ラベイユの蜂蜜「沖縄 宮古島の花々」2018年産

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南国のフルーツやジャスミンの香りが広がる

ラベイユの蜂蜜「沖縄 宮古島の花々」2018年産

コーヒーの世界では、かつて国名や地域名で特徴を語っていた時代から、最近では生産者、農園(生産者が複数の農園を持っていることもある)、品種や精製方法、収穫ロットなど情報が細分化されるようになった。品質の高いものはスペシャルティコーヒーと位置づけられ、より繊細な味の違いを楽しめるようになった。コーヒーに限らずあらゆる食品の世界で、程度の違いはあれども、このような“情報の細分化”が起こっている。蜂蜜の世界では、産地が違えば、季節が違えば蜜の味は違うことを広めているのがラベイユだ。よく「ワインやコーヒーは農作物」と言われるが、蜂蜜の場合は少しニュアンスが異なる気がする。蜜蜂を養い、良い蜜源を確保し、その近くに連れて行くことはできても、味や品質は最終的に蜂まかせの面も大きいからだ。だからこそ世界に1000種類と言われる多様な味のバリエーションが楽しめるのだが。なかでも『ラベイユ』はトレーサビリティがはっきりした蜂蜜を集め、世界10ヵ国80種類以上の蜂蜜を揃えているという。

ラベイユの蜂蜜「沖縄 宮古島の花々」2018年産

今回紹介する「沖縄 宮古島の花々」2018年産とは、意外な場所で出会った。東京・銀座のとあるバーで、喉を痛めているわたしに旧知のバーテンダーが2種類の蜂蜜を出してくれた。銘柄は、最初わからなかった。1つは色は淡くクリーミーで覚えのある味。花の形は思い浮かぶものの名前が出てこない。「穏やかな香り、クリーミーです」とわたしは枯れた声で言った。蜂蜜はバーテンダーの好意であってブラインドテストではないけれど、隣の客人の要望で味の感想を申し上げることになってしまったのだ。2つ目の蜜は、色は標準的な濃さ。風邪の喉でも感じられるマンゴーのような、ジャスミンのような力強く華やかな香り。やや結晶化して食感はシャリシャリしている。「これはすごい」と思わずつぶやいた。バーテンダーがニコニコと瓶をカウンターに並べる。1つ目はイタリアのフレンチハニーサックル。2つ目の蜂蜜が宮古島産の百花蜜だった。養蜂家は佐渡山正光さん。のちに調べると蜜源はシロバナセンダングサなど季節の花々だという。センダングサは小さな白い花で蜜の糖度が高く、温暖な宮古島でほぼ一年中咲いている。竹富島や沖縄本島でも蜜源として利用されているそうだ。花そのものはどのような香りがするのか。機会があれば一度養蜂場を訪れていろいろ聞いてみたいものだと思う。

ラベイユの蜂蜜「沖縄 宮古島の花々」2018年産

わたしは蜂蜜好きで自宅に常時いくつかの蜂蜜をストックしているのだけど、喉が痛かったあの日、バーテンダーの心遣いと新しい蜂蜜との出会いがうれしくて、残りを瓶ごともらって帰った。写真の開封済みの瓶は、銀座のバーから家にやってきたものだ。そして風邪が治ってから『ラベイユ』を訪れ、同じものを2瓶買い求めて1瓶をバーに返し、1瓶は大切にとってある。説明書きには「紅茶、ヨーグルト、クリームチーズに」と書いてあるが、できればスプーンからそのまま味わうことをおすすめしたい。冬の寒い日にも、南国の空気を連れてきてくれる蜜だから。

※掲載情報は 2019/01/13 時点のものとなります。

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キュレーター情報

浅井裕子

株式会社anemosu 代表取締役 食プロデューサー

浅井裕子

東京・新宿生まれ。

食の老舗出版社に編集者として25年5ヶ月勤務したのち、2018年10月に独立。

「食」と「大人とこどもの食育」をもっと楽しく深く広めることをテーマに、デジタル世代のための新しい出版社anemosu(アネモス)を起業。出版・編集の他、前職時代にカリフォルニア米「カルローズ料理コンテスト」審査員、講演、商品企画アドバイザーなどを経験。飲食、中食、食品小売、宿泊・観光、製菓製パン、コーヒー、カフェ、食品メーカー、家電メーカー、農業まで深く精通。現在は企業や自治体産品のブランディングご依頼等も承っています。

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