ガラス職人が命を吹き込んだグラス。きらめく透明な星が、ココロを耕す

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今からもう、30年前になるでしょうか。ある雑誌で、盛岡市にある『菜根亭』という素敵な内装デザインの自然食レストランの記事を見つけました。料理の味はさることながら、店のインテリアや食器、全てのデザインがとても洗練されていました。東京にもこんな店はありませんでした。夏は井戸水を冷房に活用し、冬は南部鉄器の薪ストーブで暖を取るなど、私が目指すレストランそのものが実現されていました。
私は、すぐに店を訪ねました。雑誌を見たというだけで素性のわからない私を厨房に入れてくれ、料理を見せ、店作りのお話を熱く、そして静かに語ってくださったのが、オーナーシェフの佐藤幸吉さんでした。その後、花巻市大迫町に移り住まれ、南部曲り家の古民家を自分で改築され、『星耕茶寮』として多目的スペース兼幸吉さんのアトリエ+住まいとされていました。当時は土間にガラスを溶かす大きな炉があり、使用済みの瓶を投げ入れて溶かし、吹きガラスとして再生ガラス作品を多く作られていました。
ひと晩中、燃える炉の炎を見ながら多くのことを教えて頂き、ガラスという不思議な世界に魅了されていきました。
ガラス瓶を溶かして再生する、いわゆるリサイクルガラスは、沖縄の琉球ガラスが有名です。
琉球ガラスはアメリカ軍基地で捨てられたコーラやビールの瓶を再生して作ったことがはじまりで、当時はほとんどがアメリカの人のライフスタイルに合わせたガラス製品を作っていたそうです。
幸吉さんに出会うまでは、ガラスにほとんど興味もなかったのですが、真っ赤な炎に溶けていく瓶が人の息吹により再生し、新しい作品になる様子に、何ともいえない生命力のようなものを感じるようになりました。

ガラス職人が命を吹き込んだグラス。きらめく透明な星が、ココロを耕す

ガラスが好きで好きで、ベネチアのムラノ島のガラス工房を訪ねたこともあります。
日本では、室町時代以降にガラスが伝わり、ギヤマンやビードロと呼ばれ、日常品というよりは、工芸品として広がっていきました。江戸切り子や薩摩切り子なども有名ですが、私は、どちらかというと日常使いのガラス製品が好きです。
その後、佐藤さんのもとで修行された若き伊藤嘉輝さんが、『星耕硝子』として独立され、
現在では秋田県大仙市に工房を構え、作品作りをされています。
畑の真ん中にある農家の納屋を改築された工房で生み出されるガラス製品は、どれも一つひとつ違った表情があります。リサイクルガラスの場合は、ガラスに気泡がはいり、懐かしいレトロな雰囲気を醸しだしてくれます。現在では、瓶を再生して作ることから、工芸ガラスにシフトされていますが、かわらぬ伊藤さんのぬくもりのようなものが伝わってくる作品ばかりです。吹きガラスは、作り手が息をガラスに吹き込むことで、分身を作るようなもの。そのエネルギーは作品に強く反映すると、ガラス好きの私は思うのです。

ガラス職人が命を吹き込んだグラス。きらめく透明な星が、ココロを耕す

私がプロデュースしたカフェや今の料理教室でも、伊藤さんのガラス製品をおススメしています。
自宅で毎日愛用しているグラス、小皿、箸置きなど、丈夫で割れにくいというのは素晴らしいのですが、新しいものを買う機会が減るのはいいことなのか悪いことなのか……。
現在は、100円でもグラスは売られています。ビールの景品についてくるタダのグラスもあります。そういうものって、結局使わずに、捨ててしまうことが多かったりしないでしょうか?
もしくは、乱暴に扱って壊してしまったり。
グラスは、まず手に取ってみます。持ちやすさ、使いやすさ。そして、太陽にすかしてみます。光のさす具合も美しさを演出してくれます。
好きなグラスほど、使い勝手のよいものはありません。朝一杯の水。お帰りなさいのビール。ワンプレートサラダの盛りつけに。おもてなしのパンナコッタに。
伊藤さん、まだまだ、このグラス、長持ちしそうです~~。

 

問い合わせ
星耕硝子  seiko-glass-studio@maroon.plala.or.jp

※掲載情報は 2018/02/17 時点のものとなります。

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キュレーター情報

タカコナカムラ

料理家/フードディレクター

タカコナカムラ

山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。

通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。

一般社団法人ホールフード協会 代表理事

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