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紅茶に浸すと、さらに絶品。パリの子どもになった気分
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マルセル プルーストの小説「失われた時を求めて」は、紅茶に浸したマドレーヌの香りで、幼い頃の思い出が、呼び覚まされるところから始まります。
パリを訪れたとき、この感覚を味わいたくてマドレーヌを随分買いました。ほとんどがパリ伝統の貝型。きっとプルーストも、この貝型の先を紅茶に浸しながら名作を書きすすんだでしょう。
日本にも、フランス菓子を愛する文豪がいました。ノーベル文学賞作家 川端康成。実はパリに修行に出た「カド」の店主と川端氏は知り合いでした。修行の後に、彼にフランス菓子を作ってあげると大変感動されたとか。その川端康成の肉筆原稿が、店内には飾ってあります。
私は、その書簡を読みながら、マドレーヌを頬張りました。貝の形が唇に当たると気持ちがいい。大きさも下品に口を開けることなく食べられる。これは女性に人気でしょう。
その味わいは、洗練されたパリそのもの。バターで重たくなることもなく、心地の良い食感と甘い香りがふっと鼻に抜けていきます。
近くにある六義園が、リュクサンブール公園に見えてくるほど、パリの味。家に帰って、紅茶に浸していただくと、プルーストに代わって、私がパリの子どもになったようでした。
※掲載情報は 2017/08/27 時点のものとなります。
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キュレーター情報
スピーチライター/コラムニスト
ひきたよしあき
(株)博報堂で、広告クリエーターとして働くかたわらで、「朝日小学生新聞」などにコラムを書いています。出張、撮影、講演で全国を回りながら、おいしいものを送ったり、頂いたり。誰かに何かを送ろうとする時、そこに素敵なエピソードが生まれます。高い安い、有名無名に関わらず、できればその一品にまつわる物語までお伝えしようと思っています。皆さんからの情報もお待ちしています。主な著書「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)