ラングドシャ(Langue de Chat)
洋菓子店リビエール
兵庫県尼崎市にある洋菓子店「リビエール」さん。
1982年の創業で、現在は先代のお父さまの後を継ぎ西剛紀さんが後継者としてご活躍されています。
家具や壁紙、店内に飾られているオブジェなどなどは、古き良き時代のフランスのパティスリーを彷彿とさせますが……
西シェフは、フランスは大好きだけけれども、フランスのお菓子屋さんを再現したい訳ではないとのこと。
自分の頭の中にある、ヨーロッパの田舎のどこかにありそうで無い自分の好きなお店を、現実とすりあわせながら少しずつ形にしていっているのだそう。
まさに西シェフの世界観が体現された素敵な雰囲気のお店です。
ショーケースにはたくさんの煌びやかなケーキが並びますが、リビエールさんで私が最も魅かれたのはこちらの焼き菓子のショーケース。
店内中央に鎮座する、素晴らしい木製のアンティークのショーケースは、なんと大英博物館のディスプレイケースだったものだそう。
そう思ってみると、ますます趣深く貴重な逸品に見えますよね。
以前飾られていた神聖な品々のご加護がありそうな気もしたりして。
シェフがひと目惚れしたというショーケースに、私もひと目惚れしちゃいました。
リビエールさんでは、朝焼きのお菓子をショーケースにハダカで並べ、お客様に取ってもらうスタイル。
お客様にとっては間違いなくおいしそうに見え、おいしい状態でいただける嬉しいスタイルです。
でも衛生面やロス、労力などを考えるとなかなか踏み出せないですよね。
西シェフ曰く「ボクが“好き”と思うモノを形にできるように考えました。これからの人手不足の時代、オーナーが好きだと思うことを表現すること、それをまた関わるスタッフに好きだと思ってもらうことがとても大事だと思います。そして皆を豊かにできるように。まぁやってみます!」と。
このような自分の心に嘘偽りのないポジティブな発言がお客様の心にも届き、Twitterは2.2万フォロワー超え。
毎日お客様との対話を愉しむ姿にファンが増え続けています。
そんなリビエールさんの看板商品ともいえるのがこちらの「ラングドシャ(Langue de Chat)」。
2019年の2月に販売をスタートしたところ、ぎっしりと綺麗に詰まったビジュアルと、アンティークな雰囲気のかわいい猫缶で人気急上昇。
人気雑誌のお取り寄せにも掲載され、なんと2020年度注文数1位に輝くほどでした。
実はこのお菓子には、シェフの深い想いが込められています。
「小さい頃深夜に帰宅する父がよく持って帰ってきてくれたお菓子がこのラングドシャでした。と言っても割れたものを袋に詰めたものでした。他のお菓子がいいーと言いながら食べていたのを覚えています。ボクも父と同じパティシェになりフランスにも修行に行かせてもらい、帰国後リビエールのシェフになりました。何年かしてこれは自分の作りたいお菓子じゃないから…と辞めてしまったのですが、両親や地域のお客様への感謝の気持ちを込めてもう一度作る事にしました」と西シェフ。
若かりし頃のほろ苦い思い出と、温かな感謝の気持ちが込められているのですね。
『ネコちゃん、アンティーク、フランス、Tea time、甘いお菓子とお茶…』
というキーワードから着想し、進化させ、新たな形で販売することとなったこちらのラングドシャ。
袋入りで無造作に販売されていたものを、オリジナル缶を製造する「お菓子のミカタ」さんに依頼し、エンボス加工のかわいいネコ缶をオリジナルで作り、昔懐かしい雰囲気でぎっしりと詰めてみたところ、想像を遥かに超える人気に。
ちなみに3匹の猫ちゃんは、西シェフと2人の愛娘ちゃん。
ふたりにキスされて照れ笑いしている様子が、なんとも愛おしく微笑ましいですね。
雑誌のお取り寄せでは完売状態が続き、東京にイベント出店すると連日大行列で早い時間に完売してしまうほど。
かなり入手困難なアイテムとなっていますが、尼崎のお店では現在も購入できますよ。
もちろんビジュアルやストーリーだけでなく、お味も本格派です。
「ラングドシャ」とはフランス語で「猫の舌」という意味。
ごく薄く焼きあげられた繊細なクッキーが、かわいい猫缶にぎっしりと整列して詰めこまれています。
缶の蓋を開けた瞬間にたちのぼる、ふくよかなバターの香りがたまらなく幸せなんです。
さらに、天然のバニラを使ったバニラシュガーが入っているので、口に入れるとふわりと甘やかな香りが広がり、どこか懐かしくも心地よい余韻が残ります。
さくっ、ふわっ、ほっこり。軽やかな食感と甘い香りとともに、まるで心まで軽くなっていくよう。
1列に27枚ほど並んでいるのですが…食べだしたら止まらない、間違いなく1列は即完食してしまうおいしさです。
こんなにもオシャレな雰囲気の缶に入っているのに、昔どこかで食べたことのある素朴で懐かしい味わい。
包装紙や紙袋もノスタルジックな雰囲気なのが、逆に今の時代にマッチしているのでしょうね。
新しさと懐かしさが同居する、日本人のDNAを揺さぶるテイストとビジュアル。
お紅茶にも日本茶にも、シャンパンにもオールマイティに合うおいしさです。
優雅なティータイムのお供にぜひ!
洋菓子店リビエール
※掲載情報は 2020/11/14 時点のものとなります。
スイーツコーディネーター
松本由紀子
スイーツコーディネーター&ライター。
一般雑誌、菓子専門誌、TV、ラジオ、webサイトと多岐にわたり、ライター&コメンテーターとしてスイーツ情報を発信。スイーツ関連メーカーのコンサルティングを務め、商品開発、コラボ商品の企画、マーケティングに携わる。スイーツ講座(定期/単発)の講師も務める。
10名のパティシエの珠玉の一品!を集約したDVD 『Sweets美術館』をプロデュース&出演。
http://www.amazon.co.jp/Sweets美術館-2012-松本由紀子/dp/B00BPJSFF2
百貨店催事やイベントをプロデュースし、「スイーツコーディネーター松本由紀子セレクション」なる冠催事を展開。
*2012年11月~:フランスフェアー@JR大阪三越伊勢丹
*2014年2月:サロン・デュ・ショコラ@JR大阪三越伊勢丹
*2015年2月:アムール・デュ・ショコラ@大阪高島屋
*2015年10月~:松本由紀子セレクション@阪急うめだ本店
ORIGINE KOBEの広報を務める。
http://r.gnavi.co.jp/ippin/article-2060/