世界的ショコラティエ『エスコヤマ』の隠れた名品集

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ボンボンショコラを“作曲”する

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寒さ増す季節になれば、チョコレートの出番である。ショコラティエ、パティシエの方々は昨シーズンが終わった瞬間から、今季にどんなチョコレート作品を発表しようか考え始める。彼らの創作意欲を止めることはできない。一昨年より昨年、昨年より今年、新しく、より驚きに満ちた味をつくり出そうと進んでいく。おいしいものであれば昨年と同じでも良いのではないか?などという疑問が一瞬浮かぶが、彼らを見ているとそれは生ぬるいように思えてくる。チョコレートづくりはプロフェッショナルが人生を賭けて取り組む、遊びのようなものだ。世界のチョコレートコンクールでも一際高い評価を受けている、兵庫県・三田の『パティシエ エス コヤマ』小山 進さんが毎年つくり出すボンボンショコラは試作を含めたら50種類以上、おびただしい数の味の組合せを追求している。土台となるチョコレートを世界から選び、中にどんな香りの、どんな味わいとどんな食感の、どのような風味の強さと余韻の長さで素材を重ねるのか。チョコレートはお菓子だが、小山さんは「作品」「曲」に例える。つくり手の小山さんが音楽家だとして、一箱のチョコレートボックスは「アルバム」ということになる。

“アンダーグラウンド”は隠れた名品

『アンダーグラウンド チョコレート アワード』というアルバム(アソートボックス)は数年同じタイトルで発表しているが、内容は毎年異なり、イヤーモデルになっている。毎年、小山さんはフランスのチョコレート愛好家による権威のあるコンクールC.C.C.(クラブ・デ・クロクール・ドゥ・ショコラ)に「CHOCOLOGY」(チョコロジー/4粒のセット)のタイトルで出品。2017年まではチョコレートの世界大会I.C.A.(インターナショナル・チョコレート・アワーズ)に約40アイテムを単品エントリーし、その受賞作から選んでI.C.A.ボックス(4粒入り)を販売していた。「CHOCOLOGY」では毎年それぞれに異なる物語が込められており、食べる順序にもこだわりがあるという、まさにアルバムを聴くかのように味わうことを前提に組まれている。I.C.A.ボックスは単品の組合せではあるが、アイテムごとの個性を引き立たせるような選抜がされていた。対して、「アンダーグラウンド チョコレート アワード」は後者のI.C.A.ボックスには収まりきらなかったものの、一品1品が個性的で魅力的すぎるアイテムを収めるためのセットとして生み出されたものだ。例えば2016年には「抹茶とプラリネアマゾン」「ごぼうと黒七味のプラリネ」など、2017年には「燻し梅干し」「生姜の醬油漬けプラリネ」「オニオンタタン」などを収めている。コンクール作品という経緯から、内容的に「攻めた」アイテムが多く、毎年このボックスは通好みの隠れた名品となっていた。

2018年のテーマは“ポップ”

2018年版となる「アンダーグラウンド チョコレート アワード 2018」では例年に比べて食べ手の「わかりやすさ」を意識したラインナップになった。これには理由があり、この年、小山さんはI.C.A.コンクールへ出品しなかった。自身の創作が、コンクールの方向性と日本のお客様の理解とのはざまに立った時、お客様に愛される「わかりやすさ」とつくり手の自分が「ワクワクする気持ち」を両立させる方法として、出品ではなくお客様と自分との間だけで創作を行なうことに決めたのだという。その結果、今年の「アンダーグラウンド」(地下・前衛の意味がある)は小山さんいわく“ポップス名曲集”となった。確かに「カプチーノ」「醬油エピス」「アドリブ(西京味噌&ラムレーズン+トンカ豆)」など名称を見ても、手に取りやすさが格段に増している。口に入れるものであるからには、食べ手にとって安心感が重要な要素となる。これまでの作品も秀逸だったが、今年のラインナップがまとう「明るさ」「平易さ」を見るにつけ、やはり難解さはあったのだろうかとは思う。

世界的ショコラティエ『エスコヤマ』の隠れた名品集

ラインナップを紹介すると

 

「アドリブ(西京味噌&ラムレーズン+トンカ豆)」
「カプチーノ」
「パナマゲイシャ213度9m9s (REC COFFEE)」
「醬油エピス」
「humor(ライム&パクチー)」
「玉露と柚子のプラリネ」
「よもぎ&苺」
「ピーナッツミルクと百年の孤独」

 

パナマゲイシャとはパナマ産のコーヒーの品種「ゲイシャ」で数字は焙煎の温度と時間を示す。百年の孤独は麦焼酎の銘柄である。
それぞれの素材や味わいについては、ぜひ実際に召し上がりながら、小山さん自身の解説が詳しく語られているエスコヤマのリーフレット(写真)をご覧いただきたいので割愛するが、どれもチョコレート好きなら一度はぜひ試していただきたいアイテムばかりだ。エスコヤマにはチョコレートのアソートセットが数多くあり選ぶのに迷ってしまうが、毎年のコンクール作品以外で選ぶならば、素直な味が好きな方には「UNKNOWN! BITTER & MILK」というストレートにチョコレートの違いを味わうセットを、小山さんらしい遊び心と創作の幅広さを楽しむには、この「アンダーグラウンド チョコレート アワード 2018」をおすすめしたい。

※掲載情報は 2019/02/14 時点のものとなります。

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キュレーター情報

浅井裕子

株式会社anemosu 代表取締役 食プロデューサー

浅井裕子

東京・新宿生まれ。

食の老舗出版社に編集者として25年5ヶ月勤務したのち、2018年10月に独立。

「食」と「大人とこどもの食育」をもっと楽しく深く広めることをテーマに、デジタル世代のための新しい出版社anemosu(アネモス)を起業。出版・編集の他、前職時代にカリフォルニア米「カルローズ料理コンテスト」審査員、講演、商品企画アドバイザーなどを経験。飲食、中食、食品小売、宿泊・観光、製菓製パン、コーヒー、カフェ、食品メーカー、家電メーカー、農業まで深く精通。現在は企業や自治体産品のブランディングご依頼等も承っています。

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