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ミラノ万博を開催中の北イタリア・ロンバルディア州の郷土菓子
「食」をテーマに、今年5月1日から開催されているミラノ国際博覧会(ミラノ万博)に行ってきました。
当地では、次回の万博開催地でもあるアラブ首長国連邦(UAE)に次いで、ドイツとともに待ち時間で2番目の人気を呼んでいる日本館はもちろん、140ヶ国以上のパビリオンを巡り、美食の国イタリアに一堂に会した世界の料理の数々を取材。パビリオンが林立する2kmものメインストリートを、興奮しながら実によく歩きました(笑)。
会場で行われている、日替わりで参加国を1国ずつ紹介するナショナル・デーで、7月11日には、われらが「ジャパン・デー」の登場。食への情熱が半端ないイタリアの人々をすでに魅了している和食が、さらに注目を浴びる1日となったことでしょう。あらゆるジャンルの食を愛する人々が世界中から集う、まさにお祭りのようなこの一大イベント、機会があれば、10月31日までの開催期間に訪れることをぜひおすすめします。
さて、万博会場では、ミラノを州都とする北イタリアのロンバルディア州も独自のパビリオンを建てて参加していました。イタリアは多くの王国や公国が19世紀に統一されてできた国なので、今でも地方色が豊かなのですが、ロンバルディア州もご多分にもれず、独自の食文化が息づいています。
ロンバルディア州サロンノのメーカーChiostro社の「アマレッティ」(手前)と、同じサロンノ産のリキュール「アマレット」(右上)。
中でも、ロンバルディア州を代表する郷土菓子として世界的に有名なのが、「アマレッティ」。ミラノ近郊の街サロンノの特産品であり、私も初めてイタリアで食べたときから大好きになった、香ばしくておいしい素朴なお菓子です。おおまかに分けて、ソフトタイプとハードタイプがあります。
アマレッティは、16世紀のイタリア・ルネサンス期にフィレンツェ公国からフランス王室に嫁ぎ、現在のフランス料理の発展に貢献したカトリーヌ・ド・メディシスが、イタリアから持ち込んで、「マカロン」の原型になったといわれています。しかし、アーモンドを使っていることから、このアマレッティは、もともとは中東が起源なのではないでしょうか。
サロンノは、あんずの核から作ったリキュール「アマレット」の特産地としても知られています。イタリア語で”少し苦い”という意味があるアマレットが誕生したのも16世紀頃と伝えられていますが、アマレッティはもっと昔からあって、アマレッティのアーモンドに似た味がしたことから命名されたのだとか……。
ところで、ミラノ万博の会場では、レストランのメニューなどに「Gluten Free(グルテン・フリー=小麦粉などに含まれ、免疫疾患を引き起こすともいわれるたんぱく質の一種グルテンを不使用)」という文字をよく見かけました。
アーモンド粉や卵白を主原料にしたアマレッティは、まさにグルテン・フリーであり、グルテンや小麦アレルギーの気になる方が安心して食べられる焼き菓子でもあるのです。
イタリアではさまざまなメーカーのアマレッティが販売されていますが、日本には、リキュールのアマレットも手掛けている大手メーカーLazzaroni社等のアマレッティが輸入されています。
ただ中には小麦粉が含まれているハードタイプのものもあるので、家庭で自作してみるのも一手。作り方は意外と簡単です。以下にベーシックなソフトタイプのアマレッティのレシピをご紹介しましょう。主な材料は、ドイツやオーストリアの「マジパン」とほぼ一緒です。
【材料】だいたい15~16個分
アーモンド・パウダー(アーモンド・プードル)160g
グラニュー糖(キメの細かいものがよい)160g
ベーキングパウダー 小さじ1
卵白 2個分
アマレット 15ml
【作り方】
1. オーブンを170度に予熱して、クッキングシートを用意しておく。
2. 卵白を角が立つくらいによく泡立てる。
3. 2にアーモンド・パウダーとグラニュー糖、ベーキングパウダーをゆっくり少しずつ加えて混ぜながらペーストを作る。
4. 3に風味づけのアマレットを加えて混ぜる。
5. 4を大さじスプーンを使って丸くかたどり、クッキングシートの上に乗せ、オーブンで15分焼いてできあがり。
ペーストがゆるすぎるときれいに盛り上がった形ができないので、必要あらばアーモンド・パウダーを足すなりして調整してみてください。
また、香りのいいリキュールのアマレットは、余ったらカクテルを作ったり、他のお菓子などにも使い回したりできますので、ぜひ活用なさってみてくださいね。
※掲載情報は 2015/07/12 時点のものとなります。
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キュレーター情報
各国・郷土料理研究家
青木ゆり子
雑誌「ぴあ」等の記者を経て料理に目覚め、2000年に「世界の料理 総合情報サイト e-food.jp 」を創設。以後、各国の「郷土料理」をテーマに、サイト運営、執筆、レシピ研究および開発、在日大使館・大使公館での料理人、料理講師等などに携わる。
地方色あふれる国内外の郷土料理の魅力を広く伝えるとともに、文化理解と、伝統を守り未来につなげる地域活性化をふまえて活動を行っている。
「世界の料理レシピ・ミュージアム」館長。著書「しらべよう!世界の料理 全7巻」(ポプラ社)、
「日本の洋食~洋食から紐解く日本の歴史と文化」(ミネルヴァ書房)。