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「人を逢せた」土地で生まれ、文化人の歴史を守ってきた老舗
母が信州の長野県に旅行に行き、満面の笑みで自慢げにお土産を出してくれた。それは、私の仕事を考えてなのか、発酵食品である日本酒にゆかりのある和菓子屋さんの「栗鹿ノ子羊羹」だった。それを作っているのが小布施堂。
「栗と北斎と花のまち」として親しまれている長野県小布施市は、江戸時代に千曲川の舟運が発達。そのため、人やモノの出会う場所となったため「逢う瀬」が、「小布施」の由来という説もある場所。文化人の交流も盛んだった。そこで、江戸時代末から明治初期にかけて桝一市村酒造場を営んだ鴻山(市村家十二代)が、浮世絵師北斎のためにアトリエを建てた。そのアトリエ名が今も大吟醸純米生酒「碧 軒」という名前に残っている。
その後、酒の桝一市村と、栗を使った和菓子の小布施堂へと展開の幅を広げた。酒作りも得意としていたが、市村家は缶詰技術も高かった。「栗鹿ノ子羊羹」を見るとそんな市村家の歴史を感じる。羊羹の箱はこのような感じで、缶詰技術の雰囲気はない。
しかし、箱を開けてみると……。
こうやって、くるくると付属のものに巻き付けながら、羊羹の缶詰を開いていく。昔の日本の缶詰技術では、このような形がたくさんあったが、今では想像ができない。
この作業は、どきどきするが、一度しかできないのでじっくり楽しんでほしい。きれいに巻き付いてきたが、まだ半分。
きれいに栗鹿ノ子羊羹が姿をあらわした。
秋の訪れを感じる栗がぎっしりと詰まっている。羊羹も栗の色と味がするが、中に入っている栗の存在感は、それに負けてはいない。栗の羊羹というと、小豆の羊羹の中に、栗が入っているものが多いが、小布施市の特産である栗を贅沢に使っているが、そのバランスは絶妙。中の栗が主役を引き立てる羊羹となっている。
2016年の「栗名月」は10月13日。中秋の名月の約一か月後に巡ってくる十三夜は、秋の収穫を祝う日本独自の風習。この時期の手土産にもおすすめである。
秋の夜長を、栗鹿ノ子羊羹と歴史ある日本酒を傾けながら、大人の時間を。
※掲載情報は 2016/09/28 時点のものとなります。
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キュレーター情報
発酵料理研究家/観光連盟アドバイザー
高橋香葉
「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。
現在は、日本全国を回り、全国の発酵食品だけでなく温泉巡りをし、日本の伝統文化を勉強している。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。フードアナリスト協会「食のなでしこ2016」。
主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等