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時は、1996年。現在50代の朝倉玲子さんは20年前、イタリア料理の修行のためイタリアへと渡りました。そこでオリーブ油の美味しさに魅了され、ホンモノのオリーブ油を探すことに。しかしそこで見たものは、イタリア製として販売されているのにも関わらず、アメリカやアフリカ諸国からのオリーブ油の缶が並ぶオイル工場の裏側。その実態を知り、オリーブの栽培から圧搾まで顔の見える生産者を、たった一人で探し続けました。
それだけでも私は相当勇気のいることだと思うのですが、自ら見つけたオリーブオイルを日本に輸入しようと起業した朝倉さん。しかも、朝倉さんは会津を拠点とされています。今でこそ、地方から発信する情報やモノが増えたものの、今から20年前となると……。朝倉さんは多分、その道の走りなのではないかと思います。
朝倉さんが辿りついた生産者は、イタリア南部のベネヴァント郊外に暮らすジョバンナマッツアさん夫妻。そもそも通常のオリーブ油はいろんな生産者からのオリーブを集めて絞るため、栽培履歴も生産者の顔も見えません。1件の農家のオリーブから絞ったエキストラバージンオリーブ油というのは、極めて珍しいのです。「オルチョサンニータ」は、在来種のオルティチェ、イタリアの代表的なフラントーイオ、レッチーノの3種類のオリーブから搾られています。
現在の高品質のオリーブ油は、搾るといってもコールドプレスではなく、遠心分離器で搾っています。プレス機は使い回すため、他の生産者のものと混ざってしまったり、プレス機自体が空気に触れるために油が酸化されたりしやすいのです。また、油が空気中に露出されるので、搾油所の衛生管理が製品に影響を与えてしまいます。ジョバンナさんのオリーブは、日本の米と同じように秋に収穫され、即日に搾油されます。通常はフィルターをかけて濾過するのですが、風味や有効な成分まで漉されてしまうため、「オルチョサンニータ」は2ヶ月かけて自然に果肉を沈殿させ、上澄みを瓶詰めにします。
沈殿せずに果肉がふわふわっと浮遊している状態のヌーボーを「あらばしり」と呼ぶ朝倉さん。「オリーブオイルヌーボ-」ではなく、日本酒用語の「あらばしり」を使うとは渋い! そのセンスに拍手! これこそがファンが毎年待ちこがれている数量限定のオリーブオイルなのです。
ワインのヌーボーと違い、空輸による気圧でのオイルの変性を避けるため船便で運搬するので、到着するのは最短で3月。今から楽しみでなりませんね。世の中には、素敵なコマーシャルやボトルデザイン、PRのためのイメージキャラクターのイケメン俳優など、オリーブの本質以外のことで装飾されている商品がたくさんあります。
「オルチョサンニータ」の風味は“質実剛健”。オイルの良さを存分に味わうことができます。いや、このオイルは朝倉玲子さんそのもの。他にはない芳醇な香りと味わいの存在感は圧巻です。
「オルチョサンニータ」を使い、会津の朝倉さんをイメージして作ったレシピを紹介します。
イタリアンのバーニャカウダの会津版「味噌にゃかうだ」。長葱とくるみを刻み、味噌で和え、そこに「オルチョサンニータ」で作ったガーリックオイルをたっぷり注ぎます。できれば温めながら、野菜を付けて頂くと絶品です。
近年は女性の社会進出もめざましく、起業する若い女性も多くなりました。しかし一方で、夢を求めたものの途中で挫折してしまう人も少なくありません。東京でそんな若い子をみると、私は朝倉さんを見習いなさい、あきらめてはダメ!と一喝することがあります。
会津から自分の夢をイタリアのオリーブオイルに託し、その途中で農家にオーガニック認証まで取得させ、表示やボトルの不備によるトラブルも乗り越えて、今では全国のオーガニックショップに並ぶオイル。朝倉さんはたった一人、会津で踏ん張ってこられました。
そのひたむきさが、味以上にこのオイルを好きな理由なのかもしれません。
私は山口県出身。そう、長州藩なのです。じいちゃんには、「会津には近寄るな、根は深いからな」と言われてきました。が、時は21世紀。会津藩、長州藩ではなく、ワールドワイドに共に頑張ろうじゃないの~~~。
※掲載情報は 2017/12/07 時点のものとなります。
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キュレーター情報
料理家/フードディレクター
タカコナカムラ
山口県の割烹料理屋に生まれる。
アメリカ遊学中にWhole Food(ホールフード)に目覚める。
日本の伝統食・発酵食、乾物料理の第一人者として、数多くの商品開発や、オーガニックカフェのプロデュースに関わる。
現在、食と暮らしと環境をまるごと学ぶ「タカコ・ナカムラWhole Foodスクール」を主宰。
通信講座(がくぶん)では、
「野菜コーディネーター」「発酵食スペシャリスト」
「AGEフード・コーディネーター」など食と美や健康に関する講座を多数監修。
一般社団法人ホールフード協会 代表理事