ラタナキリ産コーヒー
Sin Veng Yu | Coffee Company
コーヒーの産地というと、南米やアフリカを想像するかもしれませんが、実はカンボジアもアジアでは数少ないコーヒーの産地です。
19世紀、ベトナムやラオスと同時期に、フランスの植民地支配の影響で、カンボジアにもコーヒー文化が根付きました。ラタナキリ州、モンドルキリ州といった山岳部で生産されているのが有名です。カンボジアで主に栽培されている“ロブスタ種”は、標高が高くない低地でも栽培できるのが特徴で、土産用にメコン河近くのコンポンチャム州でも生産されています。
味といえば、濃いめに焙煎してあり、酸味がなく、チョコレートに似た風味が特徴です。濃いですが、すっきりしていて飲みやすく、薄めに淹れればコーヒーが苦手な人にも楽しんでいただけます。淹れ方は、布でできた茶漉しに細かく挽いたコーヒー豆を入れ、熱湯を注ぎ、漉すというもの。アイスコーヒーの場合、その漉す作業を何度か繰り返して、濃いめのブラックコーヒーを作ります。そこに砂糖を入れ、さらにコンデンスミルクもしくは、缶入りミルクを混ぜて飲むのがカンボジア流です。甘いコーヒーが苦手な人は、注文の際に必ず砂糖は抜くよう伝えてください。
地元のお店では、ホットコーヒーもグラスでサーブされます。カクテルのように二層になった、グラスの下部に沈殿したコンデンスミルクをかき混ぜていただきます。アイスコーヒーが地元の人たちにも人気で、ビニール袋を二重にして、内側にはミルクコーヒーを、外側には砕いたアイスを入れてストローをさしてのお持ち帰り用も日常的に出ます。カンボジアの街中では老若男女問わず、バイクの持ち手にぶら下がったコーヒー入りのビニール袋をよく見かけます。ちなみにアイスコーヒーはクメール語で「カフェータックダッコータッコー」といい、直訳すると「コーヒー牛乳氷」となります。
近年カンボジアにはおしゃれなカフェや国内チェーン店も多くなりました。今、カンボジアで一番注目されているカフェは『ブラウンコーヒー』です。まだ30代に満たない5人のカンボジア人が始めたベンチャービジネスで、今までカンボジアになかったカフェラテやカプチーノといったドリンクを浸透させました。いまやカンボジアの若者に大人気となり、カンボジアの成長を象徴する店となりました。
https://www.browncoffee.com.kh/
カフェでいただくコーヒーも美味しいけれど、おすすめは市場の中のローカルのドリンクショップで淹れたアイスコーヒー。ロシアンマーケット内の一角に、姉妹で経営するカフェがあります。市場のものとは思えないほど香り高い一杯が味わえます。昔からのカンボジアならではのスタイルでいただけるのも、旅中には最適です。
日本へのお土産として喜ばれるコーヒーといえば、カンボジアの山岳地帯で採れた、ラタナキリコーヒー、モンドルキリコーヒーです。チョコレートを連想させる香りで美味しい豆の品種です。カフェで出しているコーヒーはカンボジア産とは限りませんが、お土産にするならぜひその国のものをお勧めします。スーパーや土産物店でも購入できます。
モンドルキリコーヒー社では、もちろん豆も販売していますが、それだけでなく、東南アジア諸国で人気の3 in 1 形式のインスタントも製造販売しています。コーヒー、ミルク、砂糖が混ざった一袋一杯の、ばらまきお土産にも最適。少なめのお湯で溶かしていただくのですが、濃くて甘くてなかなか美味しく、仕事で疲れた夕方などにはぴったりです。
モンドルキリコーヒー社直営のカフェではモンドルキリ産のコーヒーを出しています。
MK Café Mondulkiri
#71E0, Street 61, Phnom Penh
http://www.mondulkiri-coffee.com/
取材協力
島村絵美
http://www.cambodiafestival.com/
Sin Veng Yu | Coffee Company
※掲載情報は 2018/05/19 時点のものとなります。
カンボジア王国大使館
カンボジアといえばアンコール・ワット、行ってみたい世界遺産第1位とも言われています。でもそれ以外のカンボジア、特に食に関してはあまり日本では知られていません。西はタイ、北はラオス、東はベトナムと接していて気候もよく似ていますが、食文化にはカンボジアならではの特徴があります。カンボジアの食とは何か。一言で言うとたっぷりのハーブと魚を発酵させて作った「プラホック」です。何種類もの香草を生で齧ることも地元の人たちは楽しんでいますが、石臼ですりつぶしたそれらを他の食材と混ぜて調理して風味と旨味を溶け込ませています。クメール料理はほんのり甘くて酸っぱい、そして辛くないのです。野菜、肉、魚、米、どれも素材の味を引き立てる優しい味のスローフード、のんびり大らかな国民性をよく表しています。水と緑が豊かな地で、雨と太陽の恵みが交互に来る常夏。ゆえに南国の甘くてみずみずしい果物も1年中楽しませてくれます。成長早い首都プノンペンでは、フレンチや和の食材と融合させた創作クメール料理も流行しています。古き良き伝統も、新しく洗練されたニュージェネレーションもうまく融合しているのがカンボジアなのです。ぜひご賞味を。