とりもも一本カレー
食のショールーム・パルズ オンラインショップ
毎年季節になると食品関係の大きなトレードショーであるFOODEXとスーパーマーケットトレーディングショーが海のそばのコンベンションセンターで行われる。
わたしの興味の中心はいつでも日本と世界の各地で作られる地域の食材を扱った加工食品だ。カレーの類もいつでも必ず展示される。難点はいつでも見られるわけではない、その期間だけの数日間の展示会だということだ。
先日、山口の友人が出張で東京に来た折にランチに誘われた。食事を終えたあとに「ちょっと面白い全国の中小生産者が作る食品の展示紹介の場所があるので今から行かないか」と誘われた。一も二もなくついて行くと、ビルの階上に「食のショールーム・パルズ」という場所があった。
きれいな女性オーナーが運営してらっしゃり、聞けば日本各地域の中小生産者の方と企業をマッチングする場所なのだとか。まさにショールームになっており壁の棚には各地から選りすぐられた中小の生産者が丹誠込めた食品が展示されている。そこで見つけた透明パウチの素朴なパッケージのカレー。
「とりもも一本カレー」岩手県宮古で現地の食材をふんだんに使って作られている。ごはんを用意し、5分ほど温めるだけで完成だ。
スパイスの香り高く、鶏モモが本当に丸ごと一本入っているのがたまらなくうれしい。鶏モモはふわふわやわらかという仕上げではなく、骨がほろりとしそうなくらい煮込んであるのに身がしまっており噛んでいくと旨味がどんどん出てくるという素敵な仕上がり。食べ応えがその手応え歯ごたえからやってくる。カレーソースは甘ったるくならない自然で控えめなタマネギのあまさと鶏のエキスの好バランス。辛さもきっちりあって満足度が大変高い。インド料理ではない、日本人が作るインド風カレーとして大変によいものだった。素材も無添加にこだわり、手間ひまかけてある事がよくわかる。岩手の大地が育んだタマネギ、トマト、鶏が惜しみなく使われている。そのバックボーンがおいしさだけではなく安心も届けてくれるのだ。
いつも思うのだが保存食は災害対応などで買いだめをするが、なにか非常事態になったとき、からだ以上に支えなければならないのが、心。食というのは偉大なもので、人間はおいしいものを食べるとちゃんと正気になるものだ。おいしいものが幸せを呼び起こし、気持ちに余裕ができて判断力が上がるのだ。
からだも温まる、体力も戻る。なによりも気持ちに余裕ができて前向きになる事が出来る。そういう考え方で、定期的においしい保存食を買い、入れ替えで食べていくというのはいいのではないだろうか。たとえば思い入れある地、自分の出身地や旅行、出張などで気持ちに強く残った場所のカレーを探してストックする。そんな楽しみもあっていいと思う。備えの中に楽しみと余裕を織り込んでおくと、いざという時に本当に頼りになるはずだ。
わたしはこの「とりもも一本カレー」を選びたい。
食のショールーム・パルズ オンラインショップ
※掲載情報は 2016/01/05 時点のものとなります。
カレーライター・ビデオブロガー
飯塚敦
食、カレー全般とアジア料理等の取材執筆、デジタルガジェットの取材執筆等を行う。カレーをテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」が10年目で総記事数約4000、実食カレー記事と実食動画を中心とした食と人にフォーカスする構成で読者の信頼を得る。インドの調理器具タンドールの取材で09年秋渡印。その折iPhone3GSを購入、インドにてビデオ撮影と編集に開眼、「iPhone x Movieスタイル」(技術評論社 11年1月刊)を著す。翌年、台湾翻訳版も刊行。「エキサイティングマックス!」(ぶんか社 月刊誌)にてカレー店探訪コラム「それでもカレーは食べ物である」連載中。14年9月末に連載30回を迎える。他「フィガロジャポン」「東京ウォーカー」「Hanako FOR MEN」やカレーのムック等で食、カレー関係記事の執筆。外食食べ歩きのプロフェッショナルチーム「たべあるキング」所属。「ツーリズムEXPOジャパン」にてインドカレー味グルメポップコーン監修。定期トークライブ「印度百景」(阿佐ヶ谷ロフトA)共同主催。スリランカコロンボでの和食レストラン事業部立ち上げの指導など多方面で活躍。