記事詳細
紹介している商品
ユニークなお酒が創る伝統と風土を守るための新しい息吹
かわいらしくシンプル。でもインパクト抜群の白黒のボトルデザイン。モチーフは……そう、おむすび。米どころであり酒どころでもある新潟。イメージだけではなく生産量という数字からもまさに日本有数の場所。でもなぜ、日本酒でおむすびのデザイン?
仕掛けたのは新潟市の酒蔵『今代司(いまよつかさ)酒造』。創業は1767年、実に長い年月を重ねてきた酒蔵。最近ではその伝統を守りつつ、しかし奢ること無く、時代にあわせて様々な変化をしている。それは酒造り自体の革新やマーケティング的な仕掛けなど全般にわたっているが、ただ、最新機器を導入すればいいというものでもなく、パッケージデザインを刷新すればいいというものではなく、そこには高い精神性がある。
新たな時代のリーダーとして酒蔵を牽引している社長は、実はもともと新潟にも酒蔵にも縁がなかった人。関東出身で東京の大手情報出版社に勤務。その後、プロサッカークラブの海外拠点でマーケティングマネージャーを担い、縁あって今代司にやってきた。「よそ者だからこそわかる、守るべき良さと変えるべきことがある」。杜氏との二人三脚がちゃんと続くのは、この視点がしっかりしているから。
守るべき良さ、それは新潟の米とそれを作り続けてきた生産者。ワインと日本酒の違いとして「テロワール」の議論もあった。
ワインは大規模低価格のものではその限りではないが、基本は、その地でとれたぶどうがワインになる。畑の土、風、雨、水、太陽……それを飲む。
一方で日本酒の米は、近年、より良い酒を生むために特定地域の米を使うことがむしろブランドになるという動きがあった。もちろん、米が流通に適していて移動可能なアイテムであることは背景としてはあるし、高いレベルの酒造りに挑むという意志は尊い。
ワインの世界で南オーストラリアのワイナリーが高級品だからといってわざわざブルゴーニュで収穫されたシャルドネを輸入してワイン造りをすることはないが、日本酒では東北の酒蔵が定評ある兵庫県産山田錦で酒造りをすることは変わったことではないし、それが当たり前のことでもあった。
それが最近では若い造り手を中心に、地元の米を生かす酒造りを目指す蔵元が増えてきた。米造りからどこまでコミットするか。そこから続々と面白い酒が生まれてきているし、この流れはますます大きなものとなっていくだろう。
『おむすび』のプロジェクトも同様だ。農家、酒蔵、飲食店の合同プロジェクト。
新潟市は、もともと生産地、加工地、消費地が寄り添う土地柄。花街には腕のいい料理人と酒と食の通人が集まり、美しい雪と水からうまい米を作る農家はすぐそばにある。腕を競う多くの酒蔵もその輪の中にいる。このステークホルダーたちが、米づくりから酒の仕込み、提供までをむすびあい、共に考えて、飲む人ともむすばれる。新潟市の豊かな風土と魅力を、お酒を通じて地元に人に再認識してもらい、旅の人にも存分に味わってもらう。
「よそ者」だからこそ、外の視点から新潟市の良さに気づき、惚れ込み、尽力。これもまた、縁がむすばれたひとつの物語。
新潟市の大越農園産の酒造好適米・五百万石を使用、今代司で伝統を守る高杉杜氏が磨き上げ、新潟市の飲食店と直営ショップで味わう。新潟らしい、しっかりとした淡麗辛口ながらも美しいキレですーっと抜けていく。新潟土産のつまみと合わせての贈り物にすれば、またそこで新しい「おむすび」が生まれるだろう。
http://sake-omusubi.com/
※掲載情報は 2017/04/13 時点のものとなります。
- 6
キュレーター情報
ワインナビゲーター
岩瀬大二
MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。