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叩くとカーンと澄んだ響きのする最上級の本枯鰹節
日本人の伝統的な食文化には、西洋の味を形成する「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の4要素の他に、そのどこにも属さない「うま味」という要素があります。
このうま味をたっぷりと含んだ「ねこまんま」を作ってみました。
おいしい鰹節に醤油を垂らし、炊きたての白米に載せるというシンプルなものですが、鰹節の素材にこだわってみました。
鰹節というとパックに入ったものを想像する方は多いと思います。僕の子どものころの1970年代頃は、祖母が鰹をそのまま乾燥させた固形上の本節を削って鰹節にしていました。
まずは美味しい本節を調達しようと、上野のアメ横にある老舗店、「伊勢音」に行きました。
アメ横のJR高架下に様々なお店がひしめき合う中で、伊勢音はお店の雰囲気からも伝統を感じる名店の風格が漂ってきます。
伊勢音の歴史は古く、江戸末期に日本橋小舟町に鰹節問屋として創業しました。その後、明治8年に日本橋室町北詰に店を構えましたが、関東大震災で焼かれてしまいました。アメ横にある店舗は、戦後まもなく開業し戦後の復興と共に日本人の食文化を支えて来ました。
伊勢音の本節「本枯鰹節」は、薩摩半島の南西部に位置する枕崎近海で1本釣りで釣れた初鰹を、熟練の職人が伝統的な手法で黴を付けて天日干しを何度も繰り返して作られています。農林水産大臣賞を受賞した職人さんの手により、約7ヶ月以上に渡り、通常よりも多く黴付け作業が行われます。その後1年も寝かせることにより、琥珀色に輝いた本枯鰹節が生まれます。
伊勢音では、本節を削る特製の「かんな」も何種類か販売しています。伊勢音のかんなを買えば、繁忙期の12月を除き刃をいつでも研いでくれて、削り加減を調整してくれるのも嬉しいです。
伊勢音の店内には、美味しそうな本枯鰹節が木箱に入れられ並んでいます。1つ1つの本枯鰹節は大きさも形も異なります。良さそうなものをお店の方にお願いして見立ててもらいました。
早速、本枯鰹節を家に持ち帰り、本枯鰹節をかんなで削ってみました。本節を削る方向は、皮のほうを表側にして、しっぽの方を上に向け、下の頭の方から削って行きます。削ると「しゅる、しゅる」と気持ちの良い音がします。削る時の音にも情緒があります。
本節をかんなで削った出来立ての本枯鰹節は、まず食欲をそそるような香りを放ちます。鰹節に醤油を数滴垂らし、炊きたての無農薬の新潟産コシヒカリの上に載せるだけで、「ねこまんま」の出来上がりです。余計なものを一切入れないので、鰹節の美味しさを純粋に味わいことが出来ます。口に入れると深みのある鰹節の風味が全体に広がり、「うま味」を感じます。
あまりに衝撃的な上品な美味しさは、もはや「ねこまんま」の域を越えています。
本枯鰹節は、冷や奴に載せても、お新香に載せても良いです。試しにピクルスに鰹節を載せてみたのですが、うま味が効いて美味しかったです。
本節をかんなで削るのは手間がかかりますが、その分の美味しさは格別です。上野のアメ横に来るなら、ぜひ伊勢音に立ち寄って美味しそうな本枯鰹節を見立ててもらってはいかがでしょうか?
※掲載情報は 2016/04/06 時点のものとなります。
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キュレーター情報
荒岡眼鏡の三代目 眼鏡店ブリンク店主
荒岡俊行
1971年生まれ。東京・御徒町出身。1940年から続く「荒岡眼鏡」の三代目。
父方も母方も代々眼鏡屋という奇遇な環境に生まれ育ち、自身も眼鏡の道へ。
ニューヨークでの修業を経て、2001年に外苑前にアイウエアショップ「blinc(ブリンク)」、2008年には表参道に「blinc vase(ブリンク・ベース」をオープンさせる。
「眼鏡の未来を熱くする。」をミッションに掲げ、眼鏡をカルチャーの1つとして多くの方々に親しんでいただけるよう、眼鏡の面白さや楽しさを日々探求しています。
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