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日経「ガイアの夜明け」でも取り上げられた、丁寧な手仕事
和歌山県は多くのフルーツを出荷している「フルーツ大国」である。そんな和歌山県のみが出荷している希少価値の高いフルーツが、ちょうど旬を迎えたので、ご紹介したい。それが、「三宝柑(さんぽうかん)」だ。江戸時代、和歌山城内に原木があったとされており、当時は美味しさと珍しさから殿様のみへの献上を許されていた。つまり、“城外不出の果実”。現在も、和歌山県のみで生産されているとのこと。
見た目は、下の写真のような形で、デコポンに似ている。皮が厚いため、実はとても小さく、種が多いのが特徴の三宝柑。伊藤農園さんは、柑橘を絞る前に皮をすべて取り除く手間をかけ、皮の苦みがジュースに入らないようにしている。その丁寧な手仕事は、2015年「ガイアの夜明け」でも取り上げられた。「三宝かんしぼり」も、同様にして作られている。
伊藤農園さんの中でも、不動の人気は「みかんしぼり」と「きよみしぼり」。「みかんしぼり」は甘さが強く、「きよみしぼり」はさっぱりとし、後味がすっきりとしている。ちょっと頑張った日のお風呂上りに飲んでいたのが、この2種類だった。それは、以前大阪で開催された「食の博覧会」ですべて試飲できるコーナーで飲み比べをし、私は「きよみしぼり」を買っていた。
伊藤農園さんのお話によると、「三宝かんしぼり」が出展されることは、ほとんどないとのこと。確かに、大阪では試飲に並んでいなかった記憶がある。数が少ないため、知る人ぞ知るジュースなのだ。そんな、ほとんど出展されることのない「三宝かんしぼり」を、イベント(幕張メッセ)の伊藤農園さんのブースで見つけ、試飲させていただいた。他の柑橘ジュースとの飲み比べをしてみたところ、コップに口をつけようとした瞬間に“城外不出“になった理由が分かった気がした。柑橘の香りが他のジュースよりも、圧倒的に高い。
自宅で再び、ゆっくりと飲み比べをしてみた。コップに注いだ瞬間に、一気に香りが開く。飲む前から、飲んだ気持ちになってしまうほど、やはり柑橘の香りが華やかだ。なるほど、城外不出になるのもうなずける。アロマオイルのようだった。飲んでみると、すっきりとしており、ほどよい甘さなので、これから春から夏にかけて暖かくなると一気に飲み干したくなる。
昨年、「ippin」に「みすゞ飴(長野県上田市)」を紹介させていただいた(https://ippin.gnavi.co.jp/article-7031/)。何種類かある1つが、「三宝柑」だった。和歌山県と長野県上田市は、昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」でつながりがある場所でもあったが、特産品でもつながっていたとは。フルーツ豊かな長野県にある老舗が選んだ柑橘が、和歌山県の「三宝柑」。城外不出ではなくなったからこそ、「みすゞ飴(三宝柑味)」ができ、伊藤農園さんの「三宝かんしぼり」ができたのだ。今が江戸時代だったら、どちらの商品も作ることはできなかった。
私のお気に入り伊藤農園シリーズが、この3つになった。たくさんの種類があるから、手土産には、好きな柑橘をセレクトするのも楽しい。
殿様にしか献上されなかった「三宝柑」。今でも、その希少価値は変わらない。フルーツにも、こんな深い歴史が隠されていたとは。
今が旬の「三宝かんしぼり」、是非、手土産に献上するにはぴったりの逸品だ。
※掲載情報は 2017/04/05 時点のものとなります。
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キュレーター情報
発酵料理研究家/観光連盟アドバイザー
高橋香葉
「日本人の体を健康できれいにするには、日本伝統文化の発酵食が一番良い」として発酵料理の研究に取り組む。テレビ、雑誌、書籍などを通じて、発酵食品の良さを伝える普及活動を行っている。
日本で初めて、米麹と醤油をあわせた新調味料「しょうゆ麹(醤油麹)」の作り方とレシピを公開し、発酵業界に新しい風を入れた。その活動は、フードアクションニッポンアワード販促部門を受賞。その後、読売新聞にて「オンリーワン」として掲載された。
現在は、日本全国を回り、全国の発酵食品だけでなく温泉巡りをし、日本の伝統文化を勉強している。
自治体の観光連盟アドバイザー、特産品開発審査委員などを歴任。市場調査から、販売戦略、プロモーションなどのマーケティング講師も行っている。フードアナリスト協会「食のなでしこ2016」。
主要著書:
◎「しょうゆ麹と塩麹で作る毎日の食卓」(宝島社)
◎リンネル特別編集「しょうゆ麹で作る毎日のごちそう」(宝島社)
◎「知識ゼロからの塩麹・しょうゆ麹入門」(幻冬舎)
◎おとなのねこまんま555(アース・スターブックス)等