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爾比久良を食べ、茶を一服。大らかな気持ちになるのはなぜだろう。
東京練馬区、大泉学園駅から埼玉県新座市に向かって歩く道。春になると美しい桜並木になる通り沿いに、武蔵野銘菓を手がける和菓子店『大吾』はあります。
お世辞にも便利な場所とはいえません。しかし、昭和を彷彿させるこの道を武蔵野の風に吹かれて歩くうちに、「爾比久良(にいくら)」の味わいが脳裏に蘇ってくるのです。
「爾比久良」とは、新座の古い呼び名。名前にまで武蔵野の面影が
忍びます。
しかし、その味は、歯ごたえを、口溶けを、のどごしを綿密に計算され尽くしているのです。おおらかさと繊細さ。そのふたつを同時に味わえることで、希少価値がどんどん上がっていったのでしょう。
手にもつと、ずしりと重さがあります。
見た目は「こほこほ系」かなと思いきや、口に含むとしっかり、しっとりとしています。薄ほんのりとした甘みが実に上品。
これほどお茶がおいしいお菓子にそうは出会えません。
昭和天皇が御訪米の折、献上した銘品。
多くの人に喜ばれる数少ない「東京土産」の一つとして様々な雑誌に取り上げられています。
ひとつ食べ終わると、武蔵野に沈む大きな夕日を眺めているかのようなおおらかな気持ちになるのが不思議。
豊かで繊細な味わいを、あなたも楽しんでください。
※掲載情報は 2018/02/25 時点のものとなります。
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キュレーター情報
スピーチライター/コラムニスト
ひきたよしあき
(株)博報堂で、広告クリエーターとして働くかたわらで、「朝日小学生新聞」などにコラムを書いています。出張、撮影、講演で全国を回りながら、おいしいものを送ったり、頂いたり。誰かに何かを送ろうとする時、そこに素敵なエピソードが生まれます。高い安い、有名無名に関わらず、できればその一品にまつわる物語までお伝えしようと思っています。皆さんからの情報もお待ちしています。主な著書「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)