「はんぺん」だけどかまぼこより”きゅるっとした食感”が旨い「梅花はんぺん」

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味わいの酒肴にあう、はんぺん

フランス料理に「クネル・quenelle」という調理法がある。白身の魚や海老、蟹のすり身に卵白などを加えて滑らかにふぁっとした食感を楽しむ料理だがこのような料理は世界中にあり、中国料理でも台湾の魚丸(ユーワン)、香港の魚蛋(ユーダン)、ユダヤ料理の「ゲフィルテ・フィッシュ」など枚挙に暇が無い。そのクネルを最初に食べた時に「これって、はんぺん!?」そう、クネルは「はんぺん」の仲間なのだが、はんぺんには、さらにいくつかの系統があるのだ。

「はんぺん」だけどかまぼこより”きゅるっとした食感”が旨い「梅花はんぺん」

総称としては、練り物系になるが、手元の『江戸料理事典』(柏書房)を見ていくと、「魚のすり身に調味料やでんぷん粉などを加えて練り、いろいろな形を作り加熱して作るもの」とある。室町中期からあり、最初はすり身を細竹に塗りつけて焼いて蒲の穂に似ていたことそして、蒲穂子や蒲の穂は鉾に似ていたところから鎌鉾と呼ばれていた。ここで、疑問が出て来るこのかまぼこは、どう考えても「竹輪」ではないだろか。この後に板付きのかまぼこが桃山時代から作られて、最初のかまぼこは、「竹輪」という名称になってしまったのだ。

 

練り物一家の長男に生まれて最初は「かまぼこ」だったのだが、次男が誕生し由緒のある「かまぼこ」は次男が継ぎ、長男は別家として「竹輪」一家を構えることになったのだった。かまぼこの原材料は室町時代には「なまず」が多く用いられ、江戸時代になると、「はも」、「たい」、「あまだい」、「かれい」、「ぼら」、「すずき」、「いか」などで作られた。板付かまぼこは最初は焼いていたが、後には蒸す方法も登場し、材料や形による種類も増えて練り物一族は栄えることになったのだ。

 

この練り物一族には他に「さつまあげ」があるが、長男の「初代かまぼこ、改め竹輪」、次男の「惣領かまぼこ」に南の地で四男「さつまあげ」が誕生するのである。さつまあげの由来には諸説があり、琉球料理の「チキアーギ」というすり身とでんぷんを混ぜて揚げたという説と島津藩主・島津成彬公が、紀州はんぺんやかまぼこからヒントを得て作らせたとう説の二つがあるがその双方が混ざったのではないかと思う。鹿児島では単に「つけ揚」と言っていたものが「薩摩のつけ揚げ」から「さつまあげ」と変わったのである。

 

さて、三男を飛ばしていたがここに「はんぺん」の登場である。はんぺんは江戸時代の生まれであるがこれも諸説あるが、『たべもの語源辞典』(東京堂出版)によると「慶長の頃駿府の膳夫半平が作り「半平(はんぺい)」が「はんぱん」となまったという、これは徳川家康が駿府にいたので料理人半平説があるが面白いが違うと(ややこしい)。

「はんぺん」だけどかまぼこより”きゅるっとした食感”が旨い「梅花はんぺん」

幾冊もの資料を読んでも諸説があり過ぎて三男の「はんぱん」は謎の出生の持ち主なのだ。「竹輪を半分に割って板に付けたものをかまぼこといい表わし、浪速で”すりみ”と称するものを“半平”としたり、湾のふたで形を整えたから”半片”と言ったり中国語の方餅(ファムビェル)からという説のあったり、長男「竹輪」次男「蒲鉾」四男「薩摩揚げ」と比較するとはんぺんの当て字には「半片」「半餅」「半弁」「半平」「鱧平」あまりにの謎が多すぎる。参考にした事典の碩学の著者たちもこのはんぺんに関しては断定している人はいないが、ネツトを見て行くと結構断定して言い切っている例が多くみられる。

「はんぺん」だけどかまぼこより”きゅるっとした食感”が旨い「梅花はんぺん」

さて、さて、話が長くなったが今回紹介するのは鎌倉の「井上蒲鉾店」の「梅花はんぺん」である。先日鎌倉駅にある「鎌倉駅前店」で購入したが、本店は由比ガ浜にあり、井上蒲鉾店の創業は昭和6年で大磯の「井上蒲鉾店」から分家した初代牧田芳幸が、鎌倉由比ヶ浜店を構えて以来の老舗である。

「はんぺん」だけどかまぼこより”きゅるっとした食感”が旨い「梅花はんぺん」

ふだん「はんぺん」はおでん種としてよく食べているが、この「梅花はんぺん」は小さいながらムチムチした食感でかまぼこより当たりが柔らかく、普通のはんぺんより地の力が強い。原材料は「ぐじ」を使っている。ぐじは甘鯛のことでスケソウダラやサメ系の魚を使うはんぺんなどに比べて高級で、型は昔から使っている木型を使い、「付け包丁」という、かまぼこ独特の包丁で肉をつけているのだ。椀種でも旨かったが、少し焼き付けて山葵醤油でいただく味は蒲鉾とも違い乙なものである。

※掲載情報は 2018/12/10 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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