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鶏一羽を丸ごと味わえる、炭火が香る定番「だんご」の粋。
かつて焼鳥や鶏鍋に代表される「鶏料理」は大変高級な料理でした。江戸時代の屋台でも、カシワ蕎麦などは気軽に食べられるものではなかったようです。
私が子供の時でさえ、田舎の親戚が遊びに来る時のお土産は、新聞紙に包まれた生卵。田舎といっても東京近郊の多摩地区なのですが、まだ鶏の放し飼いが普通だったのですね。朝採りの茹で卵や焼イモは、おやつの定番でした。
そんな昔の情緒をたっぷりと残している、私の大好きな焼鳥屋さんが京橋の老舗「伊勢廣」さんです。
「串打ち3年、焼き一生」などとよく言われるように、職人仕事の代表のような焼鳥ですが、大正10年創業のこちらでは、ベテランの職人さんが文字通り「モクモク」と備長炭が敷き詰められた焼台に向かっています。カウンターに座ると、フルコース9本がテンポよく供されます。お酒は一人3合まで。決して酩酊せずに、鶏の味を楽しく、しっかり味わうためです。
鶏を丸ごと堪能できる各種コースの串の中でも、名物「だんご」の美味しさは圧巻。いわゆる「つくね」なのですが、モモ、胸、合鴨などの粗挽き肉を、ツナギなしで丸くお団子のように練って、塩で焼いた逸品です。
鶏のうま味が凝縮されていて、炭の香りと共にいつまでも口中に後味が残るので思わず、「もう一本!」と叫びたくなります。
そんな後ろ髪をひかれつつお店を出るときに嬉しいのが、この「おみやげ」です。15本セット、10本セット等々あるのですが、「再加熱すると風味を損ないますので、なるべくそのままお召し上がりください」との注意書きが入っています。そう、そのままで食するのがベストな味わいなのですね。私も「掟」を破っていろいろ試してみましたが、おっしゃるとおりのそのままが一番味わい深いな、と思います。
ぎっしり詰まった折詰も立派ですし、大人のパーティーにもピッタリな、粋な手土産ではないでしょうか。
※掲載情報は 2015/11/08 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理写真家
今清水隆宏
1965年、東京都生まれ。東京造形大学卒業。1988年よりフリーランスフォトグラファーとして独立。
以後、国内・海外、料理研究家・シェフを問わず主に雑誌、料理レシピ、レストランなどの料理およびその周辺の撮影、書籍企画等を担当。他、百貨店等各種カルチャースクール、地方自治体等にて「料理写真講座」の講師、講演等でも活動。社団法人日本広告写真家協会会員。