがそれです。
※掲載情報は 2016/11/28 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』(アスキー新書)、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(タツミムック)、『缶づめ寿司』(ビーナイス)、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社プラスアルファ新書)、『安い!早い!だけどとてつもなく旨い! 缶たん料理100』(講談社)など。小曽根マネージメントプロ所属。
お問い合わせ Mail:k-k@kosone-mp.com