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一番の売れ筋という「パリ ブレスト ノワゼット オランジュ」
都立大学に住む友人がぜひここのスイーツを!ということで、ランチタイムの前に出掛けたのが、「アディクト オ シュクル」。一段下がったエントランスのドアを押すと、身体を包むのは甘い香りだけではない、パリのエスプリ。
なんでだろう?
店主のパティシエール石井英美さんそのものがフランスなんですね。スイーツ好きが嵩じて、なんとプロの道へ進もうと一念発起。普通はスイーツの食べ歩きプロで終わるはずが、仕事を辞めてエコール 辻 東京に入学、さらにはリヨン郊外のフランス校へ進学し、アンジェの「グルニエ ア パン」、「ル トリアノン」にてみっちりと研修。帰国後はバゲットレトロドールで有名な名店「ヴィロン」、そして「ラデュレ」などでしっかりと独立準備。
甘いものが大好きでそれを広めたい!という純粋な気持ちが石井さんのオーラになっているんだなあ、と思いつつその笑顔に癒される空間。その日はハロウィンも近く、かわいい洋服を身に包んだ子供たちが、お菓子をおねだりにひっきりなしにご来店です。
小さなお菓子をひとつずつ渡す石井さんの姿には、子供たちにこそ本物のスイーツを、という気持ちが垣間見えます。お菓子をいただいてよろこばない子はいませんよね。
さて、まずは焼き立てのクロワッサンをいただきつつ、そのバターの濃厚さを楽しみながら濃い目のコーヒーで味覚をキャッチ&リリース。クロワッサンってこんなに美味しかったのか!というほど、インパクトが強い逸品です。
一番の売れ筋という「パリ ブレスト ノワゼット オランジュ」。ヘーゼルナッツとバターの味わいにオレンジのコンフィが加わり、味わいは何重にも重なり味覚の覚醒がいつまで経っても終わることがありません。ここはコーヒーにアクセントを求めることもなく、ただ目の前の「パリ」に集中したい時間です。
全体的に味わいははっきりしています。甘さを抑えたスイーツというより、素材をはっきり際立たせたスイーツ、といっていいでしょう。
店にいると目移りして、いかんいかん。甘いものはそう多くはいただかないのですが、シュクルは妙に居心地がいいのです。ほぼ一組しか座れない小さなカウンターが空いていたら、パンやケーキをつまみながらのんびり過ごすことはかなり贅沢かも知れません。場所柄客層もよく、普段着をさりげなくおしゃれに着こなしている方々が目に入ってきます。
商店街というほど店が立ち並んでいるわけでもなく、ぽつぽつとお洒落なショップが並んでいます。都立大学という自由が丘と学芸大学に挟まれた小さな駅の周りは、静かに時を楽しむ大人たちの街なのかもしれない。
次回は空いていそうな午前中の時間に行ってクロワッサンを、そして次はリンゴのパイをいただいてみよう。
アディクト オ シュクル
住所:目黒区八雲1-10-6
電話:03-6421-1049
営業時間:10時~19時 火曜定休(祝日を除く)
東急東横線都立大学駅徒歩7分
※掲載情報は 2016/11/11 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードビジネスデザイナー
嶋啓祐
全国の農村漁村をくまなく巡り、そこで使うホンモノの素材を探すことをライフワークにしています。ホンモノはいつも隠れています。全国の肥沃な土地で、頑固で不器用な生産者が作る「オーガニックな作品」を見つけて、料理人が少し手を加える。それが「ホンモノの料理」になります。毎月地方に足を運び、民泊に泊まり、地元の方々とのコミュニケーションを作るのが楽しみです。自然豊かな日本全体が食の宝庫です。自然、風土、生産者、素材、そして流通と料理人とその先にいる顧客。食に関わるすべての方が幸せになるような「デザイン」を仕事にしています。1963年に北海道は砂川(日本一になった美味しいお米ゆめぴりかの産地)で生まれ、18歳上京。大好物はイクラ、クレソン、納豆、ハーブ、苦手なのは天津丼などあんかけ系、豚足、焼酎。趣味は全国の神社巡りとご朱印集め。2018年より自宅料理コミュニティ「ビストロ嶋旅館」を主宰。