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チーズ通垂涎の国
知る人ぞ知る、チーズ王国ポルトガル。日本での流通が少ないため、チーズ通にとってはいわば「憧れの国」かもしれません。ポルトガルのチーズの多くは小さな工房で生産されているため、日本はおろかヨーロッパでも販売される量はわずかです。しかし、その品質の高さはよく知られており、ポルトガルは世界のチーズ通注目の国なのです。今回は、数多くあるポルトガル独特のチーズの中から厳選して3種類をご紹介します。
魅惑のとろとろチーズ
世界中から絶賛されるとろとろの羊乳チーズ「ケイジョ・デ・セーラ・ダ・エストレーラ」。ケイジョはポルトガル語でチーズを意味します。ポルトガルで最も標高の高いエストレーラ山地で作られます。
堅いチーズの上皮をめくると現れる、とろりとしたクリーム状のチーズ。それをスプーンですくって食べるのですが、やや苦みのある濃厚な味わいと香りに、チーズ好きならば言葉を失うはず!ポルトガルでは、大きなこのチーズを親戚の集まりやパーティーなどにテーブルに置き、各自がパンやクラッカーなどにつけて楽しむことが多いです。中身を食べ終えたら、残ったチーズの外皮を器にして、中にチョリソー、ジャガイモなどを入れてオーブンに入れて焼く楽しみ方もあります。ほどよく溶けた外皮と具の味が混ざり合い、絶品です。大型チーズならではの楽しみ方です。
朝食にピッタリの豆腐のようなチーズ
チーズが大好きなポルトガル人は、朝からチーズを欠かしません。朝食でよく食べられるチーズが、ヘルシーなチーズ「ケイジョ・フレシュコ」です。あっさりとした味と食感がまるで豆腐のようです。朝食では、パンにジャムとこのチーズを載せて食べたり、シンプルに塩コショウでも美味しくいただけます。レストランでもスターターとしてよく出されるチーズですので、旅の途中で日本が恋しくなったら是非お試しください!「フレシュコ」(フレッシュ)というだけあって、生のチーズのため、持ち帰りはできません。現地だけで食べられる、特別感もたっぷりのチーズです。
ポルトガルの家庭で長く親しまれるチーズ
ポルトガルでテーブルチーズとして古くから親しまれているチーズ「ニーザ」。一般的に広く食べられるチーズではありますが、これもまた、工房で作られています。美味しい「ニーザ」のチーズを求めて全国からわざわざ工房まで足を運ぶ人も多くいるほどです。
「ニーザ」も羊乳を原料としますが、「セーラ・ダ・エストレラ」とは味も食感もまったく異なり、こちらはセミハードタイプのチーズです。「ニーザ」の独特な苦みは凝固剤として使われる「カルド」という朝鮮アザミのおしべからのものですが、「ニーザ」だけでなく、ポルトガルのチーズのほとんどが植物性の凝固剤を使っていることが特徴と言えるでしょう。赤ワインによく合い、セミハードなので持ち運びもしやすくお土産にも適しています。
今回ご紹介したチーズのほかにも、ポルトガルには牛乳、山羊乳を原料とする多種多様なチーズがあります。有名どころのチーズだけでなく、市場には「○○〇さんが作ったチーズ」という生産者の名前入りで販売されるような名もないチーズも並びます。地方の町にお出かけの機会があれば、市場をのぞいてご当地チーズを探してみてください。リスボンやポルトのような都市ではチーズ専門店(ケイジャリーア)で全国のチーズを取り扱っていますので、ぜひ訪ねてみてください。
※掲載情報は 2016/09/03 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ポルトガル大使館
ユーラシア大陸の最西端に位置するポルトガルは、日本が初めて出会った西洋の国です。1543年の種子島到来をきっかけに日本に南蛮文化を伝えたポルトガルは、日本人の日常生活や食文化に深い影響を残しました。皆様も歴史の授業でポルトガル人到来は勉強されたのではないでしょうか。
鉄砲、西洋医学、絵画で使われる西洋技術、西洋音楽・洋楽器、天体観測機、パンや菓子等、この時代にポルトガル人が日本に伝えたものは数多くあります。カステラ、金平糖、ボーロなどは語源もレシピもポルトガルからもたらされました。パン、コップ、ボタン、てんぷら、おんぶ、かっぱ、ばってら、じょうろ、チャルメラ、オルガン、カルタ、シャボン、タバコ、ビロード、ビードロ等、日常語として定着している数多くの言葉がポルト ガル語由来なのです。
歴史的建造物、自然景観、多彩な食文化、温暖な地中海性気候、15箇所の世界遺産と、無形文化遺産に認定された民謡「ファド」などの多様な魅力に魅せられ、ポルトガルを訪れる観光客はリピート率が高いことで有名です。「初めて訪れるのに懐かしい国」と多くの日本の皆様に親しまれるのも、470年以上にわたるおつきあいがあるからかもしれません。