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缶界のトレンドはアヒージョ!
今、缶界(缶詰業界)では「アヒージョ」ブームが起きている。アヒージョはスペイン料理の一つで、にんにくや唐辛子などを入れ込んだオリーブオイルで魚介、肉、野菜などを煮る料理。各メーカーがこの食文化を取り入れて、それぞれに工夫をこらし、さまざまなアヒージョ缶に仕上げて発売しているのだ。
したがって、このコーナーではしばらく、注目のアヒージョ缶を紹介していこうと思う。
今回は、茨城県の高木商店が手掛けた「焼き鯖のアヒージョ」であります。こうしてフタを開けた画像では「ふーん……」という程度の感想しか抱かないかも知れない。しかし、開けた瞬間に立ち昇る香りがすごいのだ。最初に判るのはにんにくの香りで、それもじっくり火を通して香ばしくなったやつ。そこに唐辛子のピリッとした香りも加わり、その奥に焼き鯖の、得も言われぬ香りが潜んでいるという3段ロケット式である。
細やかな配慮を見よ
中身をひっくり返すとこうなる。前出の開缶画像と違い、鯖の美しい皮が見えている。フタを開けたときに、こんな風に皮が見えたほうがいいのではないかとも思うが(つまり皮を上にして缶に詰める)、高木商店ではあえてそうしない。なぜなら、皮を上にして詰めると、皮がフタの裏側に貼りついてしまい、開けたときにはがれてしまうからだ。
「美味しい皮も残さず食べてね」という心遣いなのであります。だからわざわざ皮を下にして、ひと缶ひと缶作っているわけだ。
ひと手間で一品料理に
この缶詰は、缶ごと湯煎で温めると、それだけで抜群にウマい。しかし、せっかくアヒージョ缶なのだから、本場スペインにでもいるような雰囲気に仕立ててみよう。
耐熱容器に缶の中身をすべて入れ(缶汁も)、スライスした玉ねぎとマッシュルーム、ブラックオリーブを加えて、上からオリーブオイルをひと垂らし。これを魚焼きグリルに入れて5分〜8分ほど焼いてみると……。
ご飯とも相性抜群
かくのごとし。鯖はすでに調理済みだから、玉ねぎとマッシュルームにほどよく火が入ればできあがりである。缶詰で簡単にできる料理なので、僕は缶たん料理と呼んでいる。さて、こうして食べてみて判るのは、この缶詰の味付けが素晴らしいということであります。
アヒージョといえば、基本的には塩味だ。しかしこの缶詰では砂糖、醤油など和食の調味料も加えている。それが「もうひと口、もうひと口……」と後を引く絶妙な味わいとなっている。
だから、この料理を食べていて欲しくなったのはご飯であります。当初はバゲットをスライスし、軽くトーストして添えようか……なんて思っていたけど、そうじゃなかった。断然、白飯!
ということで、撮影が終わったらすぐに一膳のご飯とともに食し、最後には半膳のご飯を器にブチ込んでしまった。すなわちアヒージョおじやである。鯖から出た脂(DHA、EPAを含んだ身体にいい脂である)と、マッシュルームや玉ねぎから出たスープがご飯にしみこみ、まさに缶動の美味しさ。
そういえば、おじやの語源はスペイン語の「オジャ」だったと、そんなことまで想い出したのでした。
ごちそうさま!
※掲載情報は 2015/10/18 時点のものとなります。
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キュレーター情報
缶詰博士
黒川勇人
昭和41年福島県生まれ。平成16年から世界の缶詰を紹介する『缶詰blog』を執筆。缶詰に精通していることから"缶詰博士"と呼ばれ、TVやラジオ、新聞など各種メディアで活躍中。国内外の缶詰メーカーを訪れ、開発に至る経緯や、製造に対する現場の“思い”まで取材するのが特徴。そのため独自の視点から缶詰の魅力を引き出し、紹介している。
著書は『おつまみ缶詰酒場』(アスキー新書)、『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(タツミムック)、『缶づめ寿司』(ビーナイス)、『日本全国ローカル缶詰 驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社プラスアルファ新書)、『安い!早い!だけどとてつもなく旨い! 缶たん料理100』(講談社)など。小曽根マネージメントプロ所属。
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