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静岡の久能山で穫れた朝摘みいちごを羽二重餅にくるんで食べる。
静岡県焼津市「焼津グランドホテル」の一階の土産売り場にある冷蔵棚の一番下の段に、この「いちご餅」はひっそりと眠っていました。
「どうやら日に5つほどしかない限定品に見えた」と語るのは、いっしょに仕事にでかけたママさんデザイナーMさん。買って帰った日、腹を空かした中2の娘が何気なく口に放り込むと、「何これ?うますぎる!」とのたうち回ったという。
静岡県焼津市にある和菓子処飴屋河合の「いちご餅」。全国的に「いちご狩り」で有名な久能山の朝摘みイチゴをごくごく薄い羽二重餅でくるんだだけの創作和菓子。あんこの力もお砂糖の力も使わない。素材をいじくることを一切しない潔さ。
「帰宅して、母娘で10分以内で完食しました。うちの娘、専業主婦の義母の料理で育っているので妙に食通なんです。今の子はケーキより和菓子党の子も多いし」と語るMさんは、焼津に訪れるたび必ず買って帰るという。「包装紙もかわいくて、娘がブックカバーに使っています。そのイラストを見ると、ぶどうの絵も描かれている。もしかしたら、秋には「ぶどう餅』もあるのかも……と期待してたら、ありました。秋は「ぶどう餅』!」
M親子のコーフンにほだされて、私もひとつ口にしてみた。冷凍された餅とイチゴがこんなに合うものなのか!と、舌と頭が驚く。新鮮な果物と餅。このシンプルな掛け合わせだからこそ生まれた味である。恐るべき静岡・焼津。
温泉帰りのお土産に、ぜひ。
ちなみに、静岡と言えば、お茶にまつわる菓子が多い。会社にお土産を持ち帰っても「お茶のお菓子ですねぇ」と言われるだけ。新鮮味に欠ける。比べて「いちご餅」は味も話材も新鮮だ。「へぇ、静岡っていちごも有名なんですか」に始まって、食感のインパクトは絶大。誰もが喜んでくれることに気をよくして、私の焼津土産の定番になった。
※掲載情報は 2017/04/23 時点のものとなります。
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キュレーター情報
スピーチライター/コラムニスト
ひきたよしあき
(株)博報堂で、広告クリエーターとして働くかたわらで、「朝日小学生新聞」などにコラムを書いています。出張、撮影、講演で全国を回りながら、おいしいものを送ったり、頂いたり。誰かに何かを送ろうとする時、そこに素敵なエピソードが生まれます。高い安い、有名無名に関わらず、できればその一品にまつわる物語までお伝えしようと思っています。皆さんからの情報もお待ちしています。主な著書「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)「ゆっくり前へ ことばの玩具箱」(京都書房)「大勢の中のあなたへ」(朝日学生新聞社)