国技館でしか食べられなかった「相撲やきとり」が期間限定で宅配でも味わえる!

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私は「柿家鮨」の宅配寿司が大好きで、この日も家人に出前を頼み、自分の部屋に引きこもって(アナログレコードなど聴きつつ)その到着を待っていた。
 
出前が届いたらしいので食卓について、私は思わず声をあげた。

 

「えっ、なんで、`相撲やきとり`がここにあるの!?」

 

≪やきとり≫と大書された箱が懐かしい。相撲見物に出掛ければ、山ほど土産を持たされるけれど、その定番というか看板というべき一品である。「なんといっても、`相撲やきとり`だよね」と言って相好を崩す相撲ファンも少なくない。私はすっかり相撲を見なくなってしまったけれど、`相撲やきとり`のファンはやめられない。わが家の食卓にあった`相撲やきとり`は、「柿家鮨」が期間限定で販売している代物だった。鮨はあまり好まず、もっぱら肉食を旨とする愚娘のために注文されたもので、心中「オーダーする前に、ひと言、かけてくれよぉ……」と嘆いた。

 

そして、すがるような目で、「ひと口、食べていい?」とせがんだ。私は返答も待たずにやきとりの串を持ち、一切れ引き抜いて食べた。……ああ、この味だ。`相撲やきとり`の味だ。

これ以上でもこれ以下でも駄目、という正しき焼き鳥

国技館でしか食べられなかった「相撲やきとり」が期間限定で宅配でも味わえる!

まあ、もっと「グルメ」とか「こだわり」といったやきとりならば、世の中にごまんとある。元有名フランス料理店のシェフがワインに合わせて稀少部位を焼いたり、レバーのパテやジビエを含むフルコースに仕立てた店がミシュランの星をゲットしたり……、というご時世なのだ。まだ旺盛に酒を飲んでいた頃は好んでそういう店に通っていたが、静かな生活を送るこの頃(?)、“相撲やきとり”の実直ともいうべき味わいはしみじみと心を打つ。

 
ベースは醤油味で、味醂や水飴の味つけが人なつっこさを増す。なんら変哲のない、企業秘密などありそうにないやきとりなのだけれど、「じゃ、作ってみろ」と言われて作れるものでもない気がする。そもそもやきとりは、これ以上美味しくても、これ以上不味くても、駄目だとさえ思わせる。その意味で誠に正しい焼き鳥である。

 

1本食べ終わった時点で、「あ、これ、ippinにのせなきゃ」と思い、急いで写真を撮った。写真で焼き鳥が1本足りないのはそのせいである(笑)。

 

当然、冷めた焼き鳥だけれど、温める必要はない。つくねも別にジューシーである必要はない。ちょっと、ミシャ・エルマンのバイオリンのようでもある。彼よりも巧いヴィルトゥオーゾなど幾らでもいるが、その演奏を聴いていると、「別にこれ以上巧くなくてもいいじゃないか……」と感じる。技巧とか、派手さとか、流行だとか、そういうものと無縁で、いや無縁だからこそ素晴らしいものが、ここにある。

国技館でしか食べられなかった「相撲やきとり」が期間限定で宅配でも味わえる!

※掲載情報は 2015/10/12 時点のものとなります。

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キュレーター情報

横川潤

エッセイスト 文教大学 准教授

横川潤

飲食チェーンを営む家に生まれ(正確には当時、乾物屋でしたが)、業界の表と裏を見て育ちました。バブル期の6年はおもにNYで暮らし、あらためて飲食の面白さに目覚めました。1994年に帰国して以来、いわゆるグルメ評論を続けてきましたが、平知盛(「見るべきほどのものは見つ)にならっていえば、食べるべきほどのものは食べたかなあ…とも思うこの頃です。今は文教大学国際学部国際観光学科で、食と観光、マーケティングを教えています。学生目線で企業とコラボ商品を開発したりして、けっこう面白いです。どうしても「食」は仕事になってしまうので、「趣味」はアナログレコード鑑賞です。いちおう主著は 「レストランで覗いた ニューヨーク万華鏡(柴田書店)」「美味しくって、ブラボーッ!(新潮社)」「アメリカかぶれの日本コンビニグルメ論(講談社)」「東京イタリアン誘惑50店(講談社)」「〈錯覚〉の外食産業(商業社)」「神話と象徴のマーケティングーー顕示的商品としてのレコード(創成社)」あたりです。ぴあの「東京最高のレストラン」という座談会スタイルのガイド本は、創刊から関わって今年で15年目を迎えます。こちらもどうぞよろしく。

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